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「浪漫と算盤」 会社が何度も潰れそうになって忘れていたプロダクトビジョン


ビジネス採用は上手くいくのになぜエンジニア採用に苦戦していたのか


最近、ずっとお世話になっている上場企業でCTOをしてるエンジニア顧問の方と
飲みに行かせて頂く機会がありました。


採用会食こそかなり増えましたが、
あまり目上の方と会食に行かない自分にとっては珍しい機会であります。
でもそれくらい僕としてもその方と飲みにいくことが楽しみで好きなのです。

何が楽しいのかと言うと、その顧問の方とzoomで相談するときもそうですが、
その顧問の方は僕に言葉を選ばずにいつもストレートに課題点を伝えてくれるのです。どの言葉もストレートすぎて、いつも私はメンタルブレイクすることすらあるのですが、ビジネス側の側面では特に課題を言われることが少ないので、自分にとってはそれが斬新で楽しいのです。


その日も焼き鳥を食べながらエンジニア論やプロダクト論について話を聞いていました。基礎知識も足りないのはもちろんですが「夏目さんに言ってもこれ以上わからないと思う」と言われるので、自分も理解するのに必死でした。


そんな感じで話をしてる時に、私があることを相談しました。
それはやはりプロダクト開発をすると宣言してから苦戦してる
エンジニア採用についての話です。
業務委託や副業ならと言ってくださる方はたくさんいるのですが、
社員の転職でという話になると、やっぱり皆さんなかなかすぐには
決めてくれないものです。


ビジネス採用は中途は毎月1-2名、インターンは毎月5-7名入ってるので、
確実にビジネスチームは増えています。
ただ、エンジニア採用は難しいのが今の現状です。


私は顧問の方に「ぶっちゃけ僕の何がダメなんですか?」と
ストレートに聞いてみました。


そうするとその方はストレートに私にこう言いました。


「夏目さんはセールスの話や組織の話などビジネスの成功可能性については熱く語っているが、プロダクトがどう社会を変える、世の中を変えると言うプロダクトビジョンの説明が一切ない」


「エンジニアはもちろんビジネスの成功可能性も大事だが、ものづくりが好きなので、プロダクトのビジョンで決めますよ」


「もはやそれがないと心が惹かれない」


私はこれを聞いて、衝撃が走りました。確かに一切この説明をしていなかったと。


正直自分自身としても思い当たる節はたくさんあります。
「個人として日ハムに勝ちたい」「まずは10年で売り上げ300-400億行きたい」と決めて宣言しており、プロダクトも複数持つのが当たり前だと思っているため、一つ一つの開発するプロダクトに対する想いを
しっかり説明しきれてなかったのです。

引用ページ

会社が何度も潰れそうになって、プロダクトビジョンを忘れてしまった創業期


では私ははたして説明をしないからと言って、
プロダクトビジョンを持っていないのか?


いや結論から言えばプロダクトビジョンの大事さを私は忘れていたのです。
ではなぜ忘れてしまったのか?
一体これはいつからだろうと遡れば創業時代に当たります。


今でこそ、プロダクトより、事業戦略より、大事なのは組織戦略であると
よく話していますが、実は創業時代は違っていました。


社内でも知らない人が多いと思いますが、
私たちは飲食店のマーケティング事業やsaas事業に入る前の創業期に
通販事業をしていました。


そして今でも覚えているのは当時、
お肉だけでなく、ラードを使ったシャンプーや石鹸なども
作ろうとしていたのです。


これはお蔵入りになった話ですが、
シャンプーのファーストプロダクトの開発コンセプトは
「嘘のないシャンプーtruth」
これはシャンプーの全ての原料をITで公開して、
世の中の日用品や化粧品の生産工程の透明化を測ろうとしたものです。

そしたら子供も大人も老若男女関係なく、
誰でも安心して商品を買うことのできる世界に近づくと思ったからです。


いたってシンプルな話ですが、
当時23歳の僕はこれをショッピングモールのフードコートで
メンバーに熱く語っていたのを覚えています。


どうやって作るかとか、いくらで販売するとか、
一切考えずこのプロダクトビジョンだけをとにかく熱く語っていました。


ただ実際にはOEM販売からスタートしようとしましたが、
最終的に工場の初期ロットがあまりにも大きすぎて断念してしまいました。


その次にスタートしたのがお肉の通販事業です。
この通販事業もお肉を届けるという体験をもとに
日本中の食卓から笑顔が生まれる体験を作りたいと思って
プロダクトを開発していました。


ただこの事業も結果的にパッとせずうまくはいかなかったです。
そうこうしているうちに当然だがお金も尽きていきました。
男4人でやっていたですが、みんなの給与も上がらず、
会社の事務所内の空気が悪くなっていったのを今でも覚えています。


起業の魔法は2年までという言葉があるように、
売り上げもつかずにビジョンだけ熱く語っていても、
人の気持ちは2年までしかついていかないということを
私は日に日に感じていました。。。


そうこうしてるうちに通帳のお金が全てなくなるという
2回のキャッシュアウトや社員が一人を除いて全員辞めるというクーデーターなど、会社が潰れそうになる経験を何度もしました。


この時の私にはプロダクトビジョンというものを考える余裕はなくて、
人が辞めないためにも、なんとかして事業を軌道に乗せなきゃ、
明日給与を払うためのお金を稼がなきゃという思いが強く、
気づいたら「浪漫よりも算盤」ばかりを考えるようになっていました。


あまり多くは語りませんが、実家が隣にあるにも関わらず、事務所に布団を持ってきて毎日寝泊まりして、自分の給与はもちろん無給で、無休で働く、
地獄のような日々でした。

ただ結果的に予期もしていなかったSNS集客を取り入れた飲食店事業が
コロナをきっかけに逆にマーケットの需要に乗り、苦しい3年の歳月を経て、
事業成長する機会を掴みました。


そしてその後にその信頼と実績を使って、
挑戦したSNSマーケティング事業が軌道に乗り、
今ようやくSaaS事業に挑戦することができています。


「あなたの大事なお店が潰れない社会をつくる」


ただその後どうなったかというと、
過去にキャッシュアウトやクーデーターを経験したからこそ、
いわゆる組織作りとかそう言ったものに対しては今は誰よりも強く課題感を感じており、「いい人をつくって、いい会社をつくる」というビジネスビジョンは明確になりました。


それが現在の組織戦略、採用戦略、セールス戦略などに間違いなく活かされており
プロダクトビジョンだけではダメだよねと課題感を持ってるビジネス職の人の採用につながっています。

しかしビジネスビジョンの採用がうまくいってるからこそ、
私はプロダクトビジョンに対しての課題感を強く感じていなかった結果が今です。


それでは今の私たちにとってのプロダクトビジョンって何だっけ?と話になります


大事なのは「ないのではない」ということです。
必ずこの事業をやろうと思ったのは
たくさんの事柄から積み重なった理由があって、
言語化するのを、そして発信するのを忘れていただけです。


そこで私は改めて自分の人生の中や生い立ちの中でどのタイミングに
喜怒哀楽があったか一度整理してみることにしました。


人生を整理してみると、
今の事業をやっているにはたくさんのきっかけがあるなと思います。


それは一つはもちろん自分自身が決めた「日ハムに勝ちたい」という理由です。
ただこれは自分の生死感を考えて生まれた話なのでプロダクトよりもビジネスの世界に入り込んだ理由であるので、本日は割愛させていただきます。
詳しくはこちらのnoteをご覧になって頂ければと思います。


ではそういえばなぜ今のマーケティング事業に参入したのだっけ?って話を考えてみました。


それは忘れもしないのは私が大学2年生の時に父から
「実家の焼肉屋が1店舗畳まないといけないから、畳んだ場合はお前は学費を自分で払うことになるが、それが嫌なら再建しろ」という電話がかかってきたタイミングです。


私は当然、学費を自分で払うのは大変だと思ったので、
そこからITやマーケティングを勉強して頑張ったのですが、
ただ少なくとも本当に学費のためか?と言われたらそうでもないです。


地方の小さな焼肉屋ではありますが、私からしたら自分が育った実家であり、
自分も小学生から働いていた場所だからこそ、当然スタッフもお客さんの顔も知ってるからこそ、その場所がなくなるというのが嫌だったから頑張ったのだと思います。

一本屋


もちろんそんな想いは恥ずかしいので父にはいえませんが、
「お店を潰したくない」という思いが強かったです。


その思いを元にとにかく集客を頑張るためにマーケティングの勉強をして結果的に再建することができました。それが自分にとっても大切な思い出であり、それもあってこの領域に参入したと思っております。


だからこそ今でもやはりどちらかというと小さな飲食店さんが好きですし、
小さな飲食店さんでなかったとしても街の美容院や整体など、
コミュニケーションが盛んな場所が個人としても好きです。


そのためもちろんチェーン店などのエンタープライズの企業さんの貢献もしたいですが、今はクライアントさんの80%以上が地方のSMB(小規模店舗)のクライアントさんになり、今後も飲食店だけでなく地方や小規模のお店を支えれるようなインフラを作りたいと思ってます。


そして今日から弊社の掲げるプロダクトビジョンは「あなたの大事なお店が潰れない社会をつくる」です。


売り上げ管理クラウド、支出管理クラウド、会計クラウドに参入

それでは弊社として具体的にどのようなことに今後取り組んでいくのか、
そしてどんなプロダクトを作って、プロダクトビジョンを実現するのかについて話して行こうと思います。


上記に記載した実家を再建したという話には実は本当は続きがあります。
結果的に実家はWebマーケティングやSNSマーケティングを使って、再建が必要だった時期から売り上げは約2倍近くなり、一時的に再建はしました。


しかし、また最近課題にぶつかっています。
それは売り上げが伸びているにも関わらず食品の原価や人件費の相場が高騰してまい、またしても経営が大変な状況になっております。


次は売り上げではなく、支出の拡大が原因です。
私の実家は肉の卸売会社と飲食店を経営してるのですが、
母が卸売会社の会計を見ていて、父が焼肉屋の会計を見ているので、
母は毎回私に「お父さんが期日通りに仕入れた肉の支払いを払ってくれない」
と私に伝えてきます。


ちなみにこの光景を私はずっと見ていたからこそ、
支払いができるようにお客さんが増えれば解決できると思って
マーケティングを行ったのです。
でも実際は本当に解決しないといけないのはお客さんを増やすのではなく、
価格を上げてもお客さんの数を維持して原価率の調整をしないといけなかったり、人件費率の削減をするためのオペレーションの改善です。


そして本当に根幹から実は解決しないといけないのは
お店のPLやCFの透明化です。


当たり前ですが突然閉店するお店なんて本来存在しません。
毎月100万の赤字が仮にあったとして、預金が600万持っていたら誰だって6ヶ月以内にお店を立て直さなきゃと気づくことができます。


でも目先の支払いをしなきゃって追われている状態は
この状態に気づかずに時が過ぎてしまった結果です。


ではなんで早く気づかないのか?
これは現在の会計オペレーションに問題があると思っております。
うちの実家もそうですが、実際のPLやCFが出るのは会計士さんが3ヶ月おきの試算表でまとめてくれた時だけです。つまりは10月のデータは翌年の1月にわかるのです。これでは残り3ヶ月でショートしてしまう状態では手遅れです。


だからこそ本当にお店を支えるために作るべきは、
新規リピートの集客ツールでも、人件費を削減するツールでもなく、
誰でも簡単にPLやCFなどの会社の経営状況が最短でわかるような会計ツールではないかと思っております。


ではfreeeのような店舗向けの会計ツールを作れば、解決されるか?と言われれば私はそう思いません。きっとそのような会計ツールを使いこなせるのは自ら記帳や仕分けのできるITリテラシーや会計リテラシーの高い方だけでしょう。


料理や接客に集中してる店舗オーナーさんはそのような時間はないでしょう。
ではどうやったらいいか?


そこで私が考えるのは可能な限り、オーナーさんが手を動かさなくても自動で記帳や仕分けのされているものが理想だと思っております。そのためにはお店内の売り上げや支出を同じクラウド内でデータ共有しながら整理できるものを作らないといけません。


だからまず私たちは売り上げデータを記録できるモバイルオーダー とPOSレジアプリに参入しています。お店の売り上げデータを全て自動で集計できることができれば勝手に売り上げは記録されます。


そして今後はAI受電サービスなど人件費を下げるツールも参入を考えていますが、もう一つ計画してるのはインボイス制度や電子帳簿保存法を絡めたLayer X社の
バクラクやSanSan社のBill Oneが行うような支出管理クラウドに参入していきたいと思っております。


スマホの写真に撮るだけでAIで自動仕訳がされていくようなサービスです。
毎月届く納品書や請求書を写真に撮るだけで仕分けされて支出管理ができるような世界を実現したいと思っております。


一つのプロダクトだけでなく、複数のプロダクトを最初から絡めることで、
売り上げと支出をAIを使って自動で読み取ることができれば
リアルタイムで原価率も人件費率も把握することができます。
そして気づかぬうちに月次試算表の大枠が完成しているという状態ができれば理想です。


そしたら誰でも簡単にお店の経営情報にアクセスすることができるようになります。そうすることができれば、仮に経営状況が良くても悪くても事前に準備や対策を打つことができます。そしたら無くなって欲しくないお店を救うことももちろんできますし、お店の人が本当に必要なことに時間をかけてもらえるような世界を実現できると思っています。


そしてそれが結果的に「あなたの大事なお店が潰れない社会をつくる」の実現に本質的につながると思っております。


今は飲食店さんだけではありますが、
ゆくゆくは美容院や整体院などの他のSMBにも
参入していきたいと思っております。


アンビエントナビのプロダクトの目標としてはただレジを作るとか、
支出管理を作るとかそういった単一的な話ではなく、
会計というアプローチから会社経営の根幹を変えていきたいと思っております。
いずれは会計士さんや税理士さんの採用にも取り組み、決算代行まで対応できるようになったら完全にお店のインフラ化するサービスになることができるでしょう。


それではマーケティングはどこにいったのか???って話になるかと思いますが、実はマーケティングも本当に大事です。


これはお店さんと日頃から会話してる方なら分かると思いますが、やはり上記のような会計の話や経営の話をしてもお店さんにはあまり響かないことが多いです。
それはまだ事実として起きない問題だからです。


どちらかというとお店さんは
やはり目先のお店にお客さんが来ないという問題に悩んでる方や、
新規のお客さんを増やしたいと思ってる方が多いです。


そのためマーケティングは入り口として絶対にお店さんの解決しないといけない問題なのです。だからこそ自分たちのマーケティングの力でお店さんの集客問題を解決をして、信頼をしてもらって経営の根幹となる会計インフラに入らないといけません。


だから会計もマーケティングもどちらも大事なのです。
どちらか一つだけでは現実的に入り込んでいくのは不可能だと思います。
そのバランスが非常に重要だと思っております。


「浪漫と算盤」を実現するビジョンのサイズ設定


ここまで顧問の方に言われたたった一言をきっかけに
プロダクトビジョンついて熱く語ってきましたが、
やっぱり私は「浪漫と算盤」はどちらも大事だと思います。


社会を変えるようなプロダクト思想と同じくらい、
そのサービスをどうやって売っていくのか、
どうやって売っていくための採用をするのか、
そしてどうやって採用をするための資金調達をするのかも大事だと思います。


何度も会社が潰れかけた私自身だからこそ、
思想だけではダメだと思っていて経営者として「浪漫と算盤」のバランスをどのようにとっていくかが大事だと思っております。
どちらかを追いかけたらどちらも叶うではなく、タイミングやフェーズによって比重を使い分けたり、話す相手によって比重を変えることも必要だと思います。


私は尊敬する経営者の人に教えてもらった「経営者はどちらかを選択しないといけない場面も多いけど、どちらも取れる選択を考えるのが経営者の仕事ではないのか」という言葉を大切にしており、この「浪漫と算盤」どちらも選ぶ道を作っていきたいと思っております。


最後にここまでビジョンについて説明をしてきましたが、
私はプロダクトビジョンをつくる上でとても大切にしていたことがあります。
それは変わるかもしれないということを最初に伝えて、変わっても対応できるようなビジョンを作る必要があるということです。


ここまで会計について強く説明してきましたが、浪漫と算盤のバランスではないですが、経営状況によっては会計よりもよりマーケティング特化で強化する場合もあるかもしれないです。そうなると話してたプロダクトビジョンと違うということが生まれるかもしれないです。だからこそビジョンサイズを大きくして「あなたの大事なお店が潰れない社会をつくる」というプロダクトビジョンを設計しております。


やり方は変わるかもしれないですが、
ターゲットは変わらないのでこのように設定しています。
ビジネスビジョンも同じです。
「いい人をつくって、いい会社をつくる」というビジネスビジョンも
絶対に変わることのない採用方針だからこそマクロに設定しています。


市場は生き物のように変化するからこそ、
自分の人生にも目標にも幅を持たせるのが大事であると思っております。
これはキャリア設計でも私は同じだと思っています。


業界を絞りすぎると見える世界が狭くなってしまうと思います。
本当に教育事業をやりたいと思っていた人はそれは受験教育なのか?学校教育なのか?会社の中で行う人のマネジメントもまさに教育の根幹だと思います。


ビジネスの世界に入ると個人のビジョンと格闘することがあって、
ときにスピードが止まってしまうことがあるかもしれない。
そういったときは決して目先のビジョンに固執しすぎず、
もっと大きな課題や問題を見るようにすれば、
行動に1歩ずつ動かせるようになると思います。


弊社のメンバーにかっこいいおじいちゃんになりたいという将来設計のビジョンを語るメンバーがいますが、このようなビジョン設計は非常に良いと思います。
ビジネス領域や業界が変わってもより対応しやすくなると思います。


話は長くなってしまいましたが、
「浪漫と算盤」のバランスを取るポイントは
ビジョンのマクロ設定が大きく関わってくるのでないかと私自身思います。


私自身も一時期は日ハムに勝ちたいという言っていたので
絶対に肉に関連する何かでないといけないと思っていましたが、
「経営者の方にインフラが作りたいなら肉に固執しなくよくない?」という
たった一言で吹っ切れてITの業界にどっぷり入ることができました。
そして絞っていたらできなかったであろうたくさんのチャンスをつかむことができました。


だからこそビジネスの業界に入るのであれば
今一度自分のマクロ設定のビジョンは何か考えてみると
自分の人生ともバランスが取れやすくなるのでないかと思います。



























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