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自分ひとりで生きられるってそれほんとかよ

昨夜かなしいことがあっておいおい泣いたので、朝おきたら目が腫れあがっていて、さらにかなしくなって仕事を休むことにした。


私は火曜日に学校に行けない子どもだった。土日で生活のリズムが狂ったり遊びで疲れたりしてしまうと、月曜日は何とかがんばって行っても火曜日の朝には頭が痛くて何もできなくなってしまう。べつに病院に行くほどでもないし親も忙しかったので、よくひとりで薄暗い部屋をゴロゴロしていた。

共用の財布が引き出しに入っているので、昼くらいになるとそれを持ってふらふら出かけ、本と漫画を1冊ずつくらい、あとミカンゼリーを買って帰ってくる。で、テレビを見ながら、本をパラパラしながら、ゼリーを食べる。。子ども時代の火曜日はいつもそんな感じ。

今はよくまいにち会社勤めしてるよなーと自分では本当に驚嘆する事態だが、大人になってから知り合った恋人にはこのすごさがわかってもらえない。私にとっては火曜日に休むほうが自然で、仕事するほうがおかしいのに。


昼過ぎ、買ったばかりのピンクのワンピースを着てみる。かなりかわいい。似合ってる。まだ目が腫れてるけどお化粧もした。かわいい。誰かに見せたかったけど誰もいない。かわいいねえ、と自分で自分に言う。

14時半をまわって、近所の和食系のファミレスにうどんを食べに行く。変な時間なのでほとんどお客さんはいなかった。このまえすごく美味しいと思った鴨汁うどん。これを食べれば元気になる!と思って行ったのだけれど、おなかの調子が悪いのであまり楽しめなくて残念だった。私は気持ちの調子が悪くなるまえにおなかの調子が悪くなってしまう人間らしい。あまりよくない仕様だと思う。


私はもともとはけっこうおなかが丈夫な人間だったはずなのだが、大学を出て働くようになってから胃腸炎を繰り返すようになってしまった。一度壊れたら壊れ癖がついてしまうのか、働くことじたいが合っていないのかはよくわからない。

高校生のころにちょっと好きだった男の子がおなかがめちゃくちゃ弱くて、授業中しんどいのかよく突っ伏していた。とにかく鼻が高くて、人間というより銅像のような美しさだったけれど、こんな浮世離れした人にも内臓があるのだなあと変な感じがした。私以外の女の子と話しているのを見たことがなかったが、カッコいい人だからもしかして今ではチャラチャラしているのかもしれない。想像すると少しだけいやだ。うそ。元気でいてくれたらいいな。


一度帰宅してトイレに行ってから近所のカフェに行く。川上未映子『発光地帯』を読む。雑誌に連載されていたエッセイのまとめだが、個人ブログのような書き放り具合ですごい。机の上にある本のタイトルを羅列したり、卵焼きとウインナーは子どものころ好きだったけど今でもたくさん食べられる、みたいなこと書いてる。よう出版できたなこれ。(しかしたまに革命的に良い文章がある)

彼女の初めての小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』は、頭で考えてるっていうけど実際には頭なしで考えたことなんかないのだから本当に思考しているのは奥歯なんじゃないの? その可能性否定できる?オラオラ!っていう話(?)だったけれど、こちらのエッセイでも、人生二回目をやったことなんかないのだから一回目の意味なんかわからないとか、そういう話が多くてよかった。世の常識をあっさり肯定している人の文章なんかつまらなくて五行も読めない。

そういえば最近結婚した壇蜜さんが「ひとりで生きられないから結婚するのではなく、自分ひとりでも生きられる自信がついたから誰かと一緒にいられるようになった」と語ったのが話題になっているけど、川上未映子はそんなのホントかよ!とオラオラしていてやはりよい。(過去の好きな人に言ってるのであって、壇蜜さんに対して言ってるわけではない)

二十代の初めごろ、すごく好きでちょっとのあいだであってもどうしても離れられなかった人に、独りきりでいることに耐えられないふたりなら、一緒にいつづけることなんてできないんだと何度も何度も言われたけれど、そのときはそうかもしれないと苦しみながら思ったけれど、あれはほんとうのことだったのだろうか? (中略)大事な人とは離れてはいけないのではなかったか。そうでなくてもわたしたち、いつか必ず離れてしまうときはやってくるのだったからたったいま大事に思うのならあれこれあぐねて離れてしまうことはない、世界なんかわたしとあなたでやめればいい、そしてもう一度、わたしとあなたでつくればいい。


家に帰って、化粧を落とそうかと思ったけど、かなしいのでもっとたくさん化粧をした。オレンジを塗りすぎてさらに目が腫れた。

さっき書いた昔好きだった美しい男の子のことが気になってきてインスタアカウントを探したけど見あたらず、かわりに元カレの結婚式の写真を見つけてしまって最悪だった。だっせぇドレス!と彼の隣で笑う女の子を心の中で罵倒した。しかしどうにか許されたい。私だけは天国にいきたい。


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