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【試写】『クレッシェンド 音楽の架け橋』試写会レポ【03_2022】

ごきげんよう。雨宮はなです。
トーキョー女子映画部さんの抽選に当選し、参加させていただきました!トーキョー女子映画部さんに招かれるのは3年前の『デッドエンドの思い出』の試写イベント依頼でした!ありがとうございます。
今回は映画作品に関する印象、上映後イベント、試写会の様子についてお話します!

※今回は公開前ということを踏まえ、ほぼネタバレなしで作品について紹介します。

音楽をツールにした禅の作品

作品を観て、「これは音楽映画というよりも、戦争だの人種の壁だのを問う映画というよりも、自分を見つめなおすための作品だ」と思いました。

平たく観てしまえば相いれない2つの種族による抗争と力を合わせるための努力、その尊さを描いた映画です。音楽やその演出が素晴らしいので、その観方だけでも十分に楽しめるでしょう。ですが、個人的に注目すべきはワークショップのシーン!そこでマエストロが若者たちに出す課題の間にかける言葉を自分にあてはめられるかどうかで、この作品の楽しみ度合いは100%以上になるといえます。

「相手の目を見るんだ」
「貴方を認識していると伝えろ」
「目の前の人をただのひとりの人間としてみるんだ」

果たしてこれをできているだろうか、と自問自答しながら観ていました。他にも、ワークショップで行う訓練は非常に興味深く前のめりになって観てしまうものが多かったです。オーケストラのリハーサルとして全く関係ないようで、そこにたどり着くために必要な訓練を観まもりながら、私たちはスクリーンのこちら側で客席に座ったまま、体験することになるのです。

与えられる質問や、そこから生まれる自問自答を追いかけるとまるで禅問答のようでした。クラシックと禅をいっぺんに感じる時間の体験はなかなか貴重でした。

廣津留すみれさんによるトークショー

廣津留すみれさんについては特に存じ上げませんでしたが、司会の方の紹介を聞き「なんかすごい人のトークショーだったんだ」とそこで初めて気づきました。彼女の過去の体験談を交えつつ、作品や扱われるテーマについてお話してくださるのを聞きました。

廣津留さんは実際にイスラエルとパレスチナを訪れた経験をお持ちの方らしく、実際にそれぞれの国の人と会ったときのお話もしてくださったのですが、そこで衝撃を受けたのが「音楽は共通言語でないと認識が覆された」というフレーズでした。
パレスチナの現地ミュージシャンとハーバード大学のオーケストラでセッションをする時間が設けられていたらしいのですが、「先にイスラエルをみてきた人たちとは一緒に演奏はできない」と断られたそうです。その後はセッションするはずだった時間をディスカッションに当て、様々な見地からの考えを話し合ったそうです。
今作は実在するバンドをベースにお話がつくられたそうですが、うまくいったのは奇跡的なのだと改めて思わされました。それだけ根深い問題なのだと認識を改める良い機会になりました。

他にも、廣津留さんが尊敬しているダニエル・バレンボイムやヨーヨー・マの話もまじえつつ、格差やパンデミックによる分断の時代に私たちがこの作品に対して共感できるのは「自己中心になってしまうことはありがちだし、自分の安全に注力しがち。けれど、周囲には様々な背景の人がいることを忘れず、相手を”人間””地球人”としてみること・対話をする姿勢は大切である」と仰っていました。その通りだと思います。
非常に持ち帰るものが多く、刺激の多い良いトークショーでした。

試写会の様子

お行儀の良い方が多かったように思います。前の方に座っていたので後ろの方の座席についてはわかりませんが、トークショーを省いて帰った人はいなかったんじゃないかな。

この試写会とトークショーでものすごく衝撃的だったのは、ロングライドの社員さんと思しき女性の司会がとても上手だったこと!質問の仕方・話の聞き方・交えるコメントがすばらしく、ゲストや作品の調子ともあっていて暗くないのに落ち着きがよく聞きやすかったのです。
あまり比較するのは良くないのかもしれませんが、過去何度か参加した大きな試写会での司会の方よりも個人的には聞きやすかったです。ロングライドの方、本職ではないんだよな?って疑ってしまうくらいお上手でした。

おわりに

高校生、大学生、新社会人のコミュニケーションや差別に関する教育を行う際、教材としても良いものだと思いました。架空の設定でないことも理由の一つです。国際情勢に目を向けるきっかけにもなるし、「音楽の授業なんて無駄」「ニュースなんてみない」という考えを覆すきっかけになると思いました。

そんな『クレッシェンド 音楽の架け橋』は明日、金曜日(28日)より公開!

最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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