58分の1〔【嘘大会参加作41】実は桜の樹に住んでます。人間じゃありません。この時期限定で、人間のふりをしています。 へのお礼作〕
いつもなら、入学式まで居られるのに、今年はあっという間に散ってしまって、樹下のあたしは所在ない。
ソメイヨシノの寿命は70年くらい。
もう来年は咲けないだろう。
洋(よう)さんは、来てくれるだろうか。
最後に会いたい。
さくら子。
洋さんの声だ。
でも姿はない。
ない…
洋さんは私より六つ上。
去年もちょっとつらそうだった…
洋さんがいない世なら、私も…
私が上空へ舞い上がってゆく
さくら子。
ああ。
洋さんは空にいる。
私もさらに舞い上がってゆく。
翌日。
私の木は、倒れてしまっていた。
こどもたちが下敷きとかならなくて、よかったわねえ。
あら喪服。
どなたか亡くなったの?
近所のおじいさん。
一生独身だったそうでね。
身寄りもないみたいだし、仕方ないから町会で。
それじゃお先に。
人間たちは知らない。
人と人ならざるものがともに棲んでいた時代を。
どんどん遠ざかる、そんな時代。
そんな時代…
嘘主↓
ちょっと気になる一作↓
それでも地球は回っている