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あとがき

始発駅から夢見心地。気づくと人が入れ替わり、気づくと周りに人がいませんでした。眠っている自分と、起きている自分。大人になるにつれ、どちらが本当なのか分かり始めてきました。そこから、旅が始まりました。

どんなに明るい場所であっても、そこがいくつもの鏡張りの空間であるなら、進む速度を緩め、なおかつ手を前にして進まなければ危険だと知りました。必ず丸い月を見ていなければならないという固執が、焦りを生みました。誰かからの便りを待ち望んでいました。自分の存在を確かめたかったのでしょう。

暗闇の寒さの中では、寄り添うことを赦されました。寒さを共有し、耐え抜いた人との絆は深まってゆきました。相手のにじみ出る経験は、語らなくても伝わってきました。

旅立つ前の人の言葉は、特に胸に刻みました。旅慣れた者は、荷物を少なくします。そこに、飾られた言葉など、ひとつもありません。

よく怒られました。でも、起こりながらでも必死になって道を教えてくれた人に、ありがとう以外に何が言えるのでしょう。涙を流しながら抱きしめてくれた人に、ありがとう以外の何を言えるのでしょう。

四輪より不安定な二輪が、安定するためには、スピードが必要です。一輪は、二輪よりも不安定なのにスピードが出せないのは、一緒に動いてくれる仲間がいないからではないでしょうか。二輪が、一番小回りが効いてスピードが出る理由は、余計な仲間意識を捨てたからだとおもいました。月がかけて見えるのは、自分がしっかり立っている証拠だと信じました。

一周して安心し、さらに一周する。目が回ったら上からまた考える。行き着かないと感じたら、それは人生なのかもしれません。

夜空を見上げながら何も望まない者は、流れ星を見つけます。月の光。水面に浮かぶ月の光。どちらも同じように自分を照らしています。

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