債権法改正(61)

債権法改正について、条文を見てみます。項目ごとに書いていきます。
主な対象読者は、旧法で勉強をして情報をブラッシュアップしたい方です。改正しなかった部分は最低限しか触れていません。
4月は毎週月曜日に書いていく予定です。

旧法
(準消費貸借)
第588条 消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。
 
改正法
(準消費貸借)
第588条 金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによって成立したものとみなす。

準消費貸借についての規定です。
「消費貸借によらないで」の文言が削除されました。消費貸借により生じた債務も、消費貸借の目的にできるという判例を、明文化したものです。

準消費貸借の典型場面は、売買代金の貸金化です。
売買の代金は「貸したお金」ではありませんが、売主から見れば、債務者が支払うべきお金であるという点が貸金と共通しています。そこで両者合意の上で、これを貸金扱いにする、というのが準消費貸借です。これで売買代金に「利息」「期限」「担保」などをつけることができるということになります。
消費貸借契約は要物契約ですが(587条、なお書面の場合は587条の2)、準消費貸借は諾成契約です。

改正法】(新設
利息
第589条 貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができない。
 前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求することができる。

消費貸借における利息についての規定です。
1項は当然に認められていた内容の明文化で、2項は判例の明文化です。
「受け取った日以後の利息」ですから、初日を算入します。利息とは元本の利用対価なのだから、元本を使える初日からの対価を支払うべきである、という立場です。

旧法
(貸主の担保責任
第590条 利息付きの消費貸借において、物に隠れた瑕疵があったときは、貸主は、瑕疵がない物をもってこれに代えなければならない。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
 無利息の消費貸借においては、借主は、瑕疵がある物の価額を返還することができる。この場合において、貸主がその瑕疵を知りながら借主に告げなかったときは、前項の規定を準用する。
 
改正法
(貸主の引渡義務等
第590条 第551条の規定は、前条第1項の特約のない消費貸借について準用する。
 前条第1項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その物の価額を返還することができる。
【551条は、贈与者の引渡義務】

消費貸借における貸主の責任についての規定です。
旧法では、瑕疵担保責任の形で規定されていました。物についての消費貸借契約では、売主に瑕疵担保責任(無過失責任)がありました。利息付きの場合は代替給付、無利息の場合には価額返還となっていました。

改正法では、無利息の場合には贈与の規定を準用する、としました(1項)。「特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定する」としますので、特定したときの状態のままで渡せばよい、という結論です。

改正法
第551条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。

一方、価額返還については、利息の有無にかかわらず適用されることになりました。利息付消費貸借では、旧法1項の代替給付が認められなくなりましたので、この場合の借主には価額返還が認められる、という流れです。
価額返還は、物に隠れた瑕疵があったときに、消費貸借の借主が、わざわざ瑕疵つきのものを探して貸主に「返し」たり(これは困難)、瑕疵なしのものを「返し」たり(これは損)する必要がなく、瑕疵に対応する金額を払えばそれでよい、というものです。
なお、利息付の消費貸借契約は有償契約ですので、売買の規定が準用されます。

民法
有償契約への準用
第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

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