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「ブラッディチャイナタウン」最終回になりました

noteで描き始めた『ブラッディチャイナタウン』がこのたび連載第63回目にして最終回を迎えました。終わり方は何となく書き始めた頃から決めていて、色々なキャストの命を救ったり救えなかったりした柘植とかなやが、今の社会で生きていく厳しさに向き合いながら、最終的にふたりの物語になって、横浜中華街を背景に抱き合う様な、そんな場面にしたかったのです。お話の長さ自体ははっきり決めていなかったのですが、全8巻にしたのは担当編集が「少女漫画は10巻を超えると話が変になってくる」と意見してきて、続きを描くなら柘植とかなやで別な事件を、といわれた事で決めました。私自身も描きながら少女漫画の読者は現在癒しやホッとする暖かい物を求めていて、バイオレンスや厳しい場面があまり続くと疲れてしまうような印象がありました。でも描きたかった部分はクリアできたので、完全な漫画とは思いませんが、そこを読んでいだたけると嬉しいです。私の中華街のイメージは私の物で、怪しくて異国情緒があって家族と食事に行く楽しい街だったのですが、この漫画を描く為に読んだ林兼正さんのインタビュー「横浜中華街物語」という本で、林さんが「故郷に帰れない人たちの街」と書いていた事がすごく響いて、イメージが膨らみました。林さんは名店、萬珍樓の社長で、昔の横浜の話や老華僑のお話も沢山される中で、中華街が郷愁や色々な思いから中国に帰る事のできない人たちが集まって出来た場所であると語るのはとても深みがありました。これは普通の商店街や観光地でなく、深い意識や愛情が根底にある街なんだなと。取材に行ってもその都度感じる事は多かったです。そして私がブラチャイを描き始めるきっかけとして、ネームが毎回のように没になるという辛さを味わって、もう自分は漫画の世界で生きていけないのだろうかと落胆していました。愛したはずの漫画に捨てられて、私は行くところがないんだなぁと閉塞感で一杯になっていたのです。生きる場所がない、目を背けられる、受け入れられない人間はどうしたらいいのかと考えていたところに、中華街の街づくりの物語はとても心にピタっとはまりました。ただ、居場所がないなら作ればいい、というのは簡単な話でなく、それには心から信頼に足りる人々が必要だという事も自分でしみじみ感じてきました。現在はラベリング社会で「あいつはこんなやつだからダメなやつだ」「普通の人じゃないからダメだ」とレッテルを貼ったり、何かにつけてマウントを取ろうとしたり、過剰な自己承認欲求の高い人が増えていて疲れることも多いのですが、心の中のサード・プレイスを思い描いて、漫画の物語に描き出したのがブラチャイと言えます。いつか私も、心の中に思い描いた自分の居場所で生きていきたい、そんな願いが込められています。しかし肩の凝らないエンタメで、楽しいサスペンス漫画として、肩ひじ張らずにハラハラドキドキした!と読んで頂けても、大変幸せな事です。ミステリーを解いていく2人の主役、柘植とかなやが意外にも読者の皆様に応援していただけたのも嬉しい出来事でした。長い間読んでくださって本当にありがとうございました。またいつかどこかでお会いできることを願っています。

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