ホワイトベリーの悪口を許さない西山

高校のとき同じクラスに西山という男が居ました。坊主で柔道部のガッチリした体型のやつでした。
ある日の昼休み、西山が突然
「ホワイトベリーの悪口言うやつ俺許さないから」と誰でもない誰かに向けてクラスに響く声で言いました。
誰も何も言っていないのに。


ホワイトベリーとは、夏祭りという歌で一世を風靡したガールズバンドで、当時売れていました。

西山は休み時間になるとよく教卓の目の前の自分の席で、ホワイトベリーを携帯から大音量で流していました。

高校生にもなればみなそれぞれ好きな音楽があるもので、あのバンドはダサいとかカッコいいとかを言い合うのですが、ホワイトベリーはそういう種別には無いものです。
そういったなかで西山は
「ホワイトベリーの悪口言うやつ俺許さないから」と言っていました。

みんなホワイトベリーが嫌いというよりかは、ホワイトベリーを携帯から爆音で流して耳に当てて聞くスタイルの西山が嫌なんじゃないかと私は思っていました。
また、夏祭り以外の全然知らないアルバム曲みたいなやつも流すから嫌がられていました。

自分が嫌われているのにホワイトベリーが嫌がられてると勘違いした西山は
「ホワイトベリーの悪口言うやつ俺許さないから」
と言ったのです。

先程言ったように、ホワイトベリーは良いとか悪いとかの種別に無いものです。
ホワイトベリーというガールズバンドが夏祭りという歌を歌っているということがあるだけです。

そしてご存知の通りホワイトベリーはその後はあまり活躍することは出来ず、あれだけ悪口を許さないはずだった西山も半年後にはもうホワイトベリーなどなかったかのように他の音楽を聞いていたのです。

これを高校の友達と話すとき、必ずYouTubeで夏祭りを一緒に聴きます。
ホワイトベリーには申し訳ないですが、イントロを聞いた瞬間からずっと笑ってしまいます。
そして、いつかの西山の願いを切り裂き彼のホワイトベリーへの愛も花火のように呆気ない終わりだったのだという皮肉を込めて、声が受け付けないとか一発屋とかとにかくホワイトベリーの悪口を嘘でもなんでも言います。

最後にジッタリンジンの方も聴き、やっぱり原曲が一番だなとかドラムが良いなとかそちらをとても褒めて、終わります。

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