印のある傘
2023年2月7日
シナモンロールだと思っていた.シナモロールだった.ンが無かった.音にすると変な感じがした.これから呼ぶ機会があっても,勢い余って,ンをつけそうだな.
柄に灰色の紐が巻かれているビニール傘が電車の席に残っていた.綺麗な蝶々結びで巻かれていた.持ち主の印が付いたビニール傘だった.
たぶん,他の傘と紛れないように,そばを離れることが無いように,紐で巻かれていた.なのに,持ち主から離れてしまった.昔,財布を落とさないように,財布に熊除けの鈴をつけていたが,座った椅子の上に置き忘れてしまった.置いていたので,鈴は鳴らなかったのだ.
単に詰めが甘かったのか,対策を講じた分,他の可能性に目がいかなかったのか.ただ,僕の場合は,本当はそこまで重視していなかったことが考えられる.心の底では,財布を落としても落とさなくてもどうでもいいと思っていた.関心が無かった.
今は関心があるから肌身離さず持っている.バックに入れる場所も家での置き場所も決めている.
こういうことは昔から多くて,例えば,暑くても暑くなくなるための行動には関心がなくて,「暑い」と言いながらも,そのままでいた.他にも,床で寝て,痛くても「痛い」と言うだけ,そのままだった.
本当に嫌だと思っていることなら,細かい行動に移す.僕はただ,状況を改善するような行動をせず,自分の感覚をそのまま言っているだけだった.「暑い」「痛い」と.
これは,周りの人にとっては,引っかかるようだった.「暑い」「痛い」と言うのになぜこいつは何もしないのかと.だから,むやみに言わないようにしていた.いつのまにか,言葉数が減った.
それは,本質をとらえるのが苦手であることも起因している.
高校生の頃,「すいません」の代わりに「ありがとう」を言え,と言われた.僕は,どこまでの範囲の「すいません」を「ありがとう」に変換し,どこまでの範囲の「すいません」を「すいません」のままにすればいいのか分からなくなり,混乱して,ひたすら「ありがとう」を乱発した.
本質は機械的に変換すればいいということではなく,謝罪よりも感謝の方が気持ちがいいよねということだった.
話を戻すと,口に出してはいけないのは,自分では何の気なしでも,他人の気を引いてしまう言葉である.なのにもかかわらず,僕は思ったこと全て口に出さないようにしていた.本質をとらえてなかった.
そして,自分の関心が無いものは,どうしても手を伸ばせない.心の底からの行動に移せない.別に移せなくても良いけれど,移せるなら移せたほうが良いじゃんとも思う.
全然関係ないが,僕の傘はいろんな人に褒められる.赤い和傘のような傘.かなりお気に入り.それでも二回ぐらい置き忘れたことがある.
なので,普通に注意散漫でもある.
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