まちがいえさがし派の人

まちがいさがし
これで十分に意味は分かる。ただ、意味を伝えるだけという冷たさがどこかある。

まちがいえさがし
陽の光で温められた部屋の片隅で絡まった毛糸を解く。飛んで出たチリの移ろいまでがよく分かる、全てが見える光の角度で。

お嬢様は私に「まちがいえさがしをしませんか?」
と聞く。
もちろん、はい、と答える。

お嬢様はよく一緒に遊んでくれるんだ。       容姿端麗でピアノとフルートが上手だし字がとても綺麗なんだ。

「あら、このバンビちゃんの耳の色が違うのではないかしら?」

用意されたまちがいえさがしは、囲いの画家の卵に二枚とも手で描かせている。だから2枚の間には微妙な色合いの違いがある。

本当は、バンビちゃんの脚がイカになっているのが正解なのだがそこで後ろに並んでいる執事たちの声
「流石でございますお嬢様!」

そんな執事たちも、お嬢様が満面の笑みでアリを踏み潰していることに対しては誰も何も言えない。
「ああお嬢様!あちらに綺麗な花がございますよ!」
などと気を反らせることしか出来ない。
そんなものではお嬢様は止まらない。
そのうち両手も動員してアリを潰し始める。

一度このことを町医者に診せたのだがジジイの医者は
「この子は何が間違っているかだけが分からない。ここまでいけば才能ですな」
という訳の分からないことを言って消えていった。

気狂いお嬢の噂はどこからともなく町に広まった。
それを新聞社に売ったのは画家の卵だ。
そして画家の卵は新聞社からの金で絵具を買い、バンビの耳の色を丁寧に直し、屋敷を去っていったのだった。

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