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大荷物と浅草

 2023年2月26日

 昨日は,浅草LIVE予選とゴッタニという二つのライブに出演させていただいた.

 お昼過ぎの浅草LIVE予選では獅子舞のネタを,夜のゴッタニでは空港のネタをやるために,ガラガラと獅子舞を入れた赤いキャリーケースを引っ提げて,背中にその他の舞台衣装を背負って,浅草へとやってきた.雷門にぶら下がる赤提灯.いつみても迫力がすごく,圧倒される.土曜日なので,人が多く,大荷物で人だかりの中を通っていくのが申し訳なかった.いろはラムネとしては,昆虫食のコオロギを買いに来た去年以来の浅草だった.

 最初は喫茶店で集合して,ネタ合わせをしてから,ライブ会場である浅草東洋館へ向かう予定だったが,どこも喫茶店が空いていなかったので,入り時間まで浅草を回ってみることにした.

 新井さんと柿田さんもキャリーケースを持っており,こちらは空港のネタで使う用だった.元々は僕のキャリーケースも使っていたが,ネタ中のキャリーケースの取っ手をがちゃがちゃ上げ下げするボケをやりすぎて,もうにっちもさっちも動かなくなってしまった.なので,僕のキャリーケースは獅子舞を運ぶ専用のケースとなった.一応,私物なので,これから先旅行へ行くとき,かなり苦労すると思う.

 三人ともキャリーケースをがらがら引っ提げながら,まず,浅草寺へ向かった.大きな人混みの中で,その他の衣装の荷物含めて,おそらく誰の目にもただの観光客にしか見えなかっただろう.仲見世通りは劇的に混んでいたので,通りに沿って,横道を進んでいく.すれ違う人は,僕のキャリーケースにぎょろ目の獅子舞がまるまる入っていることを知る由もない.

 新井さんは常香炉の煙を鼻から吸い込んで,げほげほむせていた.体内から良くしていくつもりなのだろうか.「風邪が治った直後だから,きついわ」と言った.そりゃそうだ.そして,大階段を登り,浅草寺の賽銭箱までたどり着いた.人があまりに多すぎて,お賽銭を大遠投している人がいた.その人の気持ちが少し分かる気がする.僕は50円玉を投げて,お参りした.目を開けた時,新井さんも柿田さんもいなくて焦った.

 その後,おみくじを引いた.六角柱の木の箱をがちゃがちゃ振って,番号の書かれた木の棒を出し,その番号に応じて,おみくじの紙を貰うシステムだ.一年前ぐらいに,グレンジャーの山崎とミウラ,養成所での友達で今はNSC28期の烏骨鶏の東澤の三人と浅草へ来て,ここのおみくじを引いた.その時,僕の番号は,先に引いたミウラの番号とまったく同じで,しかも先に「俺,凶だわ」と内容含めて言っていたので,凶引きと内容のネタバレのダブルパンチを食らったことを思い出す.そんなことは無いように願った結果,新井さんが二十三で,僕が三十二でぎりぎり大丈夫だった.

 僕と新井さんは吉で,柿田さんは凶だった.浅草寺のおみくじは凶が多く,僕は初めて吉で出たので嬉しかったが,あまり良い事が書かれていなかった.新井さんはストレートに良い事が書かれていた.柿田さんはもちろん,良い事が書かれていなかった.おみくじを結ぶ所に,「凶しか結ばないでください」とあったので,僕は結べなかった.めざまし占いの11位の気分だった.

 浅草寺に対して左方向への道を歩いていくと,屋台の列があった.焼きとうもろこしにチョコバナナ,串焼きなどのカラフルな出店がひしめき合っている.柿田さんは「これを何にも考えずにほいほい買えるようになりたいなぁ」と呟いていた.

 そのまま道に沿って歩いていくと,ジャンボメロンパンのお店があった.僕は,前に浅草のジャンボメロンパンは顔よりも大きいと意気揚々で2人に話していたが,そこまでは大きくはなく,小顔ぐらいであったため,少し大げさに言ったことが思いっきりバレた.

 お店の前を通って,しばらく進むと,射的のお店があった.新井さんが「これやりたい」と言って止まった.お店の中には二組ほど人がいる.横でしきりに「俺,射的好きなんだよ」と言っている.初めて聞いた.結構,悩んだ挙句,「また今度にしようか」と言って,その場を去った.お店に入るには,僕らの荷物量は多すぎたのだった.

 そして,浅草東洋館の前までやってきた.入口の前に,主な出演者の写真の中に僕らがいて,感慨深くなった.数年前に,この前を通った時,ここの舞台に立っているとは微塵も思っていなかったので,人生とは何があるか分からないと思った.

 入り時間までは少し早かったので,コンビニで飲み物を買いに行った.その途中,もんじゃコロッケを売っているお店があって,新井さんが「買おうかな」と寄っていった.しばらく立ち止まって眺めてから,戻ってきた.「出番前に油ものはきついな」と言った.今のところ,ずっと躊躇しっぱなし.コンビニで飲み物を買って,浅草東洋館へ向かう途中,「油ものを渋るなんて年取ったな」と,僕とは別の方角で感慨深くなっていた.

 東洋館の楽屋へ行き,衣装に着替えるが,舞台は土足禁止なので,いつもとは違う不思議な感じだった.靴下のみで,すっ転ばないか心配だった.中でサービスエリアの大山さんとお会いした.知っている人がいると少し安心する.その後,袖で出番を待つ.出囃子がKANA-BOONの「結晶星」という曲で,昔よく聴いていた曲だから嬉しかった.

 無事に出番を終えた.暗転は無いので,ありがとうございましたと言った後,明るい中,そそくさと退散したのも印象的だった.

 柿田さんはお友達が見に来ていたらしく,僕と新井さんとは別行動で,ゴッタニの会場である新宿へ向かうことになった.雷門前あたりで,新井さんが「やっぱり射的やりたいわ,射的のお店ってここからだったら遠いかな」と言ってきた.僕は遠いですねと答えた.「そうかぁ」と新井さんは言って,仕方なく浅草を後にした.

 そして,新宿駅へ着いた.柿田さんと合流し,とらそばで腹ごしらえしつつ,入り時間まで待つことにした.新井さんは,そばを食べながら,「浅草で射的やっておけばよかったな」と再び言っていた.一体,その射的への執着心はどこから湧いているのだろうか.

 しばらくして,ゴッタニの会場である新宿ハイジアV-1へ向かった.楽屋付近で出番までネタ合わせをした.そして,出番を迎えた.

 楽屋では,うちまつげさんがすごく優しくて,写真を一緒にとって頂いた.また,サツマカワRPGさんも含めて,みんなでお話ししたが,僕は受験生の骨格をしていると言われた.その後,うちまつげのお二人とお互いの出囃子の曲について話して,ゲーツーさんとはフジファブリックについて盛り上がった.好きなもので盛り上がれることほど楽しいものは無い.

 そして,昨日の一日は終わった.帰り道,一人キャリーケースを引っ張って歩いていたが,風がすごく強かった.僕の横をころころとコンビニの袋が転がっていく.西部劇にて出てくる,風で転がるタンブルウィードを思い出した.地平線から吹く風で荒れる夜の三鷹.転がるコンビ二の袋.キャリーケースを右手に,二つの手提げバックを左手に,緑色のリュックを背負って,一人歩くしかめっ面の僕.どう足掻いても格好良くなかった.


 浅草LIVE予選ですが,結果は一位でした.来場してくださった方々,投票してくださった方々,本当にありがとうございました.年末に浅草LIVE本選に出場できるそうなので,再び頑張ります.

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