英梨々と詩羽先輩のこと

『冴えない彼女の育て方』(fineはまだ観てない)を旦那に薦められて観た。内容の薄い萌えなハーレム系美少女アニメだろうと軽く考えていたけど、とても面白かった。旦那に薦められなければ多分観なかったジャンルの作品なんだけど、ほんと観てよかった。

鬱展開だという意見もあるみたいだけど、あのオチ、私はすごくよかったと思う。

英梨々と詩羽先輩は二人とも主人公のこと大好きなはずだったし、一緒に力を合わせてゲーム作ってきた仲間だから、チームから離脱するというのはショックな展開ではあるけど、仕方ないと思う。あの主人公は、詩羽先輩のことも英梨々のことも満たすことができない。切なくて皮肉な話だけれど、彼らは微妙に噛み合っていないからである。

では、英梨々と詩羽先輩がそれぞれ、主人公に求めていたものは、なんだったのであろうか。

英梨々は主人公に「自分のことを特別に思ってほしい」と思っていて、詩羽先輩は「私のことをわかってほしい、弱さも受け入れてほしい、よりどころになってほしい」と思っているように見えた。

しかし、主人公にとって英梨々はどこか危なっかしくて放っておけない存在だし、子供時代裏切られたということで屈折した想いもあったからなのか、彼女に対して「期待しきれない」し、可能性を「信じきれない」。
だから、英梨々に対しては「無理しなくていい」みたいなこと言っちゃって、いまいち強く出れない。

一方で、主人公は詩羽先輩の弱音に対しては決して応えず、毅然とした態度を取ることができる。
例えば、詩羽先輩はおもしろい作品を描き続けなくてはいけないという岸辺露伴的苦悩を抱えていたとき、熱心に自分の作品を読んでくれる最高のファンである『倫理くん』の存在にちょっと救われてしまい、彼の期待に沿うような作品を書くことで安心を得ようとした。そのとき、主人公こと『倫理くん』は「俺の意見なんか無視しろよ!俺は『霞詩子』の書いた作品が読みたいんだよ!あんたすごいんだから自信持てよ!」と彼女の弱音を一蹴した。

その後、ゲーム制作のシナリオに関しても「これ、クソゲーだよ」と詩羽先輩にズバッといってみせたり、英梨々に対しての歯切れの悪い態度と比べると、主人公お前本当に同一人物か!?という勢いである。

なんでそうなるかっていうと、主人公にとって英梨々は幼馴染でダメなところや弱いところをよく知っているもんだから、そっちの印象に引きずられてしまうからなんだろうなと思う。一方で、詩羽先輩は主人公にとっては神作家としての認識から始まってるから、その強さを信じて無責任に期待したり頼りにしたりできるのだろう。

英梨々は主人公のことが大好きだけど、主人公といるとクリエイターとして成長できない。だから、道は分たれた。しかし、彼女のクリエイターとしての動機の真ん中にはこれからも主人公の存在が有り続けるのだろう。それが切なくも美しいと思った。

そして、詩羽先輩は英梨々のこと、主人公よりも理解していて、そばにいてくれて「私がいる」って抱きしめてくれて、すんごい尊かった。甘やかさない態度で、でも静かに英梨々のそばにいてくれて、それでいて英梨々に「あんたも私のついでみたいな言われ方されて黙ってないでよ!あんた、すごいんだから!あの女のこと見返してやってよ!」って言われてちょっと涙流したりして、ほんと素晴らしかった。...... ありがとうございます。

相手のありのままを受けとめて、それでいて自分自身は芯がぶれないでいることが大切なんだろうなと思った。(メインヒロインこと加藤恵ちゃんは、わりと誰に対してもそういった態度で接せられる子だと思うので強い)

相手に幻想を抱いて期待する関係は、お互い苦しい気持ちになってしまう。だから、冴カノはあのオチでよかったのだと私は思いました。英梨々と詩羽先輩が好きです。二人の歩む未来に幸あれ。

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