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モデルの動きは全部指示されてる?それとも自由?

モデルをやっていると、よく聞かれることがあります。

「撮影する時って、ポージングや表情に指示はあるの?」

答えは、

「指示される時もあるし、されない時もある」です。

そしてそれに続く質問が、

「指示された方がやりやすい?それとも指示がない方が自由に動ける?」

これはモデルによって答えが変わってくると思いますが、私の場合、

「指示が全くないよりは、あった方が助かります」

です笑。理由はのちほど。

そもそもどこまで指示が出されるの?という話ですが、それは出す人によって様々。体・顔の向きや表情から、足と足の間隔や、細かくはバッグを握る手元の力加減など、多岐にわたります。

どういった写真を撮りたいのかを事前に打ち合わせしていることが多いので(たまにモデルだけ打ち合わせがなく、突然カメラ前に立たされるときもあります…!)、あとは実際に撮りながらモデルの動きを見ながら、目標の写真に寄せていく、そのためのアドバイスが指示として出されます。

◆指示あり

多くはフォトグラファーからの指示になりますが、上記の通り、その出し方は人によって様々。やりたいポージングを細かく伝えてくれる人から、「もっとどっしりとした感じ!」と雰囲気を伝えてくれる人、「右足重心から真ん中重心にして」と体重移動に関する指示をする人等。

私の場合は仕事をご一緒する方々が毎回違ってくるので、その都度「この方はこういう指示をされるんだな」と、その人の指示の出し方を見るのが面白くもあり、またそれにどう対応するのか/できるのかと、少し緊張もします。

もちろん指示があったとしても、自分で考えて動くことも忘れちゃいけません。
このスカートは広がった方が綺麗かもと思ったら左右に揺れてみたり、浴衣やお着物のようなものだったら、ちょっとした重心のかけ方や腰の入れ具合、手先のニュアンスといったような最小限の動きを試してみたり。それがぴったりはまることもあれば、やりすぎだったり、もう少しこうしてほしいと言われることも。

そんなふうにして、明確な指示があっても、限られた範囲の中で自分なりにもう一つか二つ要素を加えていくことは、私にとってとても楽しい作業です。けれどそれは、初めから意識してやっていたわけではなく…ある撮影をしたことがきっかけでその楽しさに気づくようになりました。

◆”絶対”はない

何年か前にNYで、ビューティーの撮影がありました。そのフォトグラファーは口数が少なく、あまり多くを発しない人だったのですが、顔の向きに関しては「右向きで」と指示がありました。
そこから私はずっと右向きに顔を振っていたのですが、しばらくして彼から「今ずっとこっちの向きしか向いてないから、もっと動いて」と言われました。

言い回しに引っかかるところがあったのもあり、

”え、、、!自分が言ったんじゃん、こっちの向きでって!”

と少し、いや、かなりむっとしました笑。

だけど、それって私の良くないところだったなと、その後何年も仕事をしていくうちに気がつくことになったんです。

当時の私は、指示があるときはそれに目一杯従っていました。もちろん、それが正解の現場もある。実際に一度現場で、指示されたところから動いたら、フォトグラファーから「ああ!動いちゃった…。」とがっかりされたときもあったので。。涙

でも多くの場合は(上記のようにポージングを決め打ちで撮りたい現場以外は)、ただ従うだけのモデルは求められていないと思います。指示を瞬時に理解して動けることはもちろんとても大切で欠かせない力ですが、それだけではシャッターは切ってもらえません。

だから私は、いい意味で指示を裏切るようにしています。

たとえ「右向きで」って言われても、何回かその向きでポージングしたら、あとは少しづつ変えてく。右だけど下向いたり上向いたり、もう少し正面寄りにしてみたり。右の中でのバリエーションを持たせる。それでもう最終的には左に向いちゃったり笑。

そんなことをやっているうちに「あ!今のいいね!」ってなることは結構あって、その”いい”写真は最初に指示された向きではないこともあります。

かと思えば、「やっぱり顔は右向きにしようか」と戻されちゃう時も。ライトの関係もあり顔は絶対に固定したい、そんなふうに言われたときはもちろん従います。

指示はあっても、忠実に従うことだけが正解ではないと思っています。あのビューティー撮影のときには、それにまだ気づいていなかった。
私が関わってきたフォトグラファーたちの多くは、彼らが想像している絵が形になったときやそれ以上の表現が生まれたときに「いい!」とシャッターを切ってくれているように思います。だから、どんなに細かく言われたとしても、その指示が難しくてふてくされそうになっても笑、どこかに自分の表現を加えて動くことは欠かせません。

◆国内外での違い

日本では、ディレクターやクライアントからの指示・要望がフォトグラファーに伝えられ、それをフォトグラファーがモデルに伝えてくれることがほとんど。
そのため伝言ゲームのように、私の元に伝わってくる頃には、最初の言葉とニュアンスが違ったものになっている時も。。直接言ってくれてもいいのになと思うときもありますが、特に規模の大きな現場ではそうなることが多いように感じます。

海外の場合は日本と違い、ディレクターやクライアントも直接モデルに声をかけてくることが多い印象でした。私はこの方が、欲しい写真のイメージを早く理解することができるので好きなのですが、たまにトラブルが起きることも。

あるNYの撮影で、フォトグラファーの指示があり、その真後ろからディレクターの指示もあり、2人して同時に発するものだから笑、どちらを聞いていいのかわからず混乱したときがありました。
同じことを言っているならいいのですが、どうやら別の内容を言っているらしく、かつディレクターの声の方が大きくて、手前にいるフォトグラファーの指示が聞こえなかった。

モニターチェックの時や撮影が始まる前なら2人から言われても問題はないのですが、撮影中はやっぱりフォトグラファー一人から声をかけられる方が集中できるなと思いました。2人以上だとその声を聞き取る方に集中しちゃって(特に英語の場合)、入り込めない。

その場は結局、「聞こえない!」と一言はっきり伝えたことにより、一旦止まってそれぞれの指示を聞くことができました。「good」とか「nice」とかの掛け声だったら何人同時でも言ってほしいんですけどね笑

◆指示なし

指示なしの撮影とは…

カメラの前に立たされて「じゃあとりあえず動いてみて」と言われる、もしくは「撮りまーす」と言って急に始まる、またその後も無言でシャッターを切られる状況です。

つまり自由演技。

実はこれ、モデルにとっては結構な恐怖でもあります笑
(モデルの友人たちに聞くと、共感してくれることが多い多い!なので、私だけじゃなかったんだ…!と安心しました笑)。

こういう場合、服・ヘアメイク、ロケだったら撮影場所の雰囲気を感じ取って、自分の今までの経験値を総動員して動くのですが…

どう動いても「いい」とも「違う」とも言われず無言でシャッターを切られ続けていると、段々と「これでいいんだろうか…?」と不安が募ってきます。

さらに、周りで見ているクライアントやヘアメイクチーム等からの反応も見てとれないと、なおさら不安になり、次第には表情や動きも固くなっていく。。

そんな時の気持ちの対処は中々難しいものですが、私の場合は、近くにいるヘアメイクさんに意見を聞いてみたり、撮ったばかりの写真をモニターで見ながらもう少し何かできないかと探ってみたり、直接フォトグラファーに方向性が合っているのかどうか聞いてみたり…とにかく自分一人で悶々としないようにしています。

実は、ヘアメイクさんにこそっと「今どんな感じなんですかね?大丈夫なんでしょうか…?」と状況を聞いたとき、こんな答えが返ってきたことも。

「あみちゃんの動きはそのままで良くて、実は背景を決めかねているらしんだよね」と。

え!そうだったのか…!と、それまで抱えていた不安な気持ちは一瞬で吹き飛びました笑。撮影全体の状況って、残念なことに、中々モデルまで伝わってこないことが多いんですよね。

また別の現場でフォトグラファーに聞いたときは、

「いやぁ僕はもう撮れてると思ってるんだけどね…」(クライアントさんのOK待ち)

と。実は大体の場合が、こちらが不安になる必要はないのかもしれません。無言なのは、信頼されてる証拠でもあるのかも?と、そういった現場をこなしていくうちに徐々にポジティブに捉えられるようになりました。
それでも”自由”であるがゆえのプレッシャーはなくなりませんけどね。

指示の有無に関係せず、結局は自分で考えて動くことは必須です。

けれど私は、指示があって、そこに自分なりにプラスして、それによってまた別の指示が出て…と、どんどん良いものにしていく、その相手との作る過程が好きなので、冒頭で書いた「指示が全くないよりは、あった方が助かります」という答えになりました。せっかくだから、そのチームでできる最高のものを作り上げていきたいですよね。


周りにいるモデルに、こういった「モデルがよく聞かれること」への回答を求めたら、それぞれのユニークな答えやそこに行き着くまでの経験談も聞けて面白そう。今回の記事はそんなことも思いながら書いていました。

みんなの経験がこれからのモデルに勇気を与えるし、悔しい思いがモデルの今後の立ち位置を上げていくのにとても役立ちそうだなと最近すごく思います。

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