文庫作品を非公開にする理由について。

 こんにちは。星が降るラボラトリです。

 今回は、昨晩のおしらせについて、「どうして作品を非公開にするのか」というあたりを詳しくお話しできたらと思います。


 Web版の公開終了を決めた理由なのですが、いちばん大きいのは、「やっぱり自分の作品を守りたい」と思ったから、です。

 AI技術の隆盛だとか、SNSを取り巻く環境とか。いろんなことが目まぐるしく変化していくなか、このままでは自分の作品を守れないかもしれない、って思うことが増えているんですよね。不安がひたひたと足元に迫ってくる、みたいな感覚がずーっとあって、その水位がどんどん上がってきてて。
 それで、万が一、盗作や無断転載などに遭ったとしたら。そうなったら、自分は筆を折る可能性が高いと、本気で思うから。

 届けられる範囲は狭まってしまうかもしれない、というのは、わたしにとっても寂しいことなのだけれど……それでも、わたしが表現を続けるためには必要な措置だと判断しました。
 ペンを折っちゃったら、元も子もないので。


 もうひとつ、「わたしが届けたかった読書体験は、こういうのじゃないな」と思ったから、というのもあります。
 画面をスクロールして次の行へ、リンクをタップして次の章へ……ほんとはそうじゃないんだよなあ、って感覚があって、どうにも拭えなくて。

 わたしが本をつくるときって、紙のページをめくって読んでもらうことを前提に、「ここでページが変わるようにしよう」とか、「ここはページ上の余白が広くなるようにしよう」みたいにして作品全体を設計しているので。Webサイト上では、どうしたって100%の体験をお届けできないんです。

 Webで読んで、気に入って、文庫を買う、って流れもありますよね。実際、そうやって文庫をお迎えくださったかたがいるのも知ってて、ありがたいなと思っているのですが……
 一度きりの「最初」が、わたしの思っていた作品のすがたではなくなっちゃう、っていうのが、やっぱり、けっこう寂しいし、つらいんです。
 ここはもう、完全に作者のエゴなんですけど。


 そんなこんなで。
 文庫のかたちに仕上げた作品について、今後は、全編をつねにWeb上で公開する、という形式を取らないつもりです。
 読み手さんにもいろんな都合や事情があろうかと思うので、たいへん恐縮ではあるのですが……ご理解いただけたら助かります。


 繰り返しになってしまうのですが、文庫についてはいまのところ、どの作品も終売を考えていません。一時的に在庫がなくなることがあっても、「お迎えしたい」の声が届いているかぎり(かつ、わたしに余力があるかぎり)は、どうにか増刷できるよう手配していきます。
 もしお気に召していただけているようなら、お迎えにきてくださると嬉しいな。


 残りわずかの公開期間ではありますが、いまからでもこの子たちと出会っていただけたら嬉しいし、気に入っていただけたならすごくしあわせだなあと思います。
 今後とも、星が降るラボラトリをよろしくおねがいします。

2023/04/05
雨谷とうか @ameya_ayameya

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