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業界別の起業事情・学習塾(2)

あめにきのオフィスのnoteでは、スタッフが仕事をしてきたうえで気がついたことを、書いていきます。
毎週月曜日に更新する予定です。

前回に続いて、業界別の起業事情。学習塾・予備校の話をします。

今回はまず、広告費について。
学習塾オーナーが大手塾講師出身者である場合に、自分の実力を過大評価する傾向があり、「オレの授業はいい授業だから、広告費を掛けずとも儲かる」「広告費を掛けている塾は、講師の授業に力がないからだ」みたいに考えがちだ、ということを前回書きました。

さて、そんな「意識が高い」講師が塾・予備校を開くとどうなるか。
彼らは自分の塾を、何でも屋みたいな普通の塾(いわゆる町塾)にしようとはしません。専門的な強みを特化しようとします。
数学の専門塾、○○大学に強い予備校、○学部専門の対策をする塾、などです。
そうするとどうなるかといえば、商圏が広がってしまうことになります。広くお客を集めようとします。
そのために、どうしても広告が打ちにくくなってしまいます。費用対効果が小さくなってしまうのです。

これが、標準的なフランチャイズ塾だと、本部が段取りを組んで、近隣学校にビラをまいたり、特定の地域にポスティングをしたり、という流れを作るところです。
ですが、専門特化講師が独立して塾・予備校を作るとなると、どうしてもオシャレな(というかオーナーの好みが強く反映された)内外装にして宣伝は簡素な(素人目には派手に見える)ウェブサイトのみ、という形になります。

こうなるとそのオーナーが次に何を言い出すかと言えば、広告費を掛けないことへの正当化です。「ウチはあえて広告費を掛けない、そのぶん顧客へのサービスに金を使う」という感じです。
それでうまくいくこともあります。
ですが、うまくいかずに結局、売上不足で塾をたたむことになるケースが多いです。私も、(経営関与はしていない)オーナーの方々から言われました。「あえて広告費を掛けない」「ウチは不器用だから広告がヘタなんだよねー」と。費用の問題なのだから、不器用とかいう次元ではないはずなのですが。
それで結局、首都圏の上場企業で難関校講座のスター講師だったレベルの方々が、信じられないくらいの規模で町塾を経営していて、規模が小さいから本来やりたかったこともできずに苦労する、というパターンがあったりします。

まず、広告費は必要です。
それは、広告費ナシでうまくいった会社が現にあったとしても、です。
たとえば、自分の結婚相手を探そうとするときに、イケメン俳優・女優が結婚した時の出会い方を参考にするでしょうか。うまくいった人がいるということと、自分もそれでうまくいくということは、別のことなのです。そして独立起業ビジネスに失敗する理由の多くは「自分の能力の過信」です。

一方で、ネットでの露出状況や、固定物(駅看など)の様子を見て、それぞれの会社がかけているおよその費用をイメージすることはできます。
一般的に、学習塾・予備校は売上に占める広告費の比率が高いです。
だいたい売上の5%から12%あたりが平均でしょうか。化粧品や飲料水と同じくらいの割合です。
なぜこうなるかといえば、いくつか理由があります。
授業風景は日常で見られるものではないので(塾の中には入塾しないと入れない)、広告を打たないと会社や塾名を知ってもらう機会がないです。食品メーカーと違って、学習塾は、ふだん商品名を目にする機会が少ないです。ですので、客がいざ塾探しとなったときに、名前が知られている大手から検討することになってしまうのです。
さらに、飲食店と違って、学習塾では毎年顧客が合格して卒業します。毎年新規顧客を獲得する集客が必要になるので、ブランドイメージは維持し続け浸透させ続ける必要があります。
また、サービス内容が似ているので広告でブランド確立する必要があることや、商品の特徴が数字で表れにくく見た目でわかりにくいことなどがあります。
つまりは、塾選びの時に客の頭の中に自社の名前が入っている状態にしなければならない。そのために、自社の特長を文章化・画像化して、広告という形で露出する、という流れです。

次に、人件費が必要です。
学習塾では、これがかなり高いです。教育業の人件費の対売上高比率は、5割を超えるという調査もあります。
学習塾の人件費は、ほかの業界での「原価(商品仕入)」に相当します。つまり、学習塾では、授業をする講師が、商品なのです。
ですので、経営が苦しいからと言って安易に講師の人件費を削るのは、ほかの業界でいえば仕入原価を削ることと同じことであり、当然、売上の減少に直結することになります。他の経費(たとえば消耗品費や事務人件費など)と違って、仕入原価は売上原資ですので、ここは削りにくいです。
会計士などでも、事務人件費と講師人件費の区別があいまいになっている助言をオーナーにしたりすることもあります。

続きは次回。

*個人事業主や法人成り会社あたりの規模の経営者の方は、労務・広告・法務・経理、さまざまなサポートについて迷うこともあると思います。
ぜひ、「あめにきのオフィス」にご相談ください。(このnoteを書く最大の目的は、もちろん広告です。)

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