『優衣子の手紙』より抜粋〔あきやまやすこさんに捧げる一作〕



克彦おじさまに引き取られたとき、私たちはきつくおおせつかりました。

 私は子供が嫌いです。
 子供は幼稚で
 礼儀知らずで
 気分屋で
 前向きな姿勢と
 無いものねだり
 心変わりと出来心で生きている
 甘やかすとつけあがり
 放ったらかすと悪のりする

だから優衣子も明も典弘も、絶対母屋に来てはいけない。
わかったね!!

朝5時起床。
朝食は一汁一菜。
昼は何を食べてもいいが、夜は主おかずのほか、お菜を二つ。
言っておくが絶対!
私に迷惑をかけるな!!


鬼のような形相でした。


でもそれからの七年。
いつの間にか、母屋は私たちに譲られ、ご自身が離れにお移りに。
三人とも上の学校まであげてもらい、

克おじさまのアンポンタン!

といっても二メートルくらいしか怒ってこなくなり、典弘が学校で、意地の悪い先生に目を付けられた時も、

うちのこどもは曲がったことなど絶対しません!!

と、怒鳴り込んでくださった。
明が研究に没入したいと、三つ指ついて頼んだ時は、克子から預かっていたと、通帳を差し出してくださった。
私は知っています。
そんなもの、母は残していませんでした。
美しい高尚なお小説をお書きだったおじさまが、女こどもの読むような、恋愛草紙を手がけられるようになり、

なぬかみつ子

と別名作って多作濫作なされたことも、それでも足りなくて、お好きな書を二本処分されたことも。

きょう、私は嫁ぎますが、おじさまは一生おじさまです。
ありがとうございました。



※ モチーフは、
  昭和の名曲 伊武雅人の「子供たちを責めないで」
  です。


それでも地球は回っている