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岡田牧雄氏の言う「筋肉の繊細さ」とはどういうことか?

故・岡田繁幸氏が用いていたという謎ワード「芯力」。それに負けじと(?)連発される、弟の岡田牧雄氏の「筋肉の繊細さ」「繊細な筋肉」。この記事ではその「岡田牧雄氏の言う繊細な筋肉とはどういうことか?」を実際に評された馬の馬体を見ながら考えていく。

そもそも、まず「繊細」という言葉について辞書の定義から。

せん‐さい【繊細】
1.ほそく小さいこと。ほっそりとして優美なこと。また、そのさま。「繊細な指」
2.感情などがこまやかなこと。また、そのさま。デリケート。「繊細な感覚」「繊細な神経」
繊細(せんさい)の意味 - goo国語辞書

牧雄氏の言う「繊細」とは、1の「ほっそりとして優美なこと」というイメージが近いのではないか。単に「ほそく小さいこと」では、筋力を争う一面もある競走馬の能力が低いように評していることになる。
基本的にこの「筋肉が」「ほっそりとして優美なこと」である、またはそれに近い表現として「繊細な筋肉」と言っているのではないかと推測して、各馬の馬体を見ていこうと思う。

以下、文は 天才!のPOG青本2021年~2022年 P140~「アンカツVS岡田牧雄 社台グループの撮影馬、全114頭をジャッジ!」より引用。「繊細さ」について、筋肉の話であると明示されていない場合は扱わないものとします。画像はnetkeiba.comより、当該馬の現時点での最新の馬体写真を引用。

ビーコンターンの19

幅があって、尻のデカい馬だからね。ディープらしい、繊細な筋肉の持ち主だよ。

画像1

青本、赤本には馬体写真の掲載なし。
参考:ビーコンターンの19の写真一覧 - netkeiba.com
馬体写真を見ると、たしかに幅がありそうで尻も大きそう。その上で、それなりにメリハリがついた中にも、バランスを保って一部分が隆起するなどなく筋肉が配置されているように見える。なるほどこれが繊細な筋肉。そして薄っすらと臀部に浮かび上がる陰影線、これが牧雄氏がいの一番に挙げる繊細な筋肉の持ち主ということだ。

メリッサの19

上はちょっと四角張った体形なんだけど、妹は丸みがあって筋肉繊維が細やか。

02_メリッサの19

青本P36、赤本P50参照。
参考:メリッサの19の写真一覧 - netkeiba.com
確かにほっそりとして優美という馬体だが、逆に行き過ぎて迫力に欠ける。大腿あたりの筋肉の厚みは感じるが、ただし臀部、特に半腱半膜様筋が未発達で薄い。確かに繊細かもしれないが……。牧雄氏としてはこれで良い、ということ。

スイープトウショウの19

安藤「からだ全体の流れが良くて、皮膚が薄そう。女の子らしい体なんやけど、それでいてトモのボリュームも十分。」
岡田「そうそう。筋肉が繊細ってイメージを受けるよね。」

03_スイープトウショウの19

青本P6、赤本P23参照。
参考:スイープトウショウの19の写真一覧 - netkeiba.com
大腿~脛側の筋肉が発達し、また臀部側は少し薄めで派手な迫力ではない。臀部の陰影線も見え、なるほどこのバランスが繊細な筋肉ということか。

クロウキャニオンの19

超大物って感じはしないんだけど、筋肉の繊細さ、バランスの良さ的になかなか。

04_クロウキャニオンの19

青本P4、赤本P6参照。
参考:クロウキャニオンの19の写真一覧 - netkeiba.com
まず目を引かれるのはクロウキャニオン的なバランスの良さ。それでは筋肉の繊細さとはどこを見て評されているのかというと、体型的なバランスと同居する身体全体を覆う決して薄くない筋肉と、派手ではない臀部と発達した大腿~脛が織りなす陰影線。このあたりを指してのことか。

ドバイマジェスティの19

ハーツクライにしては筋肉が繊細だな。ディープだったら繊細さが足りないけど、ハーツなら全然オッケー。

05_ドバイマジェスティの19

青本P12、赤本P17参照。
参考:ドバイマジェスティの19の写真一覧 - netkeiba.com
ポイントとなる発言は「ディープだったら繊細さが足りない」で、なるほど、この馬は臀部の丸みが大きく、その上で「ハーツなら全然オッケー」という評され方をしている。つまり、繊細さの基準は半腱半膜様筋の派手さ(の細やかさ)に重きが置かれているとわかる。また、この馬も臀部~脛に迫力があり、臀部の陰影線と合わせて他の馬と通底するものがある。

シーヴの19

バランスが取れていて、筋肉に繊細さがある。肩が長いんで心肺機能も良いはずだよ。

06_シーヴの19

青本P2、赤本P3参照。
参考:シーヴの19の写真一覧 - netkeiba.com
臀部の上側~大腿~脛のラインが強調されて、それが臀部の陰影となり、その後ろ側は派手な丸みと筋肉の隆起とならない筋肉の繊細さパターンの王道。競馬に必要な筋肉を求めると、筋肉は繊細になる。その上で、全体をオーラのようにまとう骨格を支えて動かす筋肉。これが「繊細さ」だ。

ベネンシアドールの19

この馬の一番いいところは、筋肉がまんまディープって点。繊細で柔らか味があるからな。

07_ベネンシアドールの19

青本P9、赤本P13参照。
参考:ベネンシアドールの19の写真一覧 - netkeiba.com
この馬については、本文での言及で体重のアップが活躍するための条件と記載されている。現時点の馬体をベースに、乗り込みを進めるとシーヴの19のような王道の縦ラインが完成することが目に浮かぶということだろう。確かに、シーヴの19あたりと比べるとまだ筋肉の発達は遅れているように見えるが、臀部の陰影が描く大腿のラインが今後を推測させてくれる。

プレミアステップスの19

筋肉も繊細だよね。肩が長くて寝てるのも好感が持てる。

08_プレミアステップスの19

青本P19、赤本P13参照。
参考:プレミアステップスの19の写真一覧 - netkeiba.com
ノーザンの馬たちと違い写真撮影時点での仕上がりはそこそこだが、派手な印象がなくバランス良く、かつ臀部に一定の容量を感じる。安藤さんが語り始めた馬についての合いの手みたいな形で出た言葉なので、そこまで考えていないのかもしれないが。

イッツオンリーアクティングダッドの19

筋肉が繊細で全体的にシャープさがある。

09_イッツオンリーアクティングダッドの19

青本P22参照。
参考:イッツオンリーアクティングダッドの19の写真一覧 - netkeiba.com
大腿部に少し厚みが足りない気がするが、言葉通りに全体のシャープさの中に決して派手ではない筋肉のまとい方で、臀部の丸みなどもドバイマジェスティの19と同様に「ハーツクライなので全然OK」なのだろう。

総評

岡田牧雄氏に「筋肉が繊細」と評された馬たちの馬体写真を見たイメージとしては、完全体のセルと戦うためにパンプアップしてパワーに寄せたトランクスのような馬体ではなく、競馬に必要な筋肉を必要なだけ揃えるというテーマで、バランスをベースに全体的にオーラを纏うようにシャープな体つきで、大腿~脛部を中心に厚みがあり、臀部最後方の丸み、半腱半膜様筋は抑えめで問題ないというだいたいの共通点があった。
私自身としてもドラゴンボールを喩えに出したりオーラといった漠然的な言葉を出したりしたが、「オレオレ用語の具体的な掘り下げ」としては有意義なまとめができたと思う。
あとは、1年寝かせて来年の答え合わせを楽しみにしたいと思う。

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