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もじもじする文字①

 2023年4月1日

 ここ数日,noteの更新が遅れてしまった.どうにもこうにも文字がバラバラと崩れていく.波打つ文字.書いては消してを繰り返していた.


 昨日は,ラ・ママ新人コント大会があり,今日は,事務所ライブであるバカ爆走があった.長くなりそうなので,二つに分けて書いてみる.

 ラ・ママ新人コント大会は,二回目の出演だった.ありがたいことに今回も準一本で出させていただいた.すごく嬉しい.このライブは,やっぱり僕の中では特殊だ.憧れてきた人がたくさん立ってきたライブであるから.その人たちが紡いできた線の延長にいることを考えると,やる気と不安が混ざってむず痒くなり,無性に手のひらをグーパーグーパーさせたくなる.今回のライブのMCはスピードワゴンの御二方であった.


 僕の大学があったので,現地集合だった.他大学の教授の方にお話を伺ったり,研究会に参加したりと,本格的に卒業論文のテーマ決めが進み始めている.

 夕方,会場に着く.会場の壁には過去の芸人やアーティストの公演のポスターなどが貼られている.ポスターの上にポスター.塗り重なっているという表現に近い.地層.

 目には見えない気配は,明らかに感じられる.人間の意識が焼き付いていると思う.僕の先入観や建物の構造から,勝手に像を結んでいるだけなのかもしれない.それでも,誰かに投げかけようともがいている意識,そして,吐き出した感情は,今を生きている人にもその振動を伝わるぐらい,時には増幅して,その空間にゆらゆらしながら留まるのではないかと思ってしまう.それほどに,重みを感じる会場だった.

 などと今となってはそう考えてしまうけれど,当日は緊張と興奮で,壁すげぇすげぇとか,あ,バナナマンさんが載ってる!とか,人並みの反応をしていた.新井さんは,ネタの修正案をずっと考えていた.柿田さんは,ぐるぐる歩き回っていた.


 出番が近づくと,ぶるぶる震えてくる.緊張.何回もやったネタでさえも,毎回緊張する.僕は,役柄上,感情を吐き出す役割が多いけれど,同じ質の演技をするのが苦手で,毎回一から演技をしようとする.だから,動画を見ると,日によって演技の雰囲気が異なっていることが分かる.悔しい.毎回,理想の演技ができるようになりたい.でも,できない.だから,今日はできるかどうか,毎回不安になって緊張する.

 出番を迎えた.お客さんは温かく,見てくださった.出番の後,中MCでスピードワゴンの御二方と話した.御二方は,人間の色がはっきり分かるような,エネルギーの塊のような,ともかく,がっつりしていた.僕が明らかに緊張していたせいか,スピードワゴンの小沢さんが肩を撫でてくださった.それで恥ずかしいけれど,すごく安心して,きちんと話すことができた.

 楽屋では,同じく準一本枠として出られていた,フルスイングバントのお二人とお話しした.すごく嬉しかった.なんというか,他事務所の方と新たにお話しできると,サプライズプレゼントを貰った気分になる.え,いいんですか⁉︎と思う.毎回,話してみたい人はいるけれど,怖くて話しかけられないので,本当に嬉しい.


 一人,渋谷から吉祥寺まで井の頭線で帰る.ピンクのラインが入った車両が桜の街を通過していく.電車の窓越しに映った自分の顔に重なる夜の街はきらきらと光っていた.それを見た時に,顔めっちゃ光ってるなと思った.あと井の頭公園の桜を少し見ようと思った.なので,ちょろっと行った.

 公園は喧騒に包まれており,多種多様な集団で賑わっていた.点々と広がっているブルーシート.輪になっているところもあれば,ばらばらと座っているところもある.ママさんたちの会もあった.入れてもらえないかなと思った.

 ベンチが空いていたので,一人で座った.寂しいから,横に荷物を積み重ねた.後ろの街灯に照らされる.影だけは二人いるみたい.上を見ると,空に穴が開いている.向こう側の世界からふたが閉じられかけているかの如く欠けた月.緑が混じった桜が視界に割り込む.前を向く.池.反射している粒々の光.モールス信号のようにたんたかたんたか光は揺れる.


 突如,カメラで撮るおじさんが真横に出現した.うぉう.近い.視界に黒い大きなカメラが目に入る.近い.近いぜおじさん.びびった.池を撮っているのだろうけれど.僕の感傷はいつも,現実に負ける.もーう.でも,そんなもんか.


 もじもじしている文字の群れ.②へ続く.




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