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帰れない。

ある日、友達を誘って近所のゲームセンターやリサイクルショップを巡った。

まあ、そんなことはどうでもいい。

その友達と話しながら家に帰った。

自転車に乗っていたものなので、駐輪場に自転車を駐めてから家の玄関に行く。

(実家なので)母親がいるだろうと思いインターホンを押す。

「ピーンポーン、、、、、」




反応がない。もう一度押してみる。

「ピーンポーン、、、、、」




やっぱり反応がない。

ふと、母親が昼に言っていたことを思い出した。

「買い物行くかもしれんから、鍵持って行ってや。」

なんか一回鍵をカバンから出したような気もするが、多分あるだろうと思いカバンを漁って鍵を探す。




あれ、無い。まあでも、他のポケッ、、、

無い。




無い。


12月の寒空の下、僕は家に帰れなくなった。

携帯電話は持っておらず、あるのは1500円ちょっと。


とりあえず、母親が帰ってくるまで時間を潰すため買ってきた漫画を寒さの中読むことにした。


やはり、帰って来ない。漫画を半分ぐらい読んだのだが一向に帰ってくる気配がない。日もとっくに暮れており、冬の寒い風が、、、、、


耐えれなくなり、近所のコンビニに行くことにした。


コンビニの中は暖かった。

缶コーヒーと貝ヒモを買って、イートインスペースに座った。

缶コーヒーをすすりつつ、貝ヒモの袋を開けてつまんだ。

できる限りゆっくり食べた。

でも、耐えれず少し勢い良く食べてしまった。


ぼーっとイートインで居座っていると、委員会で副委員長をやっている先輩に会った。

「どーしたん?」

「あー、家に鍵を忘れてしまって、家に帰られなくなってしまって。」

「そっか〜、大変やな。」

「はい、、、」

「まあ、がんばって。」

「はい。」

少し気まずくなったが、心に少しゆとりができた。


缶コーヒーも、貝ヒモも全部食べてしまい、イートインに居にくくなった。

少しくらいは時間を潰せたと思い、ゴミを捨ててコンビニを出た。

また、家の玄関の前に立った。

インターホンを押して反応を待つ。

結果は、、、


反応なし


またか、、、

でも、部屋の電気は点いたままの様に見える。

もしかしたら、弟が家の中で留守番しているかもしれない。

そう思って、今度は扉を叩いた。

分かる人にしか分からないと思うが、太鼓の達人の「さいたま2000」という曲のリズムで叩いてみた。

だが、反応はない。

今度は扉にくっついている小さなポストから声を出してみた。

もちろん、反応はない。


そうだ!と思いつき、今度は家から一番近い公衆電話に向かって走った。

と言っても、一番近い公衆電話は家から500m離れており、まあまあきついものだった。

公衆電話に10円玉を入れて、母親の携帯に掛ける。



『、、、お留守番サービスに接続します。ピーという合図が鳴りましたら、3分以内に伝言をどうぞ。』




、、、あ、母親、気付いていない。





仕方ないと思い、一応弟に伝言してほしいという伝言を残した。

すっかり、辺りは真っ暗になり、どんどん寒くなっていった。

その寒さが増すごとに、自分も焦り始めた。


「んー。」

少し考えた後、今度は家の固定電話に掛けた。

こちらも、留守電になった。

だが、家の留守電は携帯と違い、吹き込んでいる内容が電話に出なくとも直接聞くことができるので、弟が気づくかもしれないと思った。

今から家に帰るので鍵を開けていてほしいという旨の留守電を入れて、家に向かった。


今日何度目かのインターホン。





やはり、反応はなかった。

500mの上り坂を駆け上がってきたが、また、公衆電話のところへ戻ることにした。


公衆電話のところへ戻ってきたのはいいものの、また電話をかけても出ない可能性がある。

イチかバチかを掛けて、母親が買い物に行ってそうなスーパーをハシゴすることにした。


規模の大きい一軒目は、すべての売り場を回ることは諦めて、一番大きなレジの周りを探すことにした。

何周もしたが、それらしき人は見つからず。


次に、少し規模の小さいスーパーに行った。



いた。



スーパーに入って、すぐ見つかった。これまでやっていたことが嘘の様に、呆気なく見つかった。

「かーさん。」

「お、なんでおるん。」

「鍵を家に忘れてん。」

「あ、兄ちゃん。」

はじめに、家についてから二時間半ほど過ぎていた。




「忘れ物には気をつけよう。」

そう、強く思った夜であった。



最後に、肉森さん(https://note.com/nikumori/)のお写真をお借りしました。ありがとうございます!

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