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大変すぎた!7日間耐久、スウォッチ撮影!

”スウォッチ”という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
モデルならやったことはなくても聞いたことはあるかな?もしくは、聞いたことはなくとも、見たことはあるはず。

スウォッチとは、化粧品の色味をわかりやすく見比べるために、肌に塗って作られる色見本です。

私はNYで初めてこの仕事を経験したのですが、これが思った以上にハードだった、、、!今回はそんな過酷でありながらも、素晴らしいチームと働けたときのお話です。

◆裸でキャスティング?!

ある日、某有名ブランドのビューティー撮影のキャスティングに呼ばれました。マネージャーからは、「とてつもない数のモデルが集まるから、開始時間の15分前には着いていた方がいい」と、珍しくアドバイス付きのメールが。

会場に着くと、同じ事務所のモデルが1人だけ。しかし開始時間になると続々とモデルが集まってきて、あっという間に何十人ものモデルで埋め尽くされました。

キャスティングスタート。2人ずつ呼ばれ、撮影セットの方へ移動。用意したバスローブに着替えてほしいとのことで、フィッティングルームへ入りました。

そこで、一枚の張り紙が。

「全て脱いでバスローブに着替えて」

え…!これって、下着も全部っていうこと…?
ビューティーって言ってたけど…もしやヌードの撮影なの??!

どうしようと思って外を確認すると、もう1人のモデルもその張り紙を読んだらしく、少し困惑した表情で先にセットに向かって行くところでした。

その直後セットの方から、「下着はつけてていいのよ!」と焦ったような女性ディレクターの声、そしてこちらへ戻ってくるモデルが。どうやら”下着以外の服全部”という意味だったみたいです。
全部って書かれたらそりゃ覚悟決めて脱いでっちゃうよ、、書き方が紛らわしいな…ホッとしつつ、私も着替え直して急いでフィッティングルームを出ました。

それにしても、何の撮影なの…?なんとなく普通のビューティーのキャスティングとは違った雰囲気を感じていたところ、後日、顔切りのスウォッチ撮影だと判明。
キャスティングに行って、さらには現場に行ってみないと仕事の詳細が明らかにならないなんてことが、よくあるんですよね。マネージャーも、「え?顔写らないの?」ってすっとぼけてました笑

ちなみに、顔切りとはいえネームバリューのある大きな仕事だったため、1回目のキャスティングを受けた後にコールバックがあり、数百人のモデルの中から、白人1、黒人1、アジア人3の計5人が決まりました。今考えるとすごい倍率!(そのときに撮影された写真↓)

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◆とにかく待つ、待つ、待つ

スウォッチを作る商品は、リップ。1つのリップにつき、色の種類は10色ほどのものもあれば、40色を超えるものも。それらを7日間かけて撮影します。しかも、単純に唇に塗って撮影するのかと思いきや、他にも腕、脚、さらにはお尻まで…!中々に衝撃的な撮影を経験することとなりました。

顔切りと言いましたが、顔の下半分は入るとのことで、まずは通常のヘアメイク。その後に、その日やるメインの場所に色を乗せていきます。

唇は一色乗せるだけなのでまだいいのですが、一度に何色も乗せる腕などの部位は、1パターンのスウォッチを作るのにかなりの時間がかかり、メイクさんも大変、そしてずっと肌を出しながら待機するモデルも、意外に大変。人って、何かをやっている時より、何もやらないで待っている時の方が疲れたりしますよね。。

唇ver.

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腕ver.

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撮影は基本、3人一組。白人、黒人、アジア人の組み合わせと、アジア人3人の組み合わせを撮ります。なので、2チームどっちにも入るアジア人モデルは特に大変。
私にも、7日間のうちの後半にその役割が回ってきました。一チーム撮っている間に、もう一チームがメイクして…というように交互に撮影していたので、休む暇が全くない。それを一日に8時間。かなりの体力と気力が必要でした…!

◆密着度MAXの撮影

撮影は女性のみ(1人、ゲイの男性メイクさんもいましたが)、周りから見えないように囲われたクローズドセットの中で行われます。腕や唇の撮影はまだしも、脚やお尻を写すときはかなりの露出になるため、きちんと配慮された現場になっていました。

さて撮影本番。やはりモデルたちも、されるがままのヘアメイク中とは打って変わって生き生きとしています。1人での撮影とは違い、3人全員がいいポージングで写らなければいけない為かなり難しいのですが、そこは皆、中々のビューティー経験者!ちょっとした変化をつけてポジション取りするのが上手い。撮影していてすごく楽でした。

唇撮影のときは、頬と頬はくっついていて、相手の息遣いを感じるような、ちょっと間違うとキスしてしまいそうな近さで撮影しています。で、写っていない体の部分はもう、めちゃくちゃ密着してる。写真で”少し近いな”くらいの距離は、実際はものすごくくっついているので、かなりの緊張感があります。

間違えてチュッとか相手の頬にやってしまったときなんかは大変。くっついてしまったリップを、いちいちメイクさんが直すという余計な時間もかかってしまうため、皆そうならないよう慎重に動きます。そのため、一日終わるとすっかり肩や首が凝ってしまう笑

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しかし一番に大変だったのは、脚・お尻の下半身でのスウォッチ撮影!商品の中でも色の数が多いものは、乗せる面積を広くとれるこの部位で撮影します。

3人中、私は脚の太ももの側面にスウォッチが作られたのですが、あとの2人は、1人が脇腹からお尻にかけて、もう1人がお尻の側面に作られることに。
マスキングテープを何度も貼って剥がして、リップも色むらがないように丁寧に塗っていくので、1つのスウォッチを作るだけでも相当な時間がかかります。あまりにも時間がかかるので、終いにはディレクターも手伝い始めるほど。。長時間肌を露出してメイクされるのって、結構疲れるもので、撮影する前から皆クタクタになっていました。

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テープを剥がされるのも地味に痛かったな、、、笑

IMG_5231 のコピー

いざ撮影。唇のときなんかよりさらにクローズドされたセット。バスローブ姿で向かい、セットに入ったら上までたくし上げます。
もちろん裸ではないけれど、、Tバックを履いて極力肌の面積を多くし(Tバックは後でレタッチで消されます)、高さを調節するための箱馬(写真↓)に立ち、お互いの体を密着させてポージングをとることに、最初はかなりの恥ずかしさがありました。

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◆最高のチーム

来る日も来る日もひたすら色を塗られ、撮影する。こんなにスウォッチの撮影が過酷なものだったとは、、、やってみて初めてわかりました。(普段からこの仕事をされているパーツモデルの皆様、本当に尊敬します!)

そんな中で唯一救いだったのは、メンバーが最高だったこと!
モデルたちが皆フレンドリーで、「Good morning~~」から始まり、朝食を食べながらそれぞれの母国がどこか、朝は何を食べるのが伝統なのかというと話や、他にやっている仕事について等々(ジュエリーデザイナーだったりSEだったり、モデル以外に職を持っている子もいて、話を聞くのが楽しかった!)、毎日喋り続けるうちにとっても仲良くなりました。大変な時間を共にしているという経験も、より絆を強くしたのかもしれません。

モデル以外に、ディレクターとフォトグラファーもとても素敵な人たちでした。ノリがよく、また私たちモデルの女性としての気持ちも理解してくれるような2人だったからこそ、最後まであたたかい空気で終われたのだと思います。
最終日は、撮影が終わってみんなと離れるのが寂しく感じるくらいでした。

全日程終了後、もう会うこともないかなと思っていたのですが、モデルの中の一人とはファッションウィークのキャスティング会場でよく会うことに。あの大勢の中、そして連日のキャスティングで疲労困憊の中、仲良しの子にばったり会えちゃうというのは本当に嬉しいことで、、、その一瞬で疲れが吹っ飛ぶようでした。それくらい、大切な友達ができたのです。

instagramより。2枚目動画に、キャスティング会場で彼女とばったり会って嬉しそうな私が映っています笑

大変だったスウォッチ撮影。今ではそういう写真を見かけると、”ああ、この撮影も大変なんだろうな…”という気持ちが湧くようになりました。何事もやってみなければわからなくて、やってみることによって気づけることがたくさんある。そんなことを知れた、とても貴重な経験でした。

そして、人種を超えて言葉を超えて仲良しと呼べる友達ができたことに、そのきっかけとなったこの現場に、本当に感謝しています。大変な撮影も、たまには悪くないかな!笑
そんな大変だった現場の仕上がりはこちら。良ければ見てみてくださいね。

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