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編みキノコ小説

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編みキノコの生態・編みキノコ界の事件を描いた小説をまとめています
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記事一覧

編みキノコ 放浪記 「女神の泉」(短編)

  童話に出てくるような綺麗な泉のほとりにでた。  覚えず、目を奪われている間にも光はその色を刻々と変えていく。  すると突然、水面が風もなく波立ち、ざわざわと光を乱すと、湖から女神が現れたではないか。 「編みキノコよ……」  女神は浮かび上がり、全身から青い光を放ちながら編みキノコに話しかけた。  「そなたが落としたのは……」  編みキノコは困惑した。  自分は何も落としていない。   しかし、編みキノコが口を開く前に、女神は両手を空に向けて差し出した。 「こ

編みキノコ 寄生小説 「犬とキノコ」(短編)

 自分の頭からキノコが生えているのはいったいいつからだろう。  犬は考えた。  少なくとも物心ついた時分にはすでに生えていた気がする。  でも犬はキノコが生えていても飼い主に可愛がられていたし、友だちの犬たちも仲良くしてくれていたので特に気にすることはなかった。  そう、今日までは。  今朝、いつものように心地よい眠りから目を覚ますと、なんと、頭上のキノコが語りかけてきたのだ。 「すいません。犬さん、目をお覚ましになられたでしょうか?まだお眠りでしょうか?すいません」

編みキノコ 不倫小説   「愛と胞子」 (短編)

「前略 皆様方 初夏の足音が待ち遠しいこの頃、皆様におかれましてはご健勝のことと存じます。 まず皆様に私はお詫び申し上げなければなりません。私がいなくなりましたのは皆様がどこかで思われている通り、旅行ではないのです。 私は皆様の前から逃げ出したのです。 「 『私がザルの上から生えているには理由があるのです』 などと思わせぶりなことを口にしたあと急に逃げ出してしまうなど編みキノコの風上にもおけぬ、とお怒りの方もあるのは無理もないことと私も思っております。 「そのことに関して