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#4 本番にベストができることって、ほぼ無い【黒澤世莉ワークショップ録】

ワークショップ6日目。土曜日になりました。

平日(月〜金)は毎日3時間やっていたので15時間芝居していたということになります。今日は13:00〜21:00の8時間、ちなみに明日は10:00〜17:00の7時間。残りのワークショップ時間は15時間。
(見返したら私#1で17時間って書いてた。時間の大判振る舞いしすぎた。)


世莉「残り半分できるぜ!いえーい!」
みんな「いえーい!」

スーパーポジティブか。体力馬鹿か。私はみんながサイヤ人に見えます。
とはいえ蓄積された疲れもあるでしょう。お家に帰るまでがワークショップ。怪我しないように 無事に帰りましょう。
そんな思いも込めて、私はわさびのりをそっとケータリングに置くのでした。(痛みに訴えるタイプ)


今日は準備運動して、ひたすらシーン稽古。
最後に明日の生配信と同じようにリハーサルしていきます。

世莉「今日はまず、手厚めにちゃんと今日までやってきた事を整理してやっていこう。」

ということで、今思っていることや疑問を解決コーナーから始まりました。



■今日までやった事を整理しよう


  「『カレンにまっすぐ言いすぎる。』『ジョーは誠意のあるキャラである。』この2つが噛み合わない。誠意=集中だと思っていた。これがまた別の方向でもできるようには」

世莉「視野が狭くなっている感じがする。リラックスして集中して欲しい。グーっと一点に集中ではなくて、視野が広い状態。どこからボールが来てもうごける状態に。」


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  「自分のダークマター(自分が持ってるエネルギー)について考えていた。ダークマターを持っている自分とカレンとの統合がわからない。」

世莉「人間誰しも持っている固有のエネルギー(怒りっぽい、悲しみやすい)って、2歳の気持ちに帰ると人によっても大きな違いはないと思う。統合しないと思っても、それでもやってみる。そのうち使えるものも見えてくる。キャラクターにあるものを自分の道具で選択して使えるようになってくる。自分にあるエネルギーをどういう形にして使うのかができるようになってくる。コップの水の出し方がわかるようになれる。」

  「(WSに参加していた元時間堂の俳優・ヒザイミズキさんに)
『エネルギーの形を変えて・・・』というのはヒザイさんも同じ感覚ですか?」

ヒザイ「はい。自分の中にある、違うとこからきた関係ないエネルギーでもいいから、このシーンに感じたものでまずやってみる。そこから台本読解を通じて選んでいく。その選択はこの前段階の準備の時に使えるものを作らなきゃできないから、まずあるものでやってみる。」

世莉「読解も感情も一気には無理だと思うから、まずは自分の力を出すところから。」


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  「準備や地雷が足りないとは思うけど、カレンの思い出のイメージが自分に落ちてこない。落ちてこない時のアプローチとは・・・」

世莉「分解がヒント。小道具、大道具に思い出を作ってみる。大雑把に設定を考えずに細かく設定していく。」

  「自分の中の似たような自分の感覚や思い出を探すことが多かったけど、それっていいものですか?」

世莉「地雷は役として設定した方がいい。自分の思い出が適しているならいいけど、自分と役がごっちゃになるからおすすめはしない。」

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  「準備をリロードする時間があるけど、それはない方がいいですよね」

世莉「手放せ手放せ。リレーションもそのためにする。実際に触りながら覚える。具体的な事をやった方がいい。自分で嫌な言葉を口に出してみて、動きを知ってみる。それで染み込ませていく。」

中嶋(今回の主催者)「物凄い速度でシーンを作っているので期間が短いのだけど、役のものを本当に自分のものだと思えるまでには本当は時間がかかると思う。」

世莉「信じやすいのもあると思うが、自分の得意を探すのも良い。」

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  「自分の体や空間を使うことに意識がいってしまう。動き方のボキャブラリーが少ないと思っているが、短時間でできることってありますか」

世莉「リピテーションの時にどの距離感がいいのかを意識してやってみる。台本のこの時にになったら、この位置でやるが固定しがち。自分の心地のいい事を考える。自分でミザンスを考えてもいい。思い通りにはいかないけど。具体的に自分の体で距離をやってみる。」

  「客観視して動きを考えてしまうのは良いこと?」

世莉「自分が動きたいかを軸にするのを先にした方がいいかも。」

ヒザイ「積極的にいたのか、ただそこにいたのかの違い。ただそこにいて選択していないなら、(自分の感情が)死んでる。動かない事をチョイスしないのは意味が違う。選択して動かないならいいと思う。」

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  「準備ってパブロフの犬(条件反射)みたいな事でいいですか?」

世莉「うん。余計な事を考えないために準備時間が必要。」

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  「相手が嫌な気持ちになると自分も嫌になるからできなくなる。」

世莉「そうなるかは予測できなから、やってみるしかない。こういう風にやって欲しいから、自分もこう言う風にやる。は違う。」

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  「自分は受動的なんだなと思った。エネルギーを発散しきれてないから、それを出すのに勇気でどうにかなるものなのかな。」

世莉「やってみましょう。無様な方が素敵だよ。」

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  「演出家さんでミザンスからつける人ってどうなんですか・・・?絶対自分の感覚と演出が違うときはどうしたらいいですか」

世莉「演出通りやってみるか、自分で提案してみるか。無理な演出を落とし込む方法としては、嘘をつくと言う切り札がある。それが価値観だと割り切るしかない。それか自分がもっとかっこいいものを提案するか。
その場では社会的コミュニケーション力もいるから大変だよね(笑)」



■ベストを出したがるのはやめた方がいい


 「自分がやっていると、自分のイメージしたマーサと違うものをやっている気がしている。分析したものと違うなと思うんだけど、分析を生かすと自分がなくなってしまう。」

世莉「分析はしたけど、それは置いといて自分でまずやろう。その場だけでやろう。うまく行ったら分析した部分がちょっと入ればいいかな。」

  「やりづらいのは最初が緊張すること。登場の時が硬くなる。やっているうちにほぐれてくる。準備が足りないと思うんだけど、頭でもわかっているけどうまくいかない。前段階のシーンを考えておく事で、肩の力を抜いておくことに体がついていかない。」


世莉「つべこべ言わずに体を動かせ。」


  「腕立てしたら、心拍数が上がってしまって(笑)」 


世莉「シーンに合わない無酸素運動をしたのが問題。有酸素運動にした方がいいよ。
手放しでもできる事を信じて。やったら楽しいから。追いつかなかったら準備を深めたらいいから。」

世莉「芝居は準備が9割。残り1割は相手に集中してリラックスする。稽古の初日にできる事を最大化したものしか、本番にならない。自分の限界は自ずとわかっている。

そもそも日常的に自分にできる事、インプットを増やして厚みを上げていく。
稽古が始まる前にどう言う風に生活するか。ご飯の食べ方、睡眠、できる事を増やしているか、戯曲を読むとか。読んだ事を話し合う。リスペクトを持ち合って、自発的にやっていく。

準備は捨てるためにやる。全然違うと気づくのは、選択肢が減るから良いこと。
いろいろ試したけどこれが一番いいという方法を知る。

セリフは死守して、それ以外は捨てて、乗り越えていく。本番にベストができることってほぼない。だから、ベストを出したがるのはやめた方がいい。
アベレージが一番の実力だと思った方がいい。そっちの方が安心できるから。自分、仲間、戯曲を知って、準備して、捨てて舞台に立つ。準備して捨てるの繰り返しだと気楽にできる。

稽古初日までにどれだけ俳優として積み上げられるか。
そして稽古が始まったら、シーンの準備はたくさんやって、本番は全部捨ててやる。積み上げて行ったら勝手にキャラクターが動くと思う。こだわりすぎるより、捨てた方がいい。」

ヒザイ「自分にあるエネルギーと必要なものと全く違ってもそれ使っていい。シーン中にエネルギー補給できるタイミングがあると思う。
あとは準備・読解で用意していく。コミュニケーションで補給する、事実と物で補給する。」

世莉「悲しいシーンなのに気持ちがなかったら、嘘つけばいいと思うよ。演劇は嘘をやるわけだから。この練習はその嘘を減らしたいだけ。だから、できなかったら嘘でいい。」

  「ほっとする(笑)。でもできたら、嘘つかない方が楽ではある。」
 

私も安心した。
私が安心した点はベストができない事が悪だと思っていたから。ベスト以外は全て駄目な回だと思っていたから。どうしても結果を焦ってしまうのだけど、今はできなくても次までに1個でも1%でもできる事が増えていたら御の字なのだ。

あと嘘を失くすのではなくて、嘘を減らす。嘘つく事はお芝居の上では悪いことでは無いようだ。そんな嘘にこだわるより、次の本当に目をむけていく方が大事ということ。要するに「できねー時は、できねー。次いこう次!」

自分の中で、どんどん俳優でいることのハードルが下がっていくのを感じました。



■本日のリピテーション

まずはリラクゼーション。
今日は椅子を使ってリラクゼーション。椅子に座って、呼吸して体を緩める。
体を一部一部回したり、動かしたりしていきます。足首→膝→太腿・・・と上に上がっていきながら動かしていきます。

その後はエクササイズ。
自分の目の前にも椅子を置いて、そこに誰かを連れてくるエクササイズ。人を連れてきたら、その人とリピテーションしていきます。これもできるだけ過去の人がいいそう。ひとり連れてきて、一定時間リピテーションして一旦終了。その後にまた次の人を連れてくる。

連れてくる人のテーマは、
あなたが愛する人、あなたを怒らせる人、あなたを悲しませる人、あなたを笑わせる人、あなたをセクシーな気持ちにさせる人

そこで存分に心を動かす準備をしたら、実際の人とリピテーションへ。


ここで久しぶりに私はリピテーションに入りました。なので客観的な感想では無いのかもしれないけど、俳優の皆さんはどんどん貪欲にチャレンジするようになっている気がしました。全力で自分の感情に体当たりしにいっている感じ。
・・・何が言いたいかというと、周りの感情の昂りがうるさすぎて私は全くエクササイズに集中できませんでした(笑)。前にこのエクササイズをやった時は比較的にうまくいっていた覚えがあるのだけど、今回は周りの声でどんどんかき消されました。でもそれこそうまくいった時をなぞろうとしている自分もいた気がする。
前はめちゃくちゃ怒りを感じた人を今回も連れてきたのに、

怒らせる人「うるさいねー」
私「忍びねえな・・・こんなところに連れてきて・・・」
怒らせる人「かまわんよ(帰宅)」

みたいな感じですぐ帰って行った。
誰も連れてこれないし、ずっと周りがうるさかったので「うるさい」ばかり言っていた。一人でリピテーションをやってた。

そんな感じで良かったんですかね・・・
世莉「うん。」
良かったそうです。

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  「今日はすごくわがままになれて。悲しい気持ちがいっぱいだったから、楽しいにはなれなかった。でも一番空にする感覚が掴めた。」

世莉「悲しいまま楽しいをできないこと。がシーンでも使えること。」

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  「渦中の相手を使わない方がいいと言っていたけど、思いつかなくて。結局身近な人になっちゃう。」

世莉「過去の人の方が何回も使えるってだけだよ。」

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  「空間に言ってもいい?」
世莉「基本は相手に言う。」

  「我慢をしたい時は?」
世莉「したくてやってるなら、それは幸せなんじゃない?行動ではなく感情に突き詰めるとシンプルになるよ。」

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  「殺意とか暴力的な事を感じてしまったけど、それでいい?」

世莉「うん。それが想像上の人間だからできるんじゃなくて、実際の人でもやって。」

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  「一人のリピテーションをやって、声が枯れちゃった。体の使い方が間違っている?」

世莉「うん。ボトルネックだから、下半身を支えて喉を開いた状態で出す。というのを意識が必要。」

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(どういうタイミングでこの言葉が出たのか覚えていないけど、いつか助けになる事がありそうなメモがあったので残しておく)
世莉「淡白さは曖昧さに繋がるから、貪欲にやって欲しい。」



ここで本日の前半戦終了。この後はみんなで衣装合わせをしました。

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同じ役をやる人が何人もいるのに、衣装にも一人ずつ個性があって面白い。
衣装があるとその人の生活感も見える感じがして。俳優やってると衣装考える時って結構アガリませんか?ブチアゲナイトプール、ポンポン!ブーンブーン!じゃないですか?(言いたいだけ)

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この後、猛烈なシーン稽古へ。
一回は全チーム一回シーンをやって、この後は明日の配信と同じ流れで全チーム通し。

また、ここについては印象に残ったところを私の解釈も入れつつ、まとめます。
メモが雑でね、そのままじゃわからないのよ・・・


・「言葉」の部分をしっかりと理解して、伝えたい。言葉の意味と感情をどう組み合わせるか。役が感情をどう認識しているか・どう考えているか。それを受けて今自分にあるエネルギーをどう変換させるか。

・シーンの目的を理解する上で、相手がやりやすい、相手が出しやすくなるものを選ぶとシーンの構造がわかりやすい。やりやすいというのはシーンがより面白くなる方、シーンによっては相手がより苦しむことです。

・長いセリフの中でも意味の変わり目のところを捉える。言っている事と本来の感情が違う事、役も言葉を言い変えているという自覚を持つ。それを理解したら、自分のセリフを分割して、表現するために言い方などを変えてみる。

・肩の力を入れないでやるのと、エネルギー値が低いのは違う。


うん!ここだけ見てもよくわからないよね。
私も頭でなんとなくわかった気でいるけど、言葉で表すのが難しいと思っているところを見ると、これは実際に戯曲を持ってやってみないと実感できない部分になってきている。

準備や頭で考える時の話が多くなってきていた。シンプルに読解力が求められている感じがした。

でも舞台の上では捨てないといけない。
その時の心と準備がどんどん混在して、忙しくて、わけがわからなくなっていく。

そうか
これがインテグレーションか。
そうか?


さて、次はいよいよ最終日。どんなシーンが作られるんだろう。
楽しみね。

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【6日目、おしまい。】

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