チルドレンたちはどのようにしてエヴァの呪縛から解き放たれたのか

いまさらですが



「エヴァの呪縛」とは

 「Q」の冒頭、ミサトたちに14年間眠っていたことを知らされる。そんなシンジの前に、14年前の14歳だったころとほとんど変わらない姿のアスカが登場する。

シンジ「アスカ さっき14年って…でも眼帯以外変わってない?」
アスカ「そう エヴァの呪縛」


姿が変わっていなかったのはアスカだけではなく、シンジ、レイ、マリといった「破」までで登場していた他のエヴァパイロットたちも同様に14年前と姿がほとんど変わっていなかった。(「Q」で登場するレイは「破」までで登場していたレイとは同一人物ではなく、後者は「シン」の終盤に髪の長さ以外変わらない姿で登場する。)

「エヴァの呪縛」とは一体何なのか。それは「シン」でのアスカの発言によって明らかになる。

 アスカはマリに髪を切られながらこう呟く。

「ほかはろくな身体形状変化がないくせに髪だけは伸びる うっとおしい」

また、アスカは布団で横になりながら、次のように呟く。

「もういいかげん寝るマネも飽きた いつになったら寝られるんだろう?」

 そして、食事をとろうとしないシンジに、アスカは次のように言い放つ。

「こうしてメシを食わせてもらうだけでありがたく思え!(中略)まだあんたはリリンもどき 食べなきゃ生きていられない だから食え! こちとらずっと水だけだ 何も変わらない体になる前にメシのまずさを味わっておけ!」

(「リリン」は「人間」と同じ意味で用いられている。)

以上のことから、エヴァの呪縛には、

①成長が止まるが、髪は伸び続ける
②睡眠がとれなくなる
③食事は水以外必要なくなる

といった特徴があることが分かる。

「エヴァの呪縛」からの解放

 最終決戦の後、シンジはエヴァパイロットたちと心象風景の中で対話し、エヴァの呪縛から解き放つ。

新劇場版シリーズの作中、アニメ版から登場していたエヴァパイロットたち(アスカ、カヲル、レイ)は、全員シンジへ好意を寄せていた。しかしシンジは彼らに、自分ではない誰かとの縁や他の可能性があることを示す。

アスカには「シン」で生活を共にしていた相田ケンスケという居場所を、

カヲルには同じ組織であったと思われる加持リョウジとの縁を示した。 (カヲルと加持が同じ組織であったことは明確に描かれていないが、加持がカヲルのことを「渚司令」と呼んでいたため、同じ組織であったと思われる。同じ組織ではなかったとしても、カヲルは加持のことを「リョウちゃん」と呼んでいるため、二人は親しい仲だったと思われる。)

レイは「シンジがエヴァに乗らなくていい幸せを手にしてほしい」と強く願っていたが、シンジは


「ここじゃない君の生き方もあるよ(中略)僕もエヴァに乗らない生き  方を選ぶよ 時間も世界も戻さない ただ“エヴァがなくてもいい世界”に書き換えるだけだ」

と話し、別の可能性を示した。

「エヴァンゲリオン」シリーズは、アニメだけではなく漫画や、新劇場版シリーズ以外の複数回の映画化など、いくつもの派生作品があり、そのどれもが少しずつ異なる結末を迎えている。

しかしここでシンジが示した可能性は、それらと大きく異なるものであった。シンジはこれまでのエヴァの物語と大きく外れた可能性を示すことで、この3人をエヴァの呪縛から解き放ったのである。

ここまでアスカ、カヲル、レイの3人の解放について述べてきたが、シンジ自身はどのようにしてエヴァの呪縛から解き放たれたのだろうか。


マリの存在

新劇場版シリーズから新たに登場した真希波・マリ・イラストリアス。彼女こそこれまでのエヴァの物語から大きく外れたイレギュラーな存在であり、シンジをエヴァの呪縛から解き放つ人物である。

ラストシーンでは、シンジが現実で大人へと成長し、マリと共に走る姿でエンディングを迎える。

これまでのエヴァの物語には存在しなかったマリとの縁によって、シンジもアニメ版の物語から外れていき、エヴァの呪縛から解放されることになる。

そしてマリも、自身がイレギュラーな存在であるため、シンジとの縁が示された時点でエヴァの呪縛から解放されたのである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?