『私』が。〔読み物100〕

もうちょっとで12時。
いつも三番手で出てるから、今日くらい、私が一番手でもいいよね!

私の語気がめちゃめちゃ強かったのだろう。
メンツは全員黙って頷いた。

旦那は12時半に休憩し、13時半には仕事に戻る。
こんなに早く出たのだ。
今日こそ私が昼を!

風のように素早くお使いした。
錦糸卵、ハム、キュウリ、刻み生姜。
麺は小島や製麺。
タレは。
何今、玄関にお義母様が!?
今日は一日勤務でしょ!?

そういうあなたはお昼休みでしょ?わざわざ帰ってこなくていいのよ!

と私の買い物袋に気づいた。

やあねえ。
錦糸卵も焼けないの!?

ああ!卵で買ってる!

焼きたてあったかいままで出すんですか!?
生あったかい冷やし中華!?

でも手作りよ!
あんたみたい何でも買えばいいってもんじゃないわ!!

とキッチンでもめてる間に、

はあい!

と返事して、さなが玄関へ。

パパー。
冷やし中華きたよー。

さなが受け取って二階へ持って行った。

なんでさながいるの。
オマクロン休校?

あ。
今週から、そうです。

私たちはへなへなと崩折れた。

旦那に、息子に『私が』おいしい好物を作るという苛烈な競い合いは、

もろくも、

娘と店屋物に敗れたのだった。


それでも地球は回っている