"Rabbit Beat !" ライナーノーツ 【後編】
<前編はこちらから:
https://note.com/amir_rabbit/n/n4748b67fdd4c>
楽曲解説【後編】
bandcampにて全曲試聴できますのでぜひ。
https://kmmtracks.bandcamp.com/album/kmm-label-rabbit-beat?from=embed
7. White Walkway - Stage 4
開放感のある空の世界から戻ってきました。雪です。季節は秋冬派なので非常に楽しく作ることができ、お気に入りの楽曲になりました。制作時期は2023年1月、まだデスマではなかった時期なので編曲にもミックスにも余裕が感じられます…
リファレンス:
・Candy Clouds - 雨上がりのハナビィ
・Dreams Dreams : Located Link Mix (Instrumental) - NiGHTS~星降る夜の物語~
・Ensemble Forecast 3/28 - LekSak
・おもちゃのためのパレード - ああああ、梅干茶漬け
・アスレチック - NewスーパーマリオブラザーズWii
・アスレチックMii bgm - Wii fit Plus
・フラッペスノーランド - マリオカート64
ハナビィシリーズの影響でどこかにハネリズムの曲を入れたいと思っていましたが、前述した"Holly Jolly Street"との差別化を図るためピコピコに。
調はCメジャー、アコギのアルペジオや口笛を使ってノスタルジックな雰囲気を出してみました。DS・Wii時代の任天堂製ゲームにはアコギと口笛を使用したbgmが数多く存在します。後は子供向けテレビ番組とかでも聞きますね。そんな雰囲気が出したかったのです。私も平成に囚われし者なのかもしれない。
bgmらしさを強調するため、クラッシュシンバルの回数を少なめにしています。
サビのコード進行は脳死で作るといつものように4537になりかねないと危惧し、フラッペスノーランドから取ってきて一部改変しています。シンプルに聞こえて意外と凝ったテンションや分数コードになっているみたいですね。ようわからんけど。
8. Game Over〜Continue ?
死にました。
【Gameover】
リファレンス:
・ゲームオーバー - スーパーマリオワールド
・ゲームオーバー - NewスーパーマリオブラザーズWii
マリオワールドのゲームオーバージングルがめちゃくちゃ好きなんです。直前のWhite Walkwayで丁度エレピを使用していたため、プロジェクトファイルを流用していい感じに仕上げました。雪のステージは高難度なことが多いのでこの辺りで初ゲームオーバーの人が多いんじゃないかなと。
近年はリトライ性を高めるため残機制を廃止しているゲームが多いですね。そもそもゲームオーバー/コンティニューという概念はアーケードゲームの名残であるという話を聞いたこともありますし、そんな仕様を残し続ける意味もないのかも。ただ今回は音楽媒体でゲームを表すということで、「アクションゲームのお約束」となる曲を作らないと聞き手の共感を引き出せない、それっぽくならない!ということでゲームオーバーを作ってみました。時間もないしアルバム自体冗長になるということでやめましたが、次回はワールドマップの曲とか入れたいかも。
【Continue?】
この曲のおかげでこれはChiptuneアルバムだと言い張れています。というのは冗談ですが、いつも同時発音数も何も気にせずピコピコ音源を使いまくっているので、本当は実機チップチューンへの愛とリスペクトもあるんだよ…というのを表したかったのです。まあこの曲も実機じゃなくてDAWで作ってるんだけど…
2018年にハープを使った短い曲を作ったのですが、そのメロディが気に入っていたのでChiptuneにリメイクして収録しました。
リファレンス:コンティニュー - カービィのブロックボール
ゲームボーイ音源を意識して作曲。Aメロの擬似三角波や、Bメロのベースの鋸波はSANA 8bitの波形メモリエディタで手書きして作りました。ADSRの値にも気を遣っていて、減衰してからビブラートがかかるようにこだわっています。耳障りな高音が若干抑えられ、独特な哀愁が出る気がします。
これもお気に入りの曲になったので、妙に収録秒数が長くなってしまいました。一旦休憩、画面を放置したままお茶を取ってきたりお手洗いに行ったり、その間ずっとゲームオーバー曲が流れ続けている…って場面が思い浮かぶかも。
9. Forgotten Field - Stage 5
雪ステージの後は鬱展開が待ってるって相場が決まってるんですよ。(?)
楽しさに全振りしたアルバムにしてもよかったのですが、あみるはこんな曲も作れるのだよと示したかったので悲しい展開にしてみました。主人公と敵たちが秘めていた悲しい記憶が交錯する、そんな曲です。
この曲を作ったのは2023年3月下旬。丁度誕生日の時期で、19歳最後の曲かつ20歳最初の曲になりました。なんで誕生日なのに鬱曲作らなあかんねんと。サビメロ自体は2019年くらいに考えてあったらしく、スケッチが残っていました。
リファレンス:
・recollect (Street Remix) - ああああ、Street
・終わりの星 - ゆうゆ
・ARK - Ver.2 -風のクロノア2〜世界が望んだ忘れもの
・崩落都市 - しょご
・水の追憶 - ああああ
クロノアみたいなストーリーと曲を作りたい!が制作の動機でした。アルバム制作中になんとサントラのストリーミング配信が決定し、狂喜乱舞。いい時代になったものです。
この手の曲はシンセ寄りと生音寄りに二分できますが、結果半々くらいの曲になりました。recollect (Street Remix)のピコピコの使い方に大変影響を受けました。古いゲーム機から記憶を取り出し、それを回想している今と溶け合っていくような…
ゲーム的にはインタラクティブミュージックを意識して作曲しています。最初の1ループ(soundcloudに投稿した部分)が通常流れるbgm、その後続くメロディ抜きの部分が建物の外で流れるバージョン違い、転調後は最終チェックポイント通過後のバージョンという風に想定しています。この曲をバックにボスラッシュが行われて、倒す毎に敵の過去が明らかになっていくとか、そんな感じ。転調後の部分ではボス曲のフレーズが引用されています。
音源は色々使いましたね〜。シネマティックパーカッションはFerrum – Free Edition。Kontakt playerでも使えるフリー音源。非常に有能です。みんな使ってくれ〜。イントロの鳥の声はSpitfire LABSのORGANIC TEXTURES、Bメロ楽器はLABSのAUTOHARPです。
メロディにはファミシンセのサイン波を多用しています。ファミシンセの音色は人の声みたいに聞こえて好きなんです。歌姫のストーリーにうまく絡めて使えたのではないかな。
10. Untitled - Final Boss Phase 1
ラスボス第2形態はどんな曲調にしたいか早い段階で決めていたのですが、第1形態はどうしようかと。テクノか、はたまたオーケストラか…自分らしい曲かつ普段の作風とのギャップを強めたいと考えた結果、厨二病が発動しました。なんで?
この曲はサークルの春合宿にて、「いかに作曲者がバレずにいい曲を書けるか」という企画で発表したものです。曲名の付け方で作曲者がバレたくなかったので仮で"Untitled"とつけたのですが、「忘れられた大地」からの「名付けられなかった歌」でいい感じになったので本採用しました。ちなみにBack Allay Storyに収録された"mono to Prologue"や、「阿面観測」なんかもこの時制作された楽曲です。阿面観測一生擦ってやるからな。
リファレンス:
・出蠢/ガルガリエル - ドラッグオンドラグーン3
・出蠢/ファヌエル - ドラッグオンドラグーン3
・クロイウタ - 藍井エイル
・クロイウタ/日本国外向け製品収録版 - ドラッグオンドラグーン3
・(タイトル不明)- NieR Re[in]carnation
誰がカービィとかマリオ風のほわほわ全年齢向け架空サントラ作るのにこんな曲をリファレンスにするんだよ。リファレンス元がボーカル曲で、かつ音価が長くシンセでやると間伸びしそうなメロディだったので苦労しました。
ピアノはSpitfire LABSのAUTOGRAPH GRAND、ストリングスはSpitfire Originals Intimate Strings。無料と安いやつと。シンセ類はLogicのAlchemyとSynthmaster 2 playerを使っています。アルバム全編に渡ってSupersawはSynthmasterで出しています。本当に普段使わない歪んだ音色を使ったので、ダサくなっていないかひたすら心配していましたね…
11. Still Singing - Final Boss Phase 2
ラスボス第2形態!これまで集めてきたアイテム(魔法の楽譜)が最終決戦用兵器に変化して最後の戦いに挑みます。丁度3分の曲になったので時間制限付きのシューティングとかになってるんじゃないかな。Splatoonの影響です。
忘れられても虐げられても君の手をとってまだ歌い続けてやる。敵も味方も全員救ってやる。物語の中くらいハッピーエンドでありたくて。
リファレンス:
・Sayonara Planet Wars - 黒魔
黒魔さんは昔からよくゲームのボス戦をテーマにした曲を描かれている印象があります。これでさいごだ!とか空中戦とかラストバトルとか。音ゲーに収録されているものだと大宇宙ステージ。こういう音ゲー曲を実際のゲームで流してみたら最高に盛り上がるのではないか?という思いがありました。Chiptuneで盛り上がるラスボス曲といえば"Hopes and Dreams"だけどあれはピコピコロック(Chiprock)が近いしちょっと違うな。ということで「音ゲー文脈のChiptuneをアクションゲームのラスボスで流す」をコンセプトにラスボス曲を書くことに。これは自分が初の試みになるのでは!?とか調子に乗ってました。最初は。
・Longing Never Ends - 夏まつりのハナビィ
はい。
完全に音ゲー曲か?と言われたら違うと思うのですが、ああああさんは音ゲーチップチューンの第一人者ですし、最初はああああさんの既存曲をラスボスで流す予定だったのを書き下ろし楽曲に変えたそうなので、うーん、もうこれでいいじゃん!w
しかしまあ、二番煎じでもいいので自分なりの曲を作ろうと気を持ち直し制作。Longing Never Endsとは違い生音を入れずメロもピコピコのみの楽曲にしました。普段曲を作るときは容赦なく音数を増やしてしまうのですが、今回はSayonara Planet Warsのように音数自体は多くない、シンプルでも迫力のある楽曲を目指しました。
これを書いたのが2023年4月上旬、デスマもデスマでした。まさにラスボスを倒す時の心境。結構焦りが曲に出ちゃっていますが、まあ…許して…
12. Ending
一番最後に書いた曲です。アルバムを総括する曲でもあり、一番のお気に入りとなりました。
リファレンス:
・ずっと、君を見ていると。 - 星のカービィ スターアライズ
・きせきの一つ - 星のカービィ トリプルデラックス
・銀河にねがいを:スタッフロール - 星のカービィ スーパーデラックス
・スタッフロール - スーパーマリオ 3Dワールド
・Ending - 夏まつりのハナビィ
どんな曲調にしようか迷ったのですが、定番のメドレー形式にしました。RTA in Japan winter 2022にて3Dワールドのランを現地観戦したのですが、スタッフロールのテーマ曲メドレーを聞いた時何故か泣きそうになった経験が影響しているかも。
前の曲からの流れが断絶しないようにと、ラスボス曲"Still Singing"のフレーズをピアノで奏でて始まります。近年のカービィシリーズで多用される、ピアノのイントロから始まるスタッフロール。暖かくて切なくて、とっても大好きです。
その後はタイトル曲をそっくりそのまま引用して続きます。普通に時間がなかったので時短技です笑 しかしXFDにこの部分を採用することで、タイトル曲を動画の最後に提示しつつエンディング曲のネタバレを防ぐことができたので結果オーライ。
次に来るのは"Cloud Castle"のフレーズです。このアルバムで唯一ピコピコ不使用の曲を逆にピコピコで奏でてみる、ということで。泣きメロはピコピコで奏でることで映え、後半部分はアルペジオと相まって可愛らしい印象になりました。お次は"White Walkway"のフレーズなのですが、選曲理由はつなぎに丁度よかったから笑
最後に来るのは"Little Leaves"のフレーズです。最後に初めのステージのbgmを引用したい!と強く思っていました。銀河にねがいを:スタッフロールのグリーングリーンズ地帯が本当に大好きで………!!!
原曲のコード進行を4537にリハモして、限界まで切なさを出してみました。またこのパートを仮で打ちこんだ時、何か迫力が足りないなと…そこで最初に没にした、バッキングにギターを入れる案を採用しました。先輩ありがとう!
アウトロのピアノは"Little Leaves"のイントロです。XFDの最初に流したフレーズですね。ここのフレーズを書き終わって全体を再生した時、ちょっとだけ泣きそうになりました。
総括
正直これまでの出来事を総括できる語彙も気力も何も残っていないのですが、なんとか捻り出したアルバム制作を完走した感想は以下の通りです。
・未熟でもまず完成させることが大事、たぶん
・書き下ろし曲数増やすとどう足掻いてもデスマになる
・デスマもたのしい
・ゲームのサウンド制作者はすごい
・リファレンス曲が古すぎる、自分は平成の亡霊
・イラストの力はデカい
・ボンジョ美ちゃん可愛いかもしれん
・みんなありがとう、サークルありがとう、インターネットやめないでありがとう
こんなに無謀な企画を完遂できたのは協力してくださった皆様のおかげです。ありがとうございました。本当は皆さん一人一人への謝辞を述べたいところですが、こんなところに書くのも無粋だし失礼ですよね。皆さんに直接お伝えしていきたいと思います。
一方で、曲数多いし人脈もないので自前でマスタリングをすることになった点とか、デスマになって思うようなクオリティにならなかった曲があったりとか、実は作曲だけして時間の都合で没になった火山ステージの曲があったりしたとか、反省点も諸々あります。
でもこれ架空ゲームのサントラなんですよ。ゲームって続編出ることあるじゃないですか、いずれ出したいな、続編。
念願の企画をやり遂げはしたけれど、ここがスタートなんだと思います。過去の亡霊を成仏させて、目標を失って、アイデアストックをほとんど絞り切って、「自分はアルバムという大きな企画に挑戦しているんだから周りに多少抜かれても大丈夫だ」という暗示がもう使えなくなって、自分はどうせ孤独なのだという思い込みが強引に打ち砕かれて、よくも、悪くも、よくも。
暗い締め方になってしまいました。ちょっと不安なんです。でも大丈夫になってみせる。まだやるべきことも、やりたいこともたくさんあります。
何より過去の自分が今の自分を見たら喜ぶんじゃないかな。色々予想の斜め上の展開になってるから泡吹くかもしれないけど。見てるか、5年前の自分。お前が描いた夢と冒険を形にしてやったぞ。冒険には不安が付き物だけど、割とたのしいぞ。
追記:インターネットやめないで - M3の話
上の総括眠気でめちゃくちゃ鬱になってる時に書いてました。反省。おもろいのでそのままにしておきます。ただもうちょい面白い話題で締めたかったので。
今回めちゃくちゃすごい方々に誘っていただいて合同出展させていただきました。メンバー不定サークル「インターネットやめないで」。
サークル名を冗談で提案したのはたこぴー氏、それをサクカに書いたのが私、本採用して登録したのもたこぴー氏。ちなみに元ネタはYakumoさんの別名義「㍻インターネットやめろ流星群」です。P0cketくん一切関係ねえじゃねえか。ごめん。
何を血迷ったのかメンバーを全員女体化させたキャラをサクカに描くなどやりたい放題やらせていただきました。いやーマジで楽しかったなM3。
インターネットやめないで公式Twitterが開設されたらしいのでどうぞご贔屓に。
https://twitter.com/net___love/status/1655160214394667009?s=20
次の秋M3ではインターネットやめないで主催Twitter凍結経験者限定イーロンマスクアカウント返せコンピが開催されるらしいんですが、私凍結経験ないので参加できないですね。インターネットやめないでやめちゃった。
こんな感じの締め方でいいかな?人生たのしいほうがいいです。お読みいただきありがとうございました。
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