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他人が気にならなくなったとき

私がnoteを書いているのは、モデルをやっている人に「そんなことで落ち込まなくていいんだよ。自信を無くさなくていいんだよ」と一言声を掛けたかったことにたんはっしています。
こんなことを言ったら、上から目線に思われるかもしれない、、そんなことが頭によぎりつつ、これが私の本心でした。

私自身モデルとして過ごしていく中で、何度も自信がなくなるような出来事を経験しました。そんなときには、周囲の人が話してくれる体験談や、そこから紡ぎ出される言葉にいつも助けられていました。お陰で「そこまで自分を落ち込ませなくていいんだ」と、気持ちを立て直すことができました。

当初は「有名ブランドのランウェイを歩いたわけでもないし、テレビに出て顔が知られているようなモデルでもない、そんな私が書いたって…」様々なコンプレックスからそんなふうに思うこともありました。

けれど、私に言葉をかけてくれた人たちを思い出せば、そんな経歴は関係なかった。彼ら彼女らの経験から発せられる言葉は、ただただ私の心にすっと入ってきて、ぽんっと背中に優しく手を当ててもらったかのようにあたたかい気持ちになりました。
もしかしたら私の経験をシェアすることで、心が軽くなる人もいるのかもしれない、そう思ってnoteを書き始めました。

そしてその内容は、私が海外で感じた気持ちに大きく影響を受けています。

◆東京から海外へ出て変化した気持ち

モデルを始めたときは、周りは全て競争相手だと思っていました。オーディションで比較されて受かる受からないがあるのだから、はたから見たら、それはずっと変わらない事実なのかもしれません。

この人が同じ土俵にいるなら私は受からない。そんな気持ちでオーディションを受けていたこともあります。自分に自信がないからこその気持ちでした。「他人と比べても仕方がない。」頭ではそう分かっていても、正直にいてくる感情はどうしようもありませんでした。

特に日本にいたときは、ショーのオーディションに行けば顔見知りばかりで、誰が受かったかすぐにわかる。そんな環境に、私はいつもプレッシャーを感じていました。事実、半年毎にやってくる東京コレクションの期間は、常に口内炎が3つあるほどで笑、かなりのストレスだったと思います。

それが、NYファッションウィークを経験し、その後ミラノへ行ったことをきっかけに大きく変わりました。

□東京から、より忙しない環境へ

まずはNY。世界中からモデルが集まってくる場所であり、誰が受かったかとか気にする暇もないくらい、自分のやるべきことを考えるだけで精一杯の目まぐるしい日々でした。

オーディションにモデルが300人以上並ぶなんて当たり前。
待ち時間が2時間以上になることも当たり前。
その間は座る椅子がないことなんてざらで、ビル内の廊下に座って待機することもありました(地べたに座るなんてとんでもない!と思っていた私も、終わる頃には全く気にしなくなっていました笑。立っていられない…それくらい長い待ち時間だった)。

屋内に待機場所がないときは炎天下で待ちぼうけ。待ち時間が長ければ長いほどモデルたちは疲れていくし、下手したら早く終わらせたい一心で順番を抜かそうとする子もいて(自分より前に並んでいる友達にSay Helloしに行って、そのまま並んでしまう子もいました)、、そんな光景に別の感情も湧いてきたり。それでも自分の番が回ってきたときにはヒールでしっかりと立ち、時には居並ぶモデルの目の前を歩いて、自分の良さを出さなければならない。

それを1日に何度も。多いときには10本。人によっては15本ものオーディションへ。毎日全力で取り組むため、1日の終わりには気絶して寝ているなんてことも。この生活が1週間〜10日続きました。

そしてNYを含めて4大コレクションと呼ばれるものに出るためには、これを4週連続で続けていかなければなりません。
ある年、私も他の都市を回るため、NY最終日が終わったと同時に、その日の夜にはヨーロッパ行きの飛行機に乗り込んでいました。

2番目の開催都市であるロンドンのオーディションには間に合わないため、スキップして3番目開催のミラノへ。ここで私は、コレクションを回る大変さを知ります。

NYでのオーディションは、1番目ということで、皆疲れは感じながらもまだまだ元気でした。しかし3番目開催ともなると、蓄積された疲労はピークを迎えており…オーディションにもそれが表れるほど。NYであった順番抜かしなんて可愛いもの。着いた順に並んで受けるなんて考えははなからないのか、モデル同士が我先にと前に出て行って順番を取り合う…そんな殺伐としたスタイルに何度も遭遇しました。

□別れの挨拶は「Good Luck!」

そんなファッションウィーク中、たまに知り合いのモデルにばったり会うと、自分だけじゃなくみんなも物凄く頑張っていることが見て取れる(もはや話さないでもわかるまである)。

ほんの数分話してまたお互い別のオーディションに向かうのですが、別れ際には必ず「Good luck!」と言って去っていく。私はずっと「You too!」と返答する側でした。

忙しい中で時には厳しいジャッジも受けて相当疲れているだろうに、相手のためにそんなことを言える。素晴らしい心持ちだなと思ったと同時に、単純に、言われると嬉しかった。私も背中を押してもらうだけじゃなく、こんなふうに押してあげられるようになりたい、そんな気持ちにさえなりました。

こんなに疲れることを毎シーズン繰り返し、また毎回必ずと言っていいほどのアクシデントや悲しくなるような出来事に遭遇し続ける中で、周りを競争相手だと意識することが私の中からなくなっていきました。誰がどうとかではなく、1本1本自分の気持ちを整えて、何に乱されるでもなく、自分のベストな状態でオーデイションに向かうことに集中しました。

加えて、このファッションウィークを受けているモデルたちはみんな、同じように踏ん張りながら頑張っている…会話する中でそれに気づいたとき、チャレンジして頑張っているすべてのモデルが仲間のように思えました。

こんな気持ちになったのは、決して自分がいい結果を残せていたから、余裕があったからではありません。むしろショーでは思うような実績が出せず、悔しい思いをしていたときです。自分でも不思議な感覚でした。

周囲に知っているモデルがほとんどいない、むしろオーディションに行ったら知り合いに会う確率の方が低いという環境も、私にとっては良かったのかもしれません。お陰で誰が何を受けているのか知らない、結果もわからないことがほとんどで、「競争相手」を意識しようにもできなかったのかもしれません。
ついに口内炎もできませんでした笑

◆他人が気にならないところまで行く

周囲のモデルが仲間のように思えた、海外で生まれたその感覚は、帰国しても私の中から消えませんでした。それは一種の自信のようなものだったのかもしれません。

「これだけやってきたんだから、その上で結果がダメなら仕方ない。」

この気持ちを持てたことは、私の中ではとてつもなく大きな出来事でした。初めて、他人と比べないってこういうことなのかと思いました。比べない云々ではなくて、自分の良さが出せていれば、そもそも他人は目に入らないってことか、と。まずは極限まで自分がやりこむことが大切だったんだと気づくことになりました。

私のnoteには、モデルを応援したい気持ちが根底にあります。それは海外に出たときに感じた気持ちがもたらしてくれたものです。それ以前の私だったら、絶対に書けなかった。

簡単ではないけれど、辛いだけでもない。それが伝わるよう、記事1本1本に想いを込めて書いています。「モデルをやってよかった!」と言える人が増えますように。


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また下記の記事では、実際に私が経験したNYファッションウィークについて書いています。良ければ併せて読んでみてください。

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