「カナリアと林檎の幸福論」について

ameiroです。
本日は2024年5月10日に公開したオリジナル曲「カナリアと林檎の幸福論」の制作秘話などを語りたいと思います。


動画

制作経緯

この曲を公開するまでの間、アルバム用の曲を作ったりと様々なことを試みようと考えていたのですが、動画にして投稿するにはそこに至るまでのアイデアがなかなか思い浮かばなかった期間でもありました。

そして、無事「empathetic melody #02」をリリースし、M3春での楽曲提供作品「Digital J-POP Compilation Album Vol.2」のリリースを経て、これらで知ってくれた方の心に響くような曲を作ろうと考えていた頃、「Digital J-POP Compilation Album Vol.2」に寄稿した「melty marriage miracle」で歌詞の制作をお手伝いしてくださった、Rusurさんと会話していた時のことでした。

この本についての話題となり、収録作のひとつである「さえずりメイド3本勝負」(著者…七路ゆうきさん)の考察で盛り上がっている際に、これをテーマにした歌詞を書きたいなと思ったところから始まりました。

この作品の世界観や物語について。

とあるお屋敷の新人メイドである「アトリ」と「イスカ」は、自分の担当する業務に関して喧嘩をしていました。
そんな姿を見たお屋敷のお嬢様「カナリア」は、ふたりに「メイドの業務で評価をして負けた者が勝った者の言うことをなんでも聞く」…という提案をします。タイトルにある「3本勝負」が始まります。

最初は「掃除」。途中で本棚から倒れてきたお嬢様の幼い頃のアルバムを見ることに夢中になったアトリは敗北を喫してしまう。
2戦目は「お菓子作り」。ハイスペックなイスカに勝てる気がしないと悟ったアトリは、先輩メイドの「ツグミ」にお菓子のレシピを見せてもらうことをお願いします。
そして出来上がったのは、イスカは豪華なアフタヌーンティーセットを披露しスペックの暴力をアピール。それに対してアトリは焦げてしまったアップルパイとアップルティー。イスカは焦げているうえに林檎被りという部分で勝ちを確信するが…アトリはお嬢様の好きなものを見抜いていたのです。しかしそのアップルパイには林檎の芯まで入っており(これが減点ポイントなのかなとも思いました)、引き分けという結果に。
2-1というスコアで迎えた最後の対決。このままではアトリには勝ち目がないということで、お嬢様は「勝った者に10点(=次の勝負で勝ったほうが勝ち)」と提案します。その内容とは…お嬢様のお見合い話への返事の手紙を書くこと。相手はオペラ座の御曹司とのことです。その話を聞いたアトリは…

「だったらあたし書けません」
「その人はお嬢様の好きな人じゃない」
「お嬢様が好きなのはツグミ先輩でしょ」

イスカとの勝負の合間に見たアルバムやお菓子のレシピなどから、幼い頃からずっと傍にいたツグミが、お嬢様の想い人ではないかと悟っていたのです。それに気付いたアトリは、

「お嬢様の傍にはずっとツグミ先輩がいてそれが幸せなんだなって 想い合ってるんだなぁって」

と告げます。それに対してのお嬢様の返答は、

「実は二人がお見合いに肯定的な手本を書いたなら 大人しくこの話を受けようと思っていた」
「これが僕の幸せなんだと受け入れなくてはってね」
「でも その必要はなかったね」
「ありがとう 僕の幸せがなんなのか 今日一日仲良くさえずるアトリとイスカを見てやっと確信できたよ」

と、ツグミの傍にいることが自分の幸せなんだと確信し、お見合いを断ることを決めます。
…そんな感じで勝負は終わり、二人の新人メイドはライバル視を続けるものの、今回の件でお互いの気持ちを理解し合えたかな?、といった感じで終わります。
帯にはアトリとイスカの描かれているコマが載っていますが、「百合」という概念はカナリアお嬢様とツグミ先輩に発生している…って感じですね。アトリとイスカに百合概念が生まれることは果たしてあるのだろうか!?と考察の甲斐がある作品に仕上がっています。

この作品について説明しないと歌詞の説明が難しいかなと思ったのでものすごく長文で解説してしまいました。ここから楽曲制作の本題を書きます。

制作にあたって

作曲・アレンジに関して

元々前述のような経緯に至るまでに作りかけていた曲の方向性が近かったので、これに歌詞を乗せてもいいかなとも思いましたが改めて一からこの物語に寄り添った曲にしたいと思い新たに作り始めました。この作りかけていた曲は後日どこかで発表できればと考えています。

お嬢様が自分の幸せに気付くこと、が物語の核心になっているので、「幸せ」というテーマで作り始めました。
速すぎず遅すぎず、柔らかい雰囲気を感じられるテンポ感とメロディラインを意識して、BPM130で4つ打ち。「Digital J-POP Compilation Album Vol.2」で自分を知ってくれた方にも届くようにデジタルJ-POP寄りな音にしつつも尖らないように。そんなことを考えながらカナリアお嬢様の決意を感じられるような曲調に…と念を入れました。

作詞に関して

完全にお嬢様視点で書いています。カナリアお嬢様はクラシカルロリータなお洋服をお召しになったTHEお嬢様な見た目に対し、話す言葉は一人称が「僕」で凛々しさを感じつつもユーモアを交えた印象になっていて、エレガントさの中にしたたかさを抱えた珍しいタイプの子です。「お嬢様+ボクっ娘」という属性の組み合わせだけを見ると生意気そう(それこそアトリやイスカみたいな)って第一印象抱えそうだけどそんなことは全くなく、凄く秀逸なキャラクター設定だなと思いました。
二人称に関しては作中では名前を呼び捨てなのですが、歌詞に起こすとしたら…やっぱり一人称が「僕」だから「君」が釣り合うのではと。「あなた」と言いそうな子ではなさそうですし。

話が逸れてしまいましたが、カナリアお嬢様がツグミ先輩と一緒にいる時間、隣り合っている時間が「幸せ」なんだ、ということを一曲通して伝えていきたいと思い、ところどころにアトリとイスカのことやお見合い話が来たときの悩みなどの気持ちも踏まえて書きました。
そして、カナリアお嬢様の好物であるリンゴの花言葉は「優先」「好み」「選択」…などなど調べたら色んなものがあるのですが、カナリアお嬢様とツグミ先輩の想いに一致するような言葉がたくさんあったので、そういった言葉からふたりの想いに繋がるようなフレーズもいくつか入れております。
リンゴの木にも花言葉のようなものがあって、それが「名誉」とかなのですが、名家に嫁ぐことよりも生まれ育った場所にいることのほうが「名誉」なのかなとも思ったりしました。

曲名について。作り始めた際の仮タイトルがお嬢様の名前「カナリア」だったのですが、これだけだと曲の伝えたいことが伝わらなさそうだなと思い、お嬢様の好物と併せて「カナリアと林檎」というタイトルをつけたところで歌詞を書き始め、幸せがテーマということで最終的にこうなりました。

最後に

5月10日が「メイドの日」とのことなので、お嬢様とメイドの想いを題材にした曲を投稿するのにピッタリではと思い、この日に投稿させていただきました。そして、お嬢様の好物であるリンゴは、翌日5月11日の誕生花です。

「物語の登場人物の視点で書く」ということを意識して制作しましたが、ゆるやかな表現のメッセージソングとしても聴けるような感じに出来上がった気がします。
こういう書き方をした曲は「phase of the reflection」など何曲かありますが、主人公の人物像を深く考察して作るので難易度は高くなりますが作り甲斐があります。(作者の解釈と違ってしまったら本当に申し訳ないです…)
改めましてこの曲を作るきっかけをくださったRusurさんに感謝を申し上げます。
Rusurさんと制作した「melty marriage miracle」を寄稿いたしました「Digital J-POP Compilation Album Vol.2」は、メロンブックスさんで購入いただけます!(通販ページ)こちらもよろしくお願いいたします。
他の参加者の皆様の曲もとても素晴らしいので、冬をテーマにした曲が好きな方はぜひ聴いてください!
個人的には、Yuさん制作の「Endless Like Snow」と、伊藤由宇さん制作の「冬空彼方」が特にお気に入りです。

歌詞

鳥かごのような箱庭の中
さえずる音色は とても優しかった
幼い頃から 僕の傍にいる
君の薫りに触れ 甘やかな時を紡ぐ

ねえ 知りたい…僕の「幸せ」がなんなのかを
抱えていた想い 確信になった

僕の隣に君がいる それが本当の「幸せ」と
気付いた瞬間に 新たな明日への扉が開く
たとえ幾時を重ねて 大人になっても
変わらない笑顔で微笑み合えたら
それだけで嬉しいから 手を伸ばすよ


僕が選ぶべき 道に差し込む
光は 迷いさえ 晴らす輝きに変わる

そう 戸惑う想いを 君の手に預けたら
ふたつの心は優しく交わって 躍り出した

伝えたい 伝えきれない 言葉が淀み濁っても
君を想う僕の愛情きもちは ゆるやかに育まれる
甘く香る林檎のように 染まる君の頬が愛しい
なんてきっと言えないけれど
ずっと此処にいて欲しい 僕の傍に


息が詰まるほどに 狭い世界でも 君が居ればいい
遠くへ飛び立つことよりも 君の傍を選びたい

ありがとう これが本当の僕の「幸せ」なんだって
確かに思うことが出来た だからもう後悔はない
地位や名誉に憧れて 箱庭を出なくてもいい
此処が僕の居場所なんだ
君と微笑み合える 幸せな場所

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