ずっこけ盆踊り放浪記⑤
踊りの神様はまた静かにやってきた。そして一連の私の踊りの流れを見てから、「いや、一曲の中で踊り方ってこんなに変わっていくんだね」と言った。
要は最初は下手な踊りでも、段々とこなれてゆくのだなあ、ということが言いたかったらしい。
ずっと見られてるやん。
神様にずっと見られてる。
けれどそんなことは意識せずに、ただ楽しくなんでもいいから気楽に踊ろうと思った。
郡上おどりにはいろんなタイプの曲があることも知れたし、案外若い層を中心に幅広い年齢層に愛されてる踊りなのだということも。
頭を空っぽにして終わりが近づくまで踊り倒す。
ふと遠くに目線をやると、グラサン姿の男が険しい表情でこちらを撮影していた。夫である。
気づくと3時間近く踊っていた。
郡上おどりのラストを知らせる曲が流れた。これが流れると、最後という意味らしい。みんな惜しみながら踊るのである。
風情あるなあ、と思った。
終了と同時に輪が散り散りとなる。
あの踊りの神様に挨拶して帰ろうと話しかける。
神様は大阪在住で、あまり関西で郡上踊りを指導してくれる場所がないので、正調踊りを習うために、わざわざ名古屋まで足を運んでいるらしいことが判明した。目が真剣だ。
結局「あなた、8割方踊れてます」という神様の免状をもらい、帰路についたのである。
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