【毎週ショートショートnote】非情怪談
これだけ暑いと、何かヒヤリとしたものを欲したくなる。
さぁ、何を食べようか。
ときおりヒヤッとしたものが首筋を撫でている気がするけれど、気のせい気のせい。
えんじ色のメニュー表を見ている内、自分の体が冷気に包まれているように感じる。
ここ冷房が効きすぎてやしないか。
店員を呼び、冷房を調整してもらうように頼むと、店員が苦々しい顔をしながら去っていく。
その間も体中がスース-してたまらない。
もう耐えられない。
とうとう、口を開いた。
「じいさん、ちょっとしつこいよ。怪談話は嫌だって言ったでしょ?」
「でもノルマが…」
向かいに座っているひげ面爺さんが困ったように揉み手している。
俺はイライラしながらこう言い放った。
「あ~、よりにもよってなんで怪談士のジジイが守護神なんだよ!」
すると益々眉間に皺を寄せた爺さんが申し訳なさそうに言う。
「ご意見等はエンマ大王までお願いします。とにかく、貴方を怖がらせないと家族が路頭に迷ってしまうのですよ」
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