きよ

あみは片付けが大嫌いだった。
部屋を片付けるくらいなら死んでやる!
というくらいの嫌いぶり。
当然部屋はしっちゃかめっちゃか。
カレはよく耐えてるね。
別室で会う。
まじか。
いいんだよ。
きよがきてくれるから。
きよ?

私たちは知ってる。
たしかにあみんちは金持ちだ。
でもばあやは雇っていない。
あみのジョークだ。
でもいたらありがたいよね。
ちっちゃくて。
生真面目で。
片付け上手……

イメージが一人歩きする。
きよ。
早くきてくれないと、お部屋に虫がわいちゃうよお……


夏の終わり。
あみが消えた。

里香が私に真顔で問う。
きよ。
ほんとにいるのかな。
何言ってるの。
いるわけないじゃん。
だよね。
そう言って、里香は笑った。
笑顔がひきつっていた。

里香が消えた。
たまり場に現れなくなっただけだとレイが言う。
言いながら、青ざめている。
秋の終わり。
レイがついに私に打ち明けた。
窓の外から声がするの。
お嬢様。
お嬢様。
きよでございますって。
誰かのいたずらだよね。
ね!

翌日から、レイも現れなくなった。


私は部屋を片付け始めた。
あみほどではないけど私も片付けは苦手だ。
でももうそんなこと言っていられない。
片付ければ、きっと来ない。
来ないよね?
誰か来ないって言って。
言って!


足音がする。


それでも地球は回っている