恋人とコンビニにデザートを買いにいく夜は、人生に何度あってもよい
ほんとうは早起きして、まだ空いているカフェに出かけて原稿を書こうと思っていたのに、起きたら10時だった。近所のカフェは10時を過ぎると混みはじめる。出だしから失敗してしまった。しかたないので二度寝した。
藤田貴大のエッセイ集『おんなのこはもりのなか』を再読する。
これは男子に言いたいのだけれど、女子の鼻水を吸えないなら女子なんて愛さないでほしい。
(略)
性交みたいなことはできて、なぜ。鼻水は吸えないのか。女子の粘膜が決壊して流れ出ているのだよ? 女子のあらゆるいろいろが、透明の糸になって、外に出ようとしているなんて。なんて美しいのだろう。
最近は読まなくなってしまったが、ananのリニューアル当初の連載はめちゃくちゃ良かった。藤田のこのエッセイもそうだし、古市憲寿と朝井リョウの紙のラジオという連載も適当ですごい楽しかった。毎週水曜日が楽しみで、いつもウキウキしながらコンビニに行っていた。
彼は演出家だが、自分の舞台に立たせる女優の下着はすべて選んでいるという。ちょっと気持ち悪いけど、その変態性がよい。この連載で知って演劇も観るようになり、エッセイ集が発売されたときは下北沢B&Bの刊行記念イベントまで行った。だから私の家の『おんなのこはもりのなか』はサイン本である。
ツイッターの友人、しとちゃんのイラストを勝手に描いて送りつける。喜んでくれて、アイコンにまでしてくれた。彼女は口がかわいい。
恋人が昼すぎに来るのを見計らってウーバーイーツを頼んでおいたが、予定の時間に来なかったので一人でモスバーガーを食べた。こういうのを月に二度くらい食べたくなる。そのあと彼は冷めたテリヤキバーガーをうまいうまいとほおばっていた。
とりあえず色々と書かなくてはいけないものがあるが、まずは本業のほうに手をつける。スペースが与えられていて、基本的には何を書いてもよい。私は思ったことは毎度ツイッターに垂れ流しているので、自分のツイートが思考メモのようになっている。遡って書くことを選別する。
集中が切れてきたので、朝いくはずだったカフェにいった。日曜日の夜なのでかなり空いていた。なんとなく形になったので明日推敲しようと思う。あとは雨あがりの少女で依頼されているやつを書きはじめる。こうしてお願いしてもらえるのはありがたいことだ。いまの自分がうれしいというより、過去の何か書きたくてモヤモヤしていた自分に、「よかったね」と心の中で声をかけている。
夕食後、彼が「なにか甘いものが食べたいなあ」と呟いたので、いっしょにコンビニまで買いにいくことにする。彼は私と散歩するのが大好きなので、よく甘いもので釣ってくる。ずいぶん過ごしやすい雨あがりの夜だった。帰りに執拗に足を突き出してくるので、何かと思ったら、昨日ぬったペディキュアを見せたいようだった。すてきよ、と言うと満足げだ。本当にすてきだった。
都知事選のポスターが掲示されているのを眺める。候補者や政党については一通り把握しているので彼に解説してあげる。「泡沫候補」という言葉を彼は私と付き合って初めて知ったらしい。たしかに知らなくてもいい言葉だ。私が「コイツは泡沫候補」と言うといつも心底おもしろそうに笑う。都知事選は知名度をあげるために出馬する人が多いため、泡沫候補がたくさんいる。楽しい。
ツイッターで流行っていた性別や年齢を操作できるアプリを試してみる。主に恋人を老化させて楽しんだ。かなりイケていた。イケてるでしょう、と送ったが、本人は不満げだった。
老けた男子を愛せないなら男子なんて愛さないでほしい。いや、べつにそんなことないか。でもきっと私は愛しちゃうと思うよ。おじいさんのあなたを。
夜、noteで他人の日記を読んでいたら書きたくなったので、書いている。なんでもない日でも、書いてみると色々あるのがわかる。出だしを失敗したわりにはよい日だった。
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