(小説)白い世界を見おろす深海魚 2章(雨上がり)
・序章
・1章
2
翌朝、クライアントからの希望で朝の八時半にその会社が入っているビルへ行くことになっていた。この約束がなければ、あと30分も多く眠っていられたのに。
眠い目をこすりながら駅のトイレで顔を洗い、オフィスへ向かった。空元気を出して、朝のあいさつをする。
広報担当者は白髪まじりの中年男性。
分厚い唇を真横に引き締め、いつも不機嫌そうな顔をしている。
それでも、たまに機嫌のいいときもある。毛虫のような眉を『ハ』の字に曲げて、つばを飛ばしながら二時間も家