そういう時もある
彼女はワタシが人の目を見て話すのが苦手だと知りながら、常に私の視線を捉えて離さなかった。
「あなたが見ているモノと私が見ているモノって本当に同じだって言える?」
しっかりとこちらを見て話す彼女の瞳に映るワタシはワタシだと思う。けれど長い時間それを見ていられなくてすぐに視線をそらすと、もうそこにワタシがいたのかどうかはわからなくなる。
「今使っている言葉も一緒?通じてるから一緒だなんて限らないよね。だって都合よく翻訳されているだけかもしれないじゃない
そうだとすると話が通じない人と出遭うのも納得がいくよね。だって都合よく翻訳されちゃってるんだもの。」
彼女の発している言葉は辞書に載っている意味でなら理解できる。辞書とは普遍のものなのか、疑問があるが。実は違う意味をもっているのだろうか?
彼女はなおワタシを見つめながら、そっとワタシの腕に彼女の手を重ねてきた。
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