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チャレンジこそ、私の人生 井谷俊介【後編】パラ陸上 短距離|挑戦のそばに

自分なりのトレーニングを模索しながら、常に抱く感謝の想い

2016年2月の事故で右足を失い、日本最速の義足ランナーとして2020東京を目指す、井谷俊介選手。2018年1月から本格的に陸上を始め、同年11月のアジアパラ競技大会100mで優勝(T44/T62/T64)。競技を始めてわずか2年で、トップ選手へと飛躍しました。それだけの急成長を見せる井谷選手は、まだまだ競技面は成長途上。トレーニングや強化方法も自分にあったものを、模索している最中です。

「トレーニングで意識しているのは、まず筋肉強化です。海外の大会で感じたのは、フィジカルが劣っているということ。まだ陸上選手としては線が細いので、それを補うための下半身強化を中心にしています。世界選手権の200mでも海外選手は全然失速感がないので、課題として取り組んでいます。義足の選手は軸がぶれやすかったり、片方に傾いたまま走る選手もいますが、私は普段から軸を意識して真ん中で走ることを練習しています。体だけではなく義足も長くしたり硬さを変えたりして、義足に合った体づくりをしながら、フィジカルと道具の部分で上手く成長していきたいです」。

まだ、パラアスリートの仲間入りを果たして間もない井谷選手。コンディショニングも、最初は全く気にせず、好きなものを食べる生活でしたが、今ではかなり気を遣うようになりました。

「コンディショニングに関しては、セルフケアをしっかりするようにしています。アミノバイタルは毎日飲んでいますし、何より飲み忘れると自分を責めますね、『何で飲んでなかったんだ』って(笑)。食事に関しては、偏りなく総合的にバランスよく食べるようにしています。競技を始めた頃は、朝ごはんを食べなかったり、昼に野菜が少なく揚げ物だったりという生活が多かった。それを昨年変えたところ調子もすごく良くなって、タイムも上がりました。今は食事の大事さを痛感しています」

そういった知識も、サポートしてくれる人々の協力を経て、学んできたもの。彼らへの想いは、言葉にしきれません。「支えてくれる人たちに対しては、感謝の思いしかないですね。自分が『陸上やりたい!』と言っても一人じゃできなかった。様々な方々が協力してくれて、導いてくれた結果、今、自分が走れている。トレーナーや義足を作ってくれている方など、皆でやっているスポーツだと捉えています」。

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私の人生は挑戦 “しか” なかった

激動の4年を経て、目指すは東京。しかし、大きな困難を乗り越えて、その度に新しい自分の可能性を見出してきた井谷選手にとって、それはひとつの通過点でしかありません。

「まずは出場内定をしっかり取って、決まったら東京で個人種目、リレーでもメダルを獲りたい。それが応援してくれた人たちへの恩返しになると同時に、もっとパラスポーツを知ってもらえる機会になるはずです。私にとっては、誰も私のことを知らない状態でメダルを獲っても、あまり価値がありません。沢山の方にパラスポーツ・陸上を見てもらい、知ってもらって、何か感じてもらえることのほうが大切です。義足や義手の選手を入り口にして、『障害って何だろう』『様々な人がもっと生活しやすい環境になるにはどうするべきか』を考える社会になって、障害者と健常者の壁がなくなり、心のバリアフリーが進む。「何か手伝いましょうか」の一言が簡単に言える世界になってほしい。その未来のために、しっかり走ってメダルを獲りたいと思っています」

理想の未来へ向けて、歩みを進める井谷選手。大好きな車のこと、あたらしい人生の道標となった陸上。病室でふさぎこんでいた頃から、勇気を持って踏み出した世界には、また違った夢がたくさん広がっていました。

「今はパラリンピックの舞台で走りたい思いが一番です。事故に遭い義足になってから、ずっと追いかけてきたその夢を叶えたいです。陸上もやりつつ、車のレースも両方うまくやっていきたいですし、様々なことに挑戦していきたい。夢がいっぱいありすぎるので、体の限界までは陸上を頑張って、引退した時にレーサーとして活躍できると嬉しいですね。海外だとアレックス・ザナルディという車のレースと自転車競技の両方で活躍している選手がいるので、そういう存在になりたいです」。

井谷選手自身にとっても、まだチャレンジは続きます。本人も想像できないぐらい、無限の可能性を秘めて。

「学生の時から常にあれもしたいこれもしたいという願望が大きくて、様々な人に助けてもらいながらここまできました。このお話が掲載されるのは“挑戦のそばに”ですよね? 正に挑戦しかしてこなかった私にとって、打ってつけだと思っていて、これからも様々なことにチャレンジしていきたいです」。

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<取材:2020年4月>
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