債権法改正(27)

債権法改正について、条文を見てみます。項目ごとに書いていきます。
主な対象読者は、旧法で勉強をして情報をブラッシュアップしたい方です。改正しなかった部分は最低限しか触れていません。
少しペースを上げて、6月は毎週月・水曜日に書いていく予定です。

改正法】(新設
併存的債務引受の要件及び効果
第470条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。

債務引受に関する規定の新設です。
債務引受については、旧法では条文上の規定はなく、解釈や判例によって行われていました。
併存的債務引受は、債権者と債務者のほかに、新しい者が債務者と連帯して債務を負担する債務引受です。
改正法1項では、この併存的債務引受について、連帯債務が成立する点を明記しています。

2項では、併存的債務引受について、債務者の関与なく成立することもできる点を規定しています。併存的債務引受は、保証契約と役割が似ていますので、保証と同様に、主債務者の意思に反する債務引受もできることとなります。
また、この併存的債務引受は、債権者の関与なく契約することもできます(3項)が、この場合には、引受人への債権者の承諾が成立要件となります。第三者のためにする契約(537条)と同じ扱いです(4項)。なお、債権者の承諾が必要であるという点は、保証と同様です(446条)

改正法】(新設
併存的債務引受における引受人の抗弁等
第471条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

債務者の抗弁を引受人も主張できる、という規定です。
470条は「同一の内容の債務」を負担するとしており、この「同一の債務」には抗弁の付着も含まれる、と解されるからです。

一方で、改正法2項では、債務者が取消権・解除権を有するときに、引受人がどうなるかを規定しています。
債務引受は「同一の内容の債務を負担する」のであり、契約上の地位を共有するものではありません。債務者が制限行為能力などで取消権を有するからといって、引受人も取消権を持つようになるわけではありません。
そのかわり、引受人は、履行の拒絶をすることができます。
なお、連帯債務についての規定では、「連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない」(437条)となっています。併存的債務引受は、これと比べると、履行の拒絶ができるぶんだけ責任が軽減されています。

改正法】(新設
免責的債務引受の要件及び効果
第472条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

併存的債務引受に並ぶもう一つの債務引受である、免責的債務引受に関する規定の新設です。
免責的債務引受は、債権者と債務者がいるところに、新しい者が入って債務を引き受けることによって債務者が免責される債務引受です。

1項では、引受人が債務者と同一の内容の債務を負担し、債務者が自己の債務を免れる、という点を明記しています。
2項では、併存的債務引受について、債務者の関与なく成立することもできる点を規定しています。この場合については、債権者の債務者への通知が、効力発生の要件となります。

また、この併存的債務引受は、債権者の関与なく契約することもできます(3項)。
この場合には、引受人への債権者の承諾が成立要件となります。

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