『嵐を呼ぶレース参戦記』(復刻版)第三話「嵐を呼ぶジムカーナ」
◇安全運転編◇
2004年5月30日、朝5時に起床。シャワーを浴びて無理やり眠気を飛ばし、準備完了。
昨日の晩に軽量化大作戦を完遂したアルトワークスに乗り込み、桶川にGO!
今回、一緒に桶川にてジムカーナに参戦するのは、kyu氏。
ちなみにT氏とE氏は、今日は日光サーキットでの走行とのこと。
というわけで、桶川まではkyu氏のインプレッサに先行してもらってのドライブである。
内装をはがし、むき出しになったマシンの内部は、まるでレーシングカーのようで、乗っているだけでも“自分はレーサーだぜ”ってな気分を味わえる。
(あくまで気分だけ)
内装を取ったため、エンジン音とか、振動とかが結構うるさいかと思ったが、案外そうでもなかった。
というわけで、ドライブがてら音楽を聴くことにしよう。
昨日の軽量化で、後ろのスピーカーは取ってしまったが、前にもスピーカーがあるし、MDは残っているので、一応かけてみる。
さて、読者の方、特にクルマ好き、イニシャルD好きの方の多くは、クルマの中でかける音楽はユーロビートや、テンポが良く、スピード感あふれる曲を好まれるだろう。
私もその例外ではないが、今回はちょっと違う方面からアプローチしてみた。
ちゃ~ら、ちゃららちゃ~ら♪
アルトワークスの中で、荘厳に響くこの曲は…
『未完成交響曲』 byシューベルト
ばりばりのクラッシックである。
ユーロビートなんてもう時代遅れ。ナウなヤングはやっぱりクラッシックだろう!
それが終わったら今度は、
『レクイエム』 byモーツァルト
朝っぱらから凄い気分になってしまった。
…それにしても、今更ながら思うが、未完成→レクイエム、というこのコンボ。
縁起でもないと思うのは私だけだろうか?
まぁ、それはともかく、早朝の道路は空いており、実に気持ちよいドライブを堪能できた。
がっ、走っている車が少ないからといってスピードを出したりはしない。
エンジンもミッションもまだ暖まっていないので、ひたすら丁寧に、車をいたわりつつサーキットに向かうのだ。
もちろん、交通ルールを守り、制限速度を破らず、模範的な安全運転することもレーサーの常識。
公道では安全運転、サーキットでキレた走り、これが一番かっこいいのだ。
エンジン、クラッチ、ギアボックスに優しい走りをしつつ、ゆっくりのんびり早朝の景色を楽しみつつ桶川サーキットに到着。
さて、サーキットに着いたら、実際に走行を始めるまでにやっておくことが色々ある。
経験者なら常識だが、多分読者の多くは知らない(私も知らなかった)と思うので紹介しよう。
なんといっても、この『嵐を呼ぶレース参戦記』の隠れた目的は、モータースポーツの普及である。
クルマって楽しいんだぜ、サーキットを走るって、こんなに面白いんだぜ、ってなことをアピールし、モータースポーツの敷居を低くするのが、私の野望なのである。
「こんな素人に出来るんなら、俺にだって…」と思って、サーキットに足を運ぶ人が少しでもいれば、私は幸せだ。
そのためにこそ、私は走るのだ。
そのためにこそ、私は参戦記を書くのだ。
◇サーキットに着いてからやること◇
1:マシンのチェック
まずはタイヤのチェックから。
ボルトはしっかり締まっているか、空気圧は大丈夫か、表面のゴムは磨り減っていないか、などをチェック。
そしてエンジンルームもチェックする。
オイルの量は大丈夫か、あちこちにあるいろんな蓋はきっちり閉まっているか。
それからマシンの外観を全体的にチェック。
これから限界走行をするマシンに、「今日はよろしく頼むぜ。しっかり走ってくれよ」なんて語りかけるのだ。
う~ん、レーサーっぽいぞ私(自己陶酔)
2:荷物を下ろして軽量化
普通マシンの後ろにはスペアタイヤや工具などが積んであるが、それを全部下ろす。
フロアマットやドリンクホルダーなど、サーキット走行に必要ないものも全部下ろしてしまう。
ことによると助手席すら取ってしまうこともある。
ついでに、運転席やドライバーも下ろしてしまえば完璧な軽量化である。(←走れません)
今回は同乗走行をしてもらう関係上、アルトちゃんの助手席はそのまま。
改造後のアルトちゃんの車内の様子。
後部座席が取っ払われ、ロールバーが装着されている。
他にも内装がすべてはがされてむき出しの状態になっている。
手前の板の下にスペアタイヤが入っているが、それも全部下ろしてしまう。
3:ライトにテープを貼っておく
写真を見てもらおう。
こんな感じで黒のビニールテープを貼っておく。
もちろん前後のライトは全部この処置をする。
これは事故ったときに破片が飛び散らないようにするため。
4:受付
そんな事をやっているうちに7時半になり、受付が開始された。
先週の日曜日に申込書を提出済みだが、この受付で、公式プログラムと車に貼るゼッケン(カーナンバー)をもらうのだ。
公式プログラムには「タイムスケジュール」「エントラントリスト」「サーキットのコース図」などが書かれている。
「エントラントリスト」=ドライバーと参加車両の名簿を見ると、ちゃんと私の名前も載っている。
つまりもう逃げも隠れも出来ない、ということだ。
ちなみに車両名はドライバーが好きな名前を付けられる、ということで、私がアルトワークスに勝手に命名。
先週の申込書にすでに書いておいたのだが、その名も…
嵐を呼ぶアルトワークス
サーキットに嵐を呼ぶぜ。(←名前負け)
5:ゼッケンを貼る
マシンの両サイド、目立つところにこんな感じで貼っておく。
私のカーナンバーは見ての通り12番。今年のF1だとザウバーのフェリペ・マッサと同じ。
それがどうした、といわれると返す言葉がない。
6:ドラミに出る
ドラミ=ドラえもんの妹。
…ではなく、ドライバーズミーティングのこと。
今日一日の注意事項であるとか、コントロールラインで振られる旗の説明などがされる。
マイクを握っているのが、現役プロジムカーナドライバー大江賢一さん。
ken-1アカデミーの校長でもあり、今回の大会「OSL四輪ジムか~な?」の主催者。
初参加の私は知らなかったが、実はいろんな意味で凄い人。
ドラミはとっても大事なので、何を差し置いても絶対に出るべし。
特に今回説明された旗の意味が、私の良く知るF1やJGTCなんかと違っていた。
緑旗:コースOK。
黄旗:1コーナーで危険。注意せよ。
赤旗:徐行せよ。
ということであった。
また、このドラミでは衝撃の事実が公表された。
なんと、今回の「OSL四輪ジムか~な?」第二戦は過去最多の参加台数だというのだ。
その数なんと85台(!)
その一角を私の「嵐を呼ぶアルトワークス」が占めているというわけだ。
さて、果たして85台中何位のタイムを出せるだろうか…。
やはり目標は大きく掲げよう。
GTで速いやつは実車でも速いのだ。
というわけで今回の目標
「デビュー戦優勝」
まぁ、これくらい当然である。
ただ、一応控えめな目標も用意してきたので一応見てもらおう。
「最下位になりませんように…」
7:お守りと初心者マークを付ける
いや、これは私がやっただけなので、良い子は真似をしないように。
サーキット初走行&マニュアル車運転暦1週間なので、初心者マークを付けておく。
それから、GWの米沢旅行で買っておいた、上杉神社の交通安全お守りをフロントガラスに貼り付けておく。
きっとご加護があるだろう。
**
◇説明編◇**
クラス分けと、コース図はご覧の通り。(C)「OSL四輪ジムか~な?」
というわけで、今回のクラス分けについて説明しよう。
…ん? それ以前にジムカーナとは何ぞや? というところから説明したほうがいいかもしれない。
ジムカーナ、とは一台ずつコースを走り、そのタイムを競う競技である。
……簡単すぎ?
まぁ、F1の予選のような感じ、というとイメージしやすいかもしれない。
競技者は自分のマシンに乗り込み、コースを走り、スタートからゴールまでのタイムを計測し、そのタイムが一番速い人が優勝、となる。
一般的にレースといえば、みんなで並んでヨーイドン、最初にゴールした人が優勝、となるがジムカーナはシステムが違うのである。
レースは順位を争う競技、ジムカーナはタイムを競う競技なのである。
つまり、ジムカーナでは純粋に速さのみが求められるわけである。
ただし、速いだけではこの競技は勝てない。他にもいくつかルールが存在するからである。
ルールその1:道を間違えたら終わり
ジムカーナでは決められたとおりの順路を守って走らなければならない。
道を間違えると「ミスコース」となり、タイムは無しになってしまうのだ。
しかも、多くの場合、ジムカーナのコースは、くねくねのぐるぐるで覚えるだけでも大変なのだ。
ルールその2:パイロンタッチはペナルティ加算
ジムカーナにおなじみなのが、パイロン(赤いとんがりコーンみたいなやつ)。
コース上に置かれているパイロンに触ってしまうと、今回の大会ではタイムに5秒加算のペナルティとなる。
ルールその3:脱輪でもペナルティ加算
コース脇の土の部分に車輪がはみ出してもペナルティでタイム加算となる。
やはり5秒のルール。
というわけで、まとめ。
ジムカーナでは、コースを間違えず、はみ出さず、しかも速く走ることが求められるのだ。
で、クラス分けの話に戻る。
そんなジムカーナであるので、一応使っている車や、ドライバーのレベルごとにクラス分けがされる。
今回の大会では、「初めてクラス」「ビートクラス」「ミドルクラス UNDER170ps」「ミドルクラス OVER170ps」「軽自動車クラス」「エキスパートクラス」といった具合に分かれている。
そして、私が参加するクラスは、皆様の予想通り…。
「初めてクラス」
当然の選択である。
なにしろ、正真正銘“初めて”なわけだし、私より経験(マニュアル車運転暦)が少ない人はいないと断言できる。
ともあれ、スケジュールによると、ジムカーナの大会が始まるのは午後から。
午前中は普通にサーキットを練習走行できる時間枠が取られている。
下の写真のコース図を見て欲しいのだが、練習走行は7分間を2回、ショートコースとロングコースで行われる。
クラス分けと、コース図。(C)「OSL四輪ジムか~な?」
私のゼッケンは「12番」なので、「初めてクラス」の2番目の走行となる。
この練習走行こそが、私の実車でのサーキットデビューの瞬間、ということになる。
そして迎えた8時40分。
ついにゲートがオープンし、ビートクラスの7台のマシンが一斉にコースに飛び出していく。
練習走行にて、サーキットを疾走するビート。
オープンでの走行、かなり気持ち良さそうである。
もうあと20分ほどで、私も“嵐を呼ぶアルトワークス”に乗ってサーキットを走ることになる。
刻一刻と迫る時間。
高鳴る鼓動、あふれ出すアドレナリン、紅潮する顔、引きつる表情…。
…となるはずが、私はちっとも緊張していなかった。
「ふぅ、眠いのう…」
睡眠時間3時間が重くのしかかっていた。
というか、サーキット初走行だというのに、弛緩しまくり、私はちっとも臆していなかった。
「まぁ、私のことだから大丈夫」
という、根拠のない自信に支配されていたのである。
余裕綽々だった私だが、ついに時間となり、アルトワークスに乗り込んだとき、思ってもみなかったとんでもない出来事に苦しむことになる。
それは一体?
◇次回予告!◇
なんと、実際に走り出すまでに三話もかかってしまったが、今度こそ直江雨続が爆走するぞ。
初めてサーキットを走るとき、果たして人間はどうなってしまうのか?
嵐を呼ぶレーサーに降りかかる、とある災難とは?
全国3千万人のグランツーリスモファンの夢を乗せ、“嵐を呼ぶアルトワークス”が今走り出す。
そして、なんと大江選手にアルトワークスに乗ってもらい、プロからのアドバイスを受ける私。
貴重すぎる経験を積み、嵐を呼ぶレーサーが一気に成長を遂げる(多分)
次回、『嵐を呼ぶレース参戦記』第四話
「嵐を呼ぶ練習走行」
ご期待ください!
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