お見舞いシリーズ②
入院
勝山
おまえまだ入院かよ。
なかなかせんせーのお許し出なくてさ。
個室いいよな。
チーム持ち?
半分ね。
俺結果出す前に骨折っちゃったから。
でもチーム、待っててくれるじゃん。
それ監督の花だろ、そっちコーチの。
うわ。
エースの春永のまである!
愛されてんなおまえー。
勝山さん。
検温ですよ。
えっと…6度5分。
下がりましたね。
うわー。
きれいな看護師。
こないだ見たコもきれかったし、おまえめちゃめちゃツイてんな。
骨折ったのにか?
あ。
俺は口を押さえたが、勝山はちょっとへらへらと笑っていた。
いっこうに退院してこない。
最近では俺の使われ方も変わってきた。
このままだと、おまえ代表外されんぞ。
しかも後釜俺だぞ。
見舞いに行きづらくなって、たまにメール。
lineからは本人が抜けていた。
最後にテレビ電話で見た顔がめちゃめちゃ痩せこけてて、直感的にもう長くないと思った。
俺、会い行くわ。
いいよこなくて。
俺の分まで頑張ってなー。
おかしいだろ骨折っただけで!
会いに行った。
もういなかった。
どころか誰も、勝山を覚えていなかった。
骨折で入院した、若い男の患者さんですか?
受付が、書類を幾度もめくるが、ただ首を傾げるだけだ。
結局『勝山』は存在しなかったことになった。
『勝山』?
それ誰だ。
俺なんでここいるんだ。
何しにきたんだっけ…
それでも地球は回っている