建て売り〔読み物100〕



たまにはじっくりこんがり焼きたかった。
なまっちろい己がからだ。

思い切りよく。

二重扉を開ける。


お義父さん!!


嫁の金切り声より速く、壮絶な熱風が邸内を駆け巡る。
この家を買ったとき不動産屋に注意されたのだった。

気圧安定装置はデフォルトで付いてますが、いかんせん太陽が近いです。
二重扉は絶対開けないでくださいよ?


炎熱地獄は生きていてのこと。
今はもう痛くも熱くもない。
不動産屋には化けて出てやる。
宇宙全部を宅地にしたのは持ち家法の悪用だってな。
ああ。
認知も治るのだな。
そう考えると、死もさほど悪いことではないのだな。
気持ちがちょっと軽くなる。

冗談じゃないですよ!

息子夫婦・・・
今の私の行動で・・・

あ。

あ。じゃありませんよ!
猫のみけまで焼けただれたんですよ!
お父さん!

お義父さん!

あなたは罪人です!


といわれてもなあ…


死ねばみんな仏様だろう?
それに私生前認知だったし、病者は罪に問えんだろう?



パトカーが来た。
あの世警察だけあって、タイヤが雲だ。
タフガイみたいな霊界警官が、私を左右からガシッと掴む。
なんで?

死に際犯罪、巻き込み自殺等を取り締まる必要が増えましてね。
谷本某も逮捕済みです。

!!

私は谷本並み扱いなのか!!


パトカーに押し込まれ道なき道を行く。
もはやあの世でも人間は、安閑としてはいられないらしい。


それでも地球は回っている