債権法改正(61)
債権法改正について、条文を見てみます。項目ごとに書いていきます。
主な対象読者は、旧法で勉強をして情報をブラッシュアップしたい方です。改正しなかった部分は最低限しか触れていません。
4月は毎週月曜日に書いていく予定です。
準消費貸借についての規定です。
「消費貸借によらないで」の文言が削除されました。消費貸借により生じた債務も、消費貸借の目的にできるという判例を、明文化したものです。
準消費貸借の典型場面は、売買代金の貸金化です。
売買の代金は「貸したお金」ではありませんが、売主から見れば、債務者が支払うべきお金であるという点が貸金と共通しています。そこで両者合意の上で、これを貸金扱いにする、というのが準消費貸借です。これで売買代金に「利息」「期限」「担保」などをつけることができるということになります。
消費貸借契約は要物契約ですが(587条、なお書面の場合は587条の2)、準消費貸借は諾成契約です。
消費貸借における利息についての規定です。
1項は当然に認められていた内容の明文化で、2項は判例の明文化です。
「受け取った日以後の利息」ですから、初日を算入します。利息とは元本の利用対価なのだから、元本を使える初日からの対価を支払うべきである、という立場です。
消費貸借における貸主の責任についての規定です。
旧法では、瑕疵担保責任の形で規定されていました。物についての消費貸借契約では、売主に瑕疵担保責任(無過失責任)がありました。利息付きの場合は代替給付、無利息の場合には価額返還となっていました。
改正法では、無利息の場合には贈与の規定を準用する、としました(1項)。「特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定する」としますので、特定したときの状態のままで渡せばよい、という結論です。
一方、価額返還については、利息の有無にかかわらず適用されることになりました。利息付消費貸借では、旧法1項の代替給付が認められなくなりましたので、この場合の借主には価額返還が認められる、という流れです。
価額返還は、物に隠れた瑕疵があったときに、消費貸借の借主が、わざわざ瑕疵つきのものを探して貸主に「返し」たり(これは困難)、瑕疵なしのものを「返し」たり(これは損)する必要がなく、瑕疵に対応する金額を払えばそれでよい、というものです。
なお、利息付の消費貸借契約は有償契約ですので、売買の規定が準用されます。