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夢幻紳士の映画を見たよという覚え書

 だからまだ魂がやわやわの時点で高橋葉介作品に出会ったらそうなるんだってば!!!!! という思いが一番強い。まあどこで出会ってもだいたいめちゃくちゃにされるけど。魔実也に出会ったらもう駄目だね、逃げられない。

 そんなわけで(どんなわけだ)『夢幻紳士人形地獄』、大阪での上映が本日より九条はシネ・ヌーヴォにて開始となっております。三週間やってるんだっけな。ああいう映画館が残ってるってだけでもね、大事なことだと思うのよ。大規模な映画館で上映しないような映画もそこで生きていける。応援はしていきたいなと。存外近かったのでまた気になるものがあれば行こう。


 今年の初めの方だったかに実写映画上映あるらしいぜと聞いたときは「そんなことある??????」となったし、しばらく「そんなことある??????」となっていたのは事実。んでもって上映始まってるハズなんだけど全然感想とか耳に入らなくて「あの記事こそ幻だったか????」とまで思った。幻じゃなかったですね。


 見た感想としては、癖が強いなというのがやっぱりある。これを見てくれと大声でいうのはちょっと難しい。癖の強い映画を見せて大丈夫だという人にしか勧めないぞ私は。とりあえず『茶の味』最後まで見て判断してもらって、あれも結構癖があるので。方向性違うけど。

 実写化ってまあ難しいじゃないですかというのが大前提。
 特に夢幻魔実也というキャラクターはシリーズごとに結構差異があるので、やっぱりファンそれぞれがその人の中の夢幻魔実也を作り上げちゃってるところがあるという難しさ。
 さらに原作のテンポと空気感も漫画という紙面だからできるところみたいなのがあって、結構ポンポンと話が進んでしまう。葉介先生は映画のカットを参考にしているところがあるともインタビューで語っているんだけど、とはいえやっぱり映像となると間の部分を作らざるを得なくなってくるわけで。そこを原作ファンがどう捉えるかってとこかな~……と思った。
 ちなみにまったく事前情報なしで初回で行ったわけなんだけど、なんと監督と演者さんが挨拶で来られていて、監督の口から話が聞けたのは貴重な体験だった。
 そんで話聞いて思ったのは、前述の間の部分の捉え方なんだけど監督は「間を埋めたい派」だったのねということ。私自身はこの作品については「間を間のまま受け取りたい派」なのね。そこの肌感覚の違いがある。
 話を通そうと思っちゃうと駄目とは言わんが、あの奇妙な感覚は欠けてしまうなというのが全編通しての感想だな。

 ん~……いや、嫌いじゃないんだよな。嫌いじゃない。意欲もすごい感じた。魔実也を演じた皆木さん自身が「魔実也はもっと若い子にやってもらったらいいのに……」とおっしゃったのは笑った(申し訳ない)が、それでも動きの感じとかたまにコミカルさが入る辺り(ここはやっぱベースが少年魔実也ってのがあるんだろな)はよかったんだよな。シルエットも綺麗だった。あと声はなんかすっと魔実也の声だなと思えたのでこれはすごいのよ。魔実也の声誰にやってほしい? って言われたらいまだにわかんねえもん。

 ただやっぱ元の『人形地獄』って24ページの短編なんでね……これを一本の映画ってなるとやっぱしんどいじゃない……『老夫婦』も混ざってんだけど、私はそれについては「え~そう混ぜる~? あの終わりこそ当人たちには幸せでいい終わりじゃないですか~」って思っちゃうんだよな。

 ま~その、黒澤作品の『夢』みたいなオムニバス形式でいくつかエピソード詰めるとかの方が収まりよかったんじゃないかなって……思う……んでもってそれなら『半人形』を……いやあれは無理か。さすがにダメか。あ、じゃあ『幽霊夫人』やろ! 私皆木さんがクソ亭主に酒ぶっかけるシーンは正直メチャクチャ見たいぞ! あと走るの綺麗だったから『夢魔』やろ!
 めっちゃ欲望出たわ。でも酒ぶっかけシーンは見たいよ。


 さて話は戻るけど、実写ってどこまで原作に沿うかってのもかなり難しいと思うのね。やっぱ一本でまとめなきゃだし、よっぽど商業的にイケるって判断できなきゃ前後編なんて作りようないしね。んで原作に忠実に作って元々のファンは喜ぶけど新規は付かないってのもまた悩みどころよねって話になってくる。
 ただ今回のこれはそもそも原作ファンじゃなきゃ見に来んのよ。
 で原作ファンはもう癖が強いのよ。強いだろ、高橋葉介作品読んでて実写映画見に行こうとか思う奴は十中八九癖が強いだろ。
 そうなるとやっぱどこまで原作に沿わすかの方が大事かなとは思っちゃう。監督の味が出るのも悪くはないんだけど。女のめんどくささみたいなのは良かったよ、ただやっぱその女同士は絡まなくていいかなってのはある。


 あとこれはもう予算とか諸々仕方ないよなってとこなんだけど、演出の感じが結構平成で。平成も初期~中期といったところで。なんだろう、令和にこれ上映してんだ! っていう謎の感慨深さ。
 人形が浮いてたりするとこの悪夢感は良かった。あれはいいよ。
 ただ何だその、いややっぱこれ令和にやってんだ???
 映像がどうこうじゃないんだ、画面の作り方みたいなあれだ。これを味わってほしいみたいなのはちょっとある。ちょっとね。


 今年はね、原画展も今やってるし画集も出るしで高橋葉介イヤーなのよ。映画も(これは多分たまたま)やってるしね。結構電子化もされてるので原作気になるな~って方はぜひ。
 癖強めの映画好きよって人はお近くの映画館でやっていればちょいと見てきて映画館の方も応援してあげてくださいな。

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