俄雨(にわか雨)を宅配便へ
水曜 AM9:05
堤防を走っている車の音。
いつもとは違う濁点の感じない走行音。
喉を枯らしたノーマルタイヤに
30キロの雨音が滴っている。
どうやら今日は雨の世界らしい。
雨の日は決まって目覚めがいい。
気付いたら鼻歌を歌いながら朝食の準備を
していた。
献立はお味噌汁、ご飯、卵焼き。
朝くらいはゆっくりと古きよき日本人を演じたい。
いただきますをして、卵焼きに手を、テレビに
電源をつける。そこには室内で傘を差すアナウンサーの姿。
「降水確率80% 気温23℃ 天気は雨!」
「…雨だなぁ」 と
窓の外を見ながら温かいご飯を一口。
耳には知らない友達の声。
3ヶ月前から変わらない
いつも通りの日常だった。
たべおわり、昨日の夜にさぼった分の洗い物も
一緒に片した後、服を着替えて傘を持つ。
ドアを開けると
外は雨に染まった世界。
それは昨日よりしんとしていて。
綺麗な生命がよく目立つ。
いつもは軽く飛んでいるすずめも
今日は巣にこもって一家団欒。
昨日は凛々しく咲いていたあさがおも
今日は泣き虫で愛おしい。
不器用で特別な、
透けた世界を照らす雨。
そんな雨の音が聞こえたようで
優しい声が反応した。
「ざーざー言ってるね!すごい雨。」
「聞こえる?いい感じに降ってるよ。」
予報によるとこの雨は夜頃、
彼女が住んでいる東京に着くらしい。
ざーざー音をたてながら
僕の世界を濡らした雨が
彼女に向かって進んでいく。
「雨…あんまり好きじゃないな〜…。」
そう呟いた彼女の声は
雨がよく似合う声をしていた。
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