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翠の雨が降る頃に。【01】

インクの片付けをしていると、窓をぱらりと叩く雨の音に気づいた。


「午後から雨が降るんですって」


レナードさん、洗濯物気を付けてね。なんて、地下で寝ているミコッテ族の彼が言っていたのを思い出す。干してる物はなかったはず、と自分の行動を振り返りつつも、庭の確認のために窓を少し開ける。

埃をかぶった窓が音を立てて開くと、雨と湿った土が混ざった、少し甘い匂いが鼻についた。それからいやに生ぬるい、まとわりつくような風も。線のようなするどさのある雫も。ここぞとばかりに部屋の中に入り込む。

窓を開けたまま、目を閉じて空気を胸いっぱいに吸い込む。

あぁ、自分はこの匂いが好きだ。
降り始めの、やけに鼻につく雨の匂い。


冒険を始めた、グリダニアを思い出すから。

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