真実を写す眼を写す証明写真機

ああ、この証明写真機のカーテンがめくれてしまったら、私は逮捕されてしまう。
どういう格好か。
世界のあらゆる警察官が、なんの戸惑いも躊躇も逡巡も必要としない一連の押さえ込み、拘束、逮捕という公務を行うには十分すぎる格好を、私はしている。

ひとつ彼らに困惑をもたらすとすれば、私のその表情だろう。

無表情のようで無表情でない、喜怒哀楽のどれでもないこの仏像のような顔。
この世の真理を知っているかのような顔である。
でもほんの少しだけ、微笑んでいる気がする。

そんな人物を、確かに裸ではあるのだが、果たしてそれだけの理由で逮捕して良いのだろうか?

この物知らぬ巡査は何も考えずに公務を遂行しようとしている、若いな。一方それを遮ったこちらの巡査部長、賢い人のようだ。
私を見つめたのち、巡査をよそのエリアのパトロールに回したら自身も一度立ち去った。
そして再び現れると巡査部長の手には毛布があった。
私に羽織らせ「帰りなさい」と言った。


私を帰らせた巡査部長は、証明写真機を一応点検しておこうと言って中に入り、一応確認しておこうと言って裸になって椅子に座り、「なるほど」と言った。

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