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#1 今あなたは何を感じていますか【黒澤世莉ワークショップ録】

これは10/12〜10/18にかけて行われた、劇団ハンニャーズ中嶋かねまさ主催
「黒澤 世莉 演劇ワークショップ2020秋」で私がワークショップで見たこと、感じたことの記録です。あくまでもワークショップで学んだ事・感じた事を、私が後から読み返したいが為に書いています。
ワークショップに参加してメモが着いていかなかったり、メモを元にこんな感じった気がする・・・と書き足したりしているので、要約がまちがってるところがあるかもしれません。
何より私は今回「やらない」側にいたので、「やった」俳優の理解にはきっと及ばないと思います。

だから、これを見て気になった人は世莉さんを呼んでみよ!

じゃ、本題に行くぜ。


■このワークショップの概要


マイズナーテクニックの基礎を学びつつ、1週間ぶっ通しで稽古してワンシーン作っちゃおうというどうかしているワークショップ。事前に配られた戯曲を読み、覚え、読解し、役作りをし、平日はみな昼間は仕事をし、夜20時からワークショップに参加する。土日も2日合わせて17時間ワークショップをする。最終日に成果発表として、シーンを演じる様子がYouTubeで配信される。頭も体力もずっとどうかしている。


黒澤世莉さん
今回の講師。新潟演劇民栄誉賞を今回受賞した。
新潟演劇民(が)栄誉(ある人にあげる)賞である。私が今回勝手にあげたので大して自慢できるものではない。


真面目に内容と世莉さんのことが知りたい人はこちらをどうぞ。



■最終日はどうなっていたい?


そんな内容を見るだけで泡吹きそうなワークショップに、総勢12名の参加者が現れました。マスクをしていたので分かりませんが、きっと口は泡まみれでした。




ワークショップの冒頭ではまず「日曜日にはどうなっていたいか」とみんなの目標を聞いていきました。

出てくるワードとして印象が強かったのは、
「自分の体に素直に」「相手と関わって感じたものをリアルに出したい」「自分と役を近づけたい」
など、舞台の中でも自分の感情・体の変化をしっかり出せるようにしたいという傾向があった。

「自分と役を近づけたい」ってどういうことなのか、正直ピンとこない。そもそも可能なのか?


ここで世莉さんからヒント。
世莉「マイズナーテクニックで考えとして、自分自身の身体は消えない。自分としてはフラットな下着姿の状態でいて、そこに役としての上着を着るイメージ。」

その時私は小さい頃にやったきせかえを思い出していた。

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こういう本に描いてある人や服を切り取って、好きに服を当て変えて楽しむやつ。
おジャ魔女どれみの服をコレクターユイに当てがい、コレクターユイの服をカードキャプターさくらに当てがい楽しんでいた。そういうことすると体とか全然似合わないからすごく不格好で違和感が出てくるんだよね。今はシール式になってたり、マグネット式になってたりするらしい。時代だね。

要はここでは世莉さんのヒントに全然ピンときていない私である。


あと皆さん俳優なので「俳優としてどうなりたいか」という目標がほとんど。
そこでもハッとさせられる世莉さんの一言があった。

世莉「(役として)その場にいるのは目的じゃない。手段。どういうセンセーションを観客と共有したいのか。何のために(役として相手に)関わることが必要なの?」

ここはすごく分かった。当たり前のような話だけど、俳優としていると役を演じる自分にばかり目が行ってしまう。
「この芝居の中でどういうセンセーションを観客と共有したいのか」
それをやるには観客的にも戯曲に向き合う必要がある。
それだけ自分の演じる役だけではなくて、戯曲全体を理解する必要がある。
その目標のために、自分は役として何ができるのか。
これは芝居やる上での最終目的地を改めて提示してもらったように思う。


というわけでみんなの目標設定もできました。
世莉「できると思ってればできる。できないと思ってるとできない。目標を高くした方が、過程でいろんなものを獲得できる。たとえ目標達成できなくても、成長幅が広くなるから。」

そーそー!みんなできるできる!
気合入れて、ワークショップ本編レッツゴー!


■リピテーション


本日はマイズナーテクニックの基礎練・リピテーションをやっていきます。
まずその前に大事なポイントについてお話。

まず、俳優は3つのもので構成されている。

頭 体 感情

でもここでは頭は置いてくる。体と感情だけになる。
直感でバンバン使っていくトレーニングをやっていく。

あなたは今何を感じていますか?
目の間に起こっていることは自分の気持ちには、どういう風に響くの?

ここで頭を使ったら殺されます。頭を絶対に部屋の外に置いてくる。
この原則に沿って、「リピテーション」というトレーニングをやっていきます。


そして、サンフォード・マイズナーさんが提示した「演技とは?」という4つの要素がある。この4要素もこの「リピテーション」の軸にしていく。

PLAY is Reacting 
→誰かとの関係の中で(反応し合うことで)演じることが引き出される。
PLAY is Feeling 
→感情は身体的な感覚とつながっている。体を観察することで、自分が何を感じているのかわかる。
PLAY is Action 
→行動することで何かが変わる。伝えることで変化がある。
PLAY is Communication 
→関わりの中で何かが変わる。サイクルが続くことが演技。


「Feelingで観察すると思うけど、頭を使いがちになる気がする。頭を使わないようにするには?分析しちゃうんですよね。」

世莉「わかる。・・・焼けた鉄板の上に乗った時に、何で熱いんだと思う人はいないよね。焼けた鉄板の上で何を感じるか、かな。理由は求めない。いろんな変化が体に起こっているはず。でも全てが大きくは無い。そんな変化も拾えるようにする練習だと思う。」

焼けた鉄板の上でまず「私はもんじゃ焼きになった夢を見ているのか」と思う人は足裏の皮が厚底ブーツくらいになっている人くらいなもので。通常の足であれば「熱い」を感じるわけです。
リピテーションは「なぜだ」と思う前に感じてる事を出していく作業みたいです。



では、「リピテーション」をやっていきましょう。

言葉通り人の言葉を繰り返す(リピート)ことをしていきます。自分の衝動を余す事なく伝えていく。言葉を繰り返しながら、やりたい事をやってください。衝動を素直に言葉にして、行動していく。

言えるのは言葉は3種類。
・目に見えるもの
・自分が感じている事
・相手が思っている事(主観的でOK)

NGなのは、暴力。だめ絶対。怪我はさせない事。
代わりにピロー先生(クッション)がいます。破壊衝動はピロー先生を地面に叩きつけて使いましょう。

合言葉は「2歳児のように自由に。大人の分別をもって。」
そんな感じでやりたいこと行動していく。


リピテーションの前に、まず体をリラックスすることから。

寝転がって呼吸。しっかり息を吐き切る。
声出したい人は出してOK。体動かしてもOK。

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緊張しているな、堅いなと思ったらそれを認めて。呼吸に集中すればするほど、体はリラックスする。意識がどっか行ったなと思ったら、呼吸に戻る。呼吸に集中できるようになったら、自分の体を一部分ずつ観察していく。そこに触れたり、動かしたり。

この順番で観察していきます。

1.爪先〜足首から
2.ふくらはぎ〜膝
3.膝〜股関節
4.腰〜おしり
5.お腹〜背中
6.肋骨・胸
7.肩・胸と首の間
8.腕・関節
9.手
10.首
11.後頭部・頭頂部
12. 顔

どんな感じがする?
色で表してみたら?大きさ・形はどんな感じ?そこから声が出たら?
どこが床に服に触れている?

一通り終わったら、硬いなと思うところから声を出してみる。
それも終わったら自分の体と呼吸を観察。体は硬い?ちゃん動いている?


この様子を見ていると、みんな呻き声出して、横たわっているので、
地獄ってこんな感じかと思ってしまった。みんな真面目にやってるんだけど。
体の芯から出ている呻き声は聞いているとしんどくなる。



リラックスが終わったら、リピテーションスタート。

世莉「関わりが少ない人とやった方がためになります。」
スタート時に世莉さんが言いました。理由は後から分かります。

まずは何が見えるかな。というところから。

そのあとは、
「どうやったら自分はハッピーになる?」
「あなた今幸せですか?」
「相手をちゃんと見て?」

ということを軸に行動していく。

外側からどんどん問いかけてくる世莉さんの声がすごく刺さるんだけど、それにどんどん俳優たちは焦っているようにも見えました。


さて、1回目のリピテーションを終えてみて振り返り。
リピテーションのあとは必ず振り返りがあります。何ができて、何ができなかったのかを明確に自分でもわかるように。

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  「嫌だけど作り笑いをしてしまって伝わらなかった。」
世莉「嫌ってどんな感情?」
  「怖い。」
世莉「言えた?」
  「言えてたけど、ストレートに行かなかったかも。」
世莉「伝わってないから、欲しいものが手に入らないんだよね。」

嫌な時も顔が笑ってしまう人のことを世莉さんは『笑顔仮面』と呼びます。
嫌われたくない気持ちや相手への事を考えてしまい、笑顔でごまかしてしまう。
この場ではそれが自分の気持ちの表現の邪魔になってしまう。

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  「怖いと言われて離れられたら、攻撃反応が逆に出てくる。何がしたいのか自分でもわかんなかった。」
世莉「離れられるのって何を感じていたと思う?」
  「拒絶?(相手が)何を考えているかわからない・・・」
世莉「それのトリガーは何だろうね」
  「相手を見ていない?」
世莉「それは軸が違うかな。あなたは何を感じていたの?」
  「寂しい・・・」
世莉「言えた?」
  「言えなかった。恥ずかしかったのかも。」
世莉「まずは『恥ずかしい』からでも良いよ。」

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  「きまずいと思ったのに言えなかった。相手も自分も悲しくなるかなって思って。」

世莉「でもわからないよ?言ったら喜ぶかもしれないよ。予想するのは頭。」

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  「コップの水が出し切れない。何かやらなきゃってとは思うんだけど・・・」

世莉「何かやらなきゃって思考だよ。それは何を感じてるんだろうね」

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  「休みたかったけど言えなかった。」
世莉「休みたいって何を感じている?」  
  「足が疲れた」

世莉「それは体の状態だよね」
  「めんどくさい」
世莉「体の状態には引き金がある。感情が体に出てくる。」

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  「相手と関わってたら、寂しくてかまいたくなって、コロコロ変わっていろいろできてよかった。相手のことより、自分の事をいう方が多かった。相手を見れたら良いのかな。」

世莉「まずは自分の衝動をやるで良いと思う。
自分の事を存分にできたら相手へ。」

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  「どうして欲しいのか言葉が見つけられなかった。あんまり関わりがない人だったから、うまく自分が出せなかったかも。」

世莉「初めての人がいいのは、表現する時にすぐに開けられるように。必要な時にすぐパフォーマンスができるように。もったいないから。芝居の時は社会性を忘れられるように。
そしたら稽古時間も短くなるよ。」

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  「基本的に相手に集中すべき?他のパーティに興味が湧いたら?」
世莉「行けば?貪欲にやっていれば何でもいい。」
  「他に可愛い人がいたら、パートナーに言ったらいいの?」
世莉「パートナーとリピするのがいい。
   それがあなたにとって本当の仕事ならやればいい。」

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  「リピテーションをやっていると、2つの感情が同時に起こることがあった。
 怖いけど、笑っちゃう(面白い)。きもち悪いけど、愛おしい(可愛い)。みたいな感じで。片方ずつ出すと自分の気持ちと一致しなくてすっきりしない。でも2つの意味を兼ね備えたワードが見つからない。」

世莉「モメントを短くする。その瞬間はなんなのか、観察して拾う。そうすればシンプルにできる。ただ、うまく瞬間を切り取れなかったら、ふたつ言ってもいいよ。ひとつに絞ってみて、違ったら違ったな、でもよい。みんな正解。気楽にやろうぜ。」

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世莉「リピテーション終わった後に出ている声が、今感じていること。コップの水を空にするように表現していきたい。マイズナーテクニックの良いところは天性の才能は関係ないのがいい。できるまでの時間は人によって違えど、誰でもできる。目的を持ってやろうとすれば、誰でもできる。」

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『なにを感じている?』って聞くと状態や思考の事を説明することが多い。
そんな時に「状態にはトリガーがある。」っていう言葉が腑に落ちた。
『離れたい』という状態になるのは、『怖い』等の感情があるから。
根幹には感情が何かある。それに気づく、表現できるようになる練習なんだと思った。



ここからは、猛烈にシーンをやる。

舞台にいる時はキャラクターとしていて欲しい。キャラ同士の関わり合いになって欲しい・・・でも、時間がない!(すでにこの時点で22時)
今日はシーン・キャラクターは忘れてリピテーションを台詞でやる。

どういうことかと言うと、
①リピテーションを始める。
②「セリフ!」と言われたら、その時の体の状態のまま台詞を話す。
※台詞の意味は無視してOK!


実際にワークを始めてみると、「相手にちゃんと伝えて」「そのまま声に出して」というワードが世莉さんから出ることが多かった。

「その手を握っているのを声にして」
「その後ろに下がりたくなるやつを声にして」
「感情が昂ったら声にして」

全部全部声にして出していく。だってそうしないと伝わらないから。台詞になると台詞を言う事に集中してしまいがちになる。でも諦めないで感情を言葉にのっける感じで感情のままにやる。何度も何度もチャレンジして、すっきりできたぞと言う回数を増やしていく。


  「思っていた想像と違うとセリフが出てこない。」

世莉「セリフが飛んでいるところがいいよね。演じるって動詞たらじゃないですか?最終的には存在するにしたい。Actionからbeingになりたい。ピンポン台を飛んでいくみたいに何が起こっても台本状態に進んでいけるように、それをしようとする糸を動かさなくても勝手にできていくようになれたら良いね。」



【1日目、おしまい。】

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