田冨とBAYA~覆面判定人2~〔ぷーさん(現ふぅ。さん)に捧げる一作2〕
田冨(たとみ)の評判が一気に下がった。
下ごしらえ手抜き。
店員横暴。
客層がコワイ。
etc.etc.etc.
私たちが行っても、そんなことはないのに。
だれかがわざと評判を下げてる?
ひどすぎる・・・
ひどいといえば、私の篠田が、覆面判定人とおぼしき篠田が、最近私に隠れて行動している。
ああでも、しょうがないのかもしれない。
私はたまたま食事を一緒にしただけなのかもしれないし。
そこから恋人確定なんて、気が早いし、うぬぼれてる・・・
こんなこと思うようになったのは、あるバルに一緒に行ったとき以来。
こじんまりした隠れ家的居酒屋。
前から行きたかったというその店、
『BAYA』で、篠田は秋陽(あきひ)さんと遭遇したのだった。
あなたが日本に欲しいって言った、典型的スペインふうバルなのよ!
篠田が日本に欲しいって言った、典型的スペインふうバルを開いたんですか?
篠田のために???
うつくしく、
若く、
聡明。
私もああだったら良かったのに。
なんとなく、篠田の部屋から歯ブラシやなんやかや、持ち出してしまいかけた・・・
まこさん
あんたバカなの!?
秋陽さんが怒ってる。
何で?
私いない方がいいじゃん。
私なんて・・・
私なんて、何よ!
どこの世界にご飯一回食べただけで篠田に惚れてもらえる女がいるのよ!
私はとおに諦めたけど、それでもめっちゃうらやましいわよ!!
叫ぶように言った秋陽さんの目には、一掬の涙が光ってて、私思った。
なんて美しい人なんだろうって。
歯ブラシも洋服も化粧品も戻した頃、田冨の事件は片づいた。
意図的に、店を困らす集団コメンターが存在するらしい。
訂正コメンターと正当コメンターが増えるよう、篠田はいろいろ手段を講じてたのだ。
で?
僕がそういう戦いをしてるさなかに、きみは僕を見捨てようとしてたんだって?
いたずらっぽく笑う人に、私はもう六回もからかわれてる。
出会いのきっかけの店も、もとはといえばその集団が潰したようなものだったらしい。
おいしいものとすばらしいサービス持つ店になんてことするんだ!(と今さら怒りがこみ上げる)
私は恋人だけでなく、心あつい友も得た。
まさにビバ美食である。
前作です↓
それでも地球は回っている