「育てたい」【エッセイ】

 何かを育てたい。ふと、そんな気持ちに襲われる。
 寂しいわけではない。いや寂しいのだろうか。石を飼っているし(名前はキャロライン山野)。石はいいぞ、動かないし。なんか道で拾ったのでリボンをつけてあげている。かわいい。

 違う、そうではない。何となく何かを育てたいのだ。

 そういえばごくごく小さい頃、たまごっちが流行った時代にちょうど幼稚園児だった私は、マジでたまごっちを見たことがなかった。なんとなく友人が持っていたような……気がしないでもない。わからない。親が買ってくれなかったことを恨むつもりはない、欲しがった記憶もないのでそら親も買わんだろう。
 ああでも、周りの子がやっているから可哀そうだと初代DSを買ってもらったことはある。どうぶつの森も一緒に買ってくれた。私はクリスマスだからとゲームキューブのピクミンをねだったはずなのだが。ゲームキューブは弟が持っていたし、ファミ通に載っていたピクミンを投げるアクションがやりたかったはずだ。そしたら「友達の輪に入れていないから」と無限借金返済ゲームを買われた。友達がやっているのにやっていない、私はそんなもん気にしてなかったのである。ただ赤ピクミンを燃え盛る敵にぶん投げたかったのだ。まだ恨んでいる。ピクミンやりたい。
 ピクミンを植えて増やすのも、育てるうちに入るのだろうか。わからん。そもそもピクミンは、あれはなんだ? 植物なのか? 動物の類なのか? あれは、なんだろうなあ。ちなみに歩いて増やすやつはやっていない。位置情報のやり取りでiPhoneのバッテリーが減るのが難儀だったし、そもそもああいうゲーム(ゲームか?)は続かない私である。白ピクミンを敵に食わせたりできるなら続いたかもしれない。

 ああ、育てたい。
 なんだ、なけなしの母性本能をここで使い果たすつもりなのか。私の精神は何がしたいんだ。ピクミン以上にわからない。

 魚でも飼えばよろしいのかもしれないと思ったりもするが、私は水槽が駄目である。厳密に言えば水槽を覗き込んだ時に水の屈折で酔うから、そんなもんを部屋に置いておけないのだ。この体質があるので水族館に行けない。オオサンショウウオに会いたい。
 実家にいるので猫もネズミもいるのだが、なんかこれは「育てる」ではないなあと思ってしまう。「世話」なのである。可愛いが。
 やはり植物だろうか。今部屋にグロキシニアはいるが、それだけだ。こいつは移動販売の花屋で死にかけていたのを買ったら、びっくりするくらい元気になってしまい三年目の今年は過去最高に花を咲かしてくれた。ほぼ水やってるだけだぞ。植え替えくらいはしてやったが。どうしてそんなに元気になってしまったのだ。

 なんというか、植物はちょっと怖い。昔に多肉植物をうっかりイオンで貰っちゃった時も、なんとなく水やったりしてたらポコポコ増えた。本当にポコポコという音が似合うくらいに増えた。なぜ。多肉は深堀をしていけば面白そうな分野ではあるが、増やすのが怖い。そんなに増えてもどうしようもない。
 ちなみにポコポコ増えたやつは引っ越す際に親に預けたので多分全滅した。親はこの辺りが下手くそなので。帰ってきたらいなかったのでそういうことなのだろうな。

 育てる、育てるったってどうしたらいいんだろうなあ、何をどうしたら育てられるだろうか。

 やっぱりシーマンか?

 そうなるとドリームキャストを買うところからになるのだろうか。
 アレ、面白いのか? やったことがある人は教えてほしい。あれは育てるうちに入るのかどうかを。

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