PCR検査数の増やし方       (道を間違えるな)

前文;

日本経済新聞(2020.05.21朝刊)によると、5月20日現在、        各自治体は、国(厚労省)のPCR検査体制に事実上見切りをつけ、
自治体運営のPCRセンター(主に、検体採取)を設置し、        全国110か所になった。

「検体採取」の次に問題になるのは、「PCR検査数」と「隔離場所」を
如何にして増やし、確保するかであることは、周知の通リです。

本稿では、筆者の当初からの疑問「なぜPCR検査数を増やせないのか」に
関して、WEB等から得られた情報を自身用にまとめたものです。
きっと、読者の参考にもなると考えたので投稿することにしました。

以下は筆者の理解です、間違いや不足がある可能性があります、お気づきの方は、是非ご指摘ください。(note上で指摘を頂ければ幸いです)

※以下に示す情報は、多くの場面で既に「拡散されている内容」が多い事をご容赦ください。

筆者が日本の対処法に疑問を持った理由;

<その1>
 ・韓国はパンデミックを想定した「専従のPCR検査機関」で対応し、    最大級の検査機関では「27人の職員で、1日に1万件のPCR検査」を  実施している。(検査は自動検査機(HAMILTON(米国)製)で対応)
 【現場から、新型コロナ危機】                     “1日1万件”、韓国 最大級のPCR検査機関”
 https://news.tbs.co.jp/newsi_sp/seikatsu-bousai/archive/20200512_02.html

 ・・まずは、些末な議論をする前に、この動画を観て頂きたい。
 ・・この動画を観ると、TVでよく放映される日本の手作業による検査風景   が悲しくなります。
  (PCR検査自体は枯れた技術の様です、だから自動検査機が存在する)

<その2>
 ・韓国の「専従の検査機関」に対して、日本では「研究機関、試験所、   大学」等の検査能力拡充で対応しようとしている様に見えます、     しかも問題は多くの専門家は、専任の「検査技師(検査職人)」の    育成増を考えている、つまり人員を増やす発想が多い、と筆者は感じて  います。(例外もありますが)
  その何が問題化と言うと、大量の「(同じウイルスの)PCR検査」を   実施するのは、「研究機関、試験所、大学」等は、体質的に極めて    不向きなのです。(筆者の理解)

 ・「研究」と言うよりも、「診断」と言う目的に特化した、同じ検査の   繰り返しの「大量検査(ルーティンワーク)」は、物作り企業で言えば  「大量生産ライン」に相当する作業であり、「研究・開発・試験」の   発想とは異なります。
  工学的な発想をベースとした専従の「自動化された検査機関」でこなす  のが筋です。
 
 ・・筆者は、リアルな物作り企業で育ったため、              「研究・試験・開発・試作」と「量産」の違いは身に染みています。
   筆者が育った時代では、最も優秀な新入社員は「生産技術」に配属    されるものだ、と言う、都市伝説すらありました。
 ・・リアルの物作りでは、「試作図面と量産図面」や「試作用装置と量産   装置」ではまったく別物と言えるほど異なります。           (ソフトウエア開発・制作はまた別プロセスと理解)

 ・・くれぐれも間違えて欲しくないのは(言いたい事は)、
   「診断」を目的とするPCR検査数を増やす方法として、
   専任の「検査技師(検査職人)」を増やす人海戦術を発想しては     いけません。
   大量検査は、研究者達が得意とする分野ではない、ですが、       監督・助言することは彼ら「研究者」にしかできないはずです。

筆者の結論(確信)と、その理由;

○日本がPCR検査数を劇的に増やすための、最も確実な方法は、
 「パンデミック専従の自動化検査機関」を立ち上げることであると確信  します。
 他方、
 「研究機関、試験所、大学」等に「自動検査装置」を導入する、     あるいは、民間の検査機関を活用しても、劇的に増やせるのかは不明   です。(たぶん、期待しない方が良いと思います)

○何故なら、既に多く、と言っても全国で「ロッシュ製」の       「自動検査装置;coban 6800とcobas 8800」が合計で32台が大学・研究機関 等に導入されているそうです、が、現時点で
 PCR検査に活用されているかが不明(良く分からない)だからです。

 因みにロッシュ製の最高上位機種(リアルタイムPCR検査システム)は、
  cobas 6800;1日8時間のルーチン検査時間で「384テスト」の検査
  cobas 8800;1日8時間のルーチン検査時間で「960テスト」の検査
 と言う、凄まじい検査数を誇ります。                 (24時間フル稼働なら、上記の3倍です)               これらがコロナのPCR検査に使われているなら、PCR検査数は飛躍的に  伸びていた筈です。                         (但し、「検査用のキット、試薬」の調達に問題ないとの前提ですが)

※「ひるおび;5/13」を観ていて驚いたのですが、
 山中教授(iPS細胞の)の研究室にも自動検査装置(メーカは不明)が   あるそうですが、未だに厚労省からの支援要請は無い、そうです
 (厚労省と文科省の縦割り行政の壁があるのかもしれません)
  
 また、なるほど、と思った事に、
 山中教授の話では、研究者は「検査や試験」はしても、         「診断」は医者の仕事、と言う                    マインドセット(経験、教育、先入観などから形成される思考様式)を  持っている、とのことでした。(これは尤もな話で、腑に落ちました)

※大量の検査を実施する(自動化された)検査機関は、厚労省の傘下におく のが良いと思うのですが、
 「検査機関」を立ち上げる担当者(要)には、工業的発想(量産化)が
 出来る人間を置く必要があります。
 (民間企業出身者と研究者のチームプレーが良いかもしれません)

<現時点(2020.05.21)での状況要約>

「日本」において、PCR検査数を増やすための必須要因を確認する;
 「研究・試験」では無く、「診断」に特化したPCR検査を増やすための  「3項目」は、下記です。
   ① 検査採取の体制(ドライブ・スルー等) ・・徐々に改善
   ② 試薬類、特にRNA抽出キットの確保 ・・全て輸入で、入手が逼迫
   ③ 自動PCR検査装置(リアルタイムPCR)導入                       ・・試験所には少ない、大学等には既にある

※「①」はカイゼン傾向にあるので、上記の「②と③」対応に特化した   「専従の検査機関」が必須と考えます。

<関連する学会等の情報>

厚生労働省;
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議;
1.「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(2020/5/4)
 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627559.pdf
(「日本においてPCR等検査能力が早期に拡充されなかった理由」の考察)

2.「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(2020年5月4日)
(2020年5月11日一部訂正)                     
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000629000.pdf

日本臨床検査医学会;
1.学会委員長(柳原克紀教授);
  PCR検査、なぜ増えない? 学会委員長が語る3つの理由
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59036130T10C20A5000000/

2.新型コロナウイルスに関するアドホック委員会
https://www.jslm.org/committees/COVID-19/index.html

3.上記のWEBサイト中の、下記資料
「SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出検査の体制の課題対応について」
https://www.jslm.org/committees/COVID-19/20200413-1.pdf

上記の資料「1.」にある「3つの理由」を引用すると、以下になります。
(1)検査採取については、最近では全国でドライブスルー方式などで     検体採取を専門に行うセンター(PCR検査センター)ができ、専従の   医師が検体採取を行っており、状況はだいぶ改善してきた
(2)機器や試薬の不足だが、海外の試薬については、欧州や米国で流行    していると国内に入ってきにくい。欧州、米国での流行が落ち着け    ば、もう少し入ってくるだろうと想定している
(3)人材については、臨床検査技師の育成が必要になるが、それには     時間がかかる。かといって、知識や経験のない人材が検査をして     ずさんな検査結果を出すと問題なので、自動化などを活用しつつ対応   していくことではないかと思っている
(以上のように「自動化」を推奨しています)

<その他の参考資料;「研究所、大学」関係者の意見と考え方>

 現在までに、筆者が目にしたWEB上の記事のURLを掲載します。
 (読者の理解のためにも、参考となるはずです)

 ※筆者は、「批判」をするために掲載しているのではありません。
  餅は餅屋に任せるべき、と、言いたいだけです。
  つまり「診断」に特化した「大量検査システム」の構築は、研究者には  もともと発想が難しく(相性が悪い)、
  工業的な発想ができる人達に任せるべき、と主張しているのです。

・寄稿◎新型コロナウイルスのPCR検査のあり方
 PCR論争に寄せて─PCR検査を行っている立場から検査の飛躍的増大を   求める声に                             https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202004/565349.html  

・PCR検査 なぜ増えない 筑波大・本田教授に聞く
 https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/312758
 ※自動化機器が必須、大学軽視(予算不足で機器導入できず)が原因

・「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題
 ウイルス専門の西村秀一医師が現場から発信
 https://toyokeizai.net/articles/-/349635

◎総合的に纏まった記事                        ・・とても参考になります!(獣医も動物のPCR検査を実施!)
 中央動物病院の、STAF BLOG
 http://cyuoh-ah.jp/blog/2060/

○日本の自動PCR検査装置メーカー
 PSS(プレシジョン・システム・サイエンス)社
 http://www.pss.co.jp/
・・PSS社がPCR自動試験機で、フランスから感謝状をもらった件
 http://www.pss.co.jp/ir/press/pdf/20200424.pdf

○ロッシュ(スイス)の製品について
 一般社団法人 日本臨床検査機器・試薬・システム振興協会
 https://jaclas.or.jp/about/index.html
 cobas 6800システム
 https://jaclas.or.jp/Product/index?id=85854
 cobas 8800システム
 https://jaclas.or.jp/Product/index?id=85856

・日経新聞の記事;
 (ロシュのコロナ自動検査キットに承認)
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57773940X00C20A4XB0000/

(自治体、第2波備え 1カ月でPCRセンター110カ所 政府の動きに先行)
 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59354520Q0A520C2MM8000/

・その他、新型コロナ関連 
 世界のPCR検査は日本の技術が支えているのに日本では活躍できない   岩盤規制の皮肉                           https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200509-00177769/

<ご容赦>

※HAMILTON(米国)製のPCR自動測定装置については、未調査です。  (どなたか、調べて頂けると嬉しいのですが)

以 上



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