WCS2023 リンクス部門観戦メモ
あまやみです。WCS2023の決勝を現地で観戦できることになったので、どうせなら理解を深めてから向かおうということで色々書いてみました。リンクスを知らない人が読んでもなんとなくわかることを目指しました。デュエルリンクスしか知らないのでリンクスのことしか書いてません。MD部門は南雲さんのインタビュー記事が分かりやすかったのでそちらを読んでください。おすすめです。
公式サイト
リンクス部門のルールを載せておきますが、読み飛ばして大丈夫です。
またレジェンドデッキ一覧もありますが、競技的な視点ではこちらに目を通す意味はあまりないです。理由は後述します。
ルールの要約
要するに、東海ルール(全デッキでカードプール・リミットを共有)でBO5(3本先取)をやります。スイスドローかトーナメントかという違いはあるものの、予選も決勝も同じルールです。
【スタンダードデッキ】3つと【レジェンドデッキ】2つを用意とありますが、現代リンクスの環境デッキはほぼ全てがキャラデッキなため、このルールはあまり意味を成していません。「キャラゲーさせろ!」派に対する答えとして環境デッキを全てキャラデッキにした結果、レジェンドデッキ界にとんでもない格差社会が爆誕しました。例えば、環境トップである【スピードロイド】を指定されているユーゴはレジェンドデッキという縛り(笑)の中でもフルパワーでデッキを組めるのに対して、ダイナソー竜崎はデッキ内に通常モンスターを9枚入れることを強要されています。スプラのブキセットやスマブラのキャラよりも多い92人(使用不可のセレナを除く)のキャラクターが居ればキャラクター間に格差が生まれるのは当然ではありますが……
スタンダード→レジェンド→スタンダード→レジェンド→スタンダードの順にデッキを使うらしいですが、デッキ順が固定かどうかは読み取れませんでした。多分固定だと思います。固定じゃなかったです。(8/5追記)
ほぼ全てのデッキがフルパワーで使えるということは、「何をどちらの枠で登録するか」と「使う順番」でしか差を付けられないということになります。デッキ選出の考え方については最後に書いています。
現代リンクスのゲーム性について
手札誘発の存在しない遊戯王という言い方が大体合ってると思います。ちょっと前まではもう少しゆっくりしたゲームスピードで繊細なやり取りを楽しめる環境でしたが、インフレの波には逆らえませんでした。《灰流うらら》や《増殖するG》は当然実装されておらず、先攻展開は基本通ります。相手の展開を止めることのできる実用的な手札誘発は《アーティファクト-ロンギヌス》と《D.D.クロウ》くらいです。
また実装されているテーマには歯抜けが多いですが、それをリンクス独自要素であるスキルで補っています。スキルの特徴として「チェーンブロックを作らない(発動に対するチェーン不可)」、「スキル効果処理後に優先権が移らない」などがあります。多くは起動効果のように使用できます。インフレに伴いスキル説明の文章は長くなっていきました。
リンクスの主要な環境デッキ一覧(2023年7月時点)
※それっぽいサンプルデッキを紹介しています。これが最強の構築です!ってわけじゃないです。
【スピードロイド】(使用キャラ:ユーゴ)
現環境で最も強いとされているデッキです。先攻は《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》と《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を並べて制圧し、後攻は《SRベイゴマックス》と《SRダブルヨーヨー》などを使い、手数で突破します。再現性も高いため、「SRの先攻制圧を崩せるかどうか」と「SRに先攻をとれたときに勝てるかどうか」が環境デッキの一つの基準になっていると感じます。
【オッドアイズ】(使用キャラ:榊遊矢)
構築の自由度が高く、プレイヤーの力量が試されるデッキです。スキル「レイジング・ペンデュラム」により暴力的なアドバンテージを稼ぎます。最近はマギストスと混ぜた【マギストスオッドアイズ】が流行っているらしいです。先攻は《シューティング・ライザー・ドラゴン》から《氷結界の還零龍 トリシューラ》を出す構えで返し、マギストス混合ならそこに《法典の守護者アイワス》を添えます。後攻は《竜穴の魔術師》の効果などを駆使し戦います。
【オルフェゴールガンドラ】(使用キャラ:DM武藤遊戯、DSOD武藤遊戯)
ガンドラとオルフェゴール(とガジェット)の複合デッキです。混ぜ物をしない【オルフェゴール】は規制によりパワーが落ちましたが、【オルフェゴールガンドラ】は前の環境と同じパワーを維持しています。スキルの制約により「ガジェット」モンスターをデッキ内に10枚入れることを強いられているものの、《ギアギガントX》で下級オルフェにアクセスできる点や「ガンドラ」モンスターの召喚コストにできる点がうまくかみ合っています。またスキルでサーチできる《破壊竜ガンドラーギガ・レイズ》の特殊召喚時のコストで下級オルフェを捨てて展開できる点もシナジーがあって美しいです。
最近になって《RR-フォース・ストリクス》から《BF-精鋭のゼピュロス》へアクセスして展開を伸ばす構築が開拓されました。理想の最終盤面では《デコード・トーカー》、《ヴェルズ・ナイトメア》、《宵星の機神ディンギルス》が並び、オルフェのリソースを墓地に貯めながら《オルフェゴール・バベル》も貼られています。
【トリックスター】(使用キャラ:ブルーエンジェル)
強力なリミット③の罠を自然に採用でき、スキルと合わせて《トリックスター・ブラッディマリー》の効果で引き込みにいけるのが魅力のデッキです。【スピードロイド】に対しても先攻で《トリックスター・フォクシーウィッチ》を出すことにより、突破が難しい盤面を作れます。《トリックスター・フェス》でトークンを生成してからリンクモンスターを出す展開に、強力な汎用札である《月の書》が打てない点も強みです。
デッキパワー的には上記の4デッキが頭一つ抜けている上にカードの被りもほとんどなく、全てレジェンドデッキとしても使用できるため、本番で目にする機会も多いと思います。とりあえずこの4つを覚えておけば大丈夫です。以下からはそれ以外のデッキ3つを紹介します。ルールのおかげで様々なデッキの可能性が模索されており、全てを詳細に解説すると長くなってしまうので、簡潔に書きます。
【ヴァレット】(使用キャラ:リボルバー)
特徴:めっちゃ罠を伏せる。後続が途切れない。
上記4デッキが罠をほとんど使わないので、残った罠を有効に活用する枠として候補に挙がります。かなりプレイングに左右されるデッキで、上級者が好んで使う印象です。
【D-HERO】(使用キャラ:エド・フェニックス)
特徴:デッキ外から《D-HERO ディアボリックガイ》を墓地に置き、デッキ外から《融合》をフィールドにセットし、実質1枚消費で《D-HERO ディストピアガイ》を出す。
スキルがイカれていますが、他と比べると霞んで見えるのが恐ろしい。余った罠を入れる枠としては【ヴァレット】と競合するので、何か強みが欲しいところです。
【ベアルクティ】
特徴:手札から妨害してくる。ラディエーション最強!
《ベアルクティ・ラディエーション》に依存している感が否めませんが、爆発力は高いです。レジェンドデッキとしては使用できません。不動遊星のスキル「未来を照らす絆」を採用したタイプもあるらしいです。もしかしたらそっちはレジェンドデッキとして使えるかもしれない。
この他にも【サラマンコードトーカー】や【ネクロス】、【リゾネーター】、【レイド・ラプターズ】、【パラディオン】、【オノマト】、【海皇】といったデッキもあります。個人的には【時械神】が地雷デッキとして活躍するところが見てみたいです。
↓参考になるツイートと実際の対戦の様子です。
リミット1,2,3のカード
今まで紹介した中でカードに①とか②とか③と表示されているものは「強すぎてなんかやらかしたんだな」と思ってください(最近は事前規制も増えたけど)。特に以下の4枚はあまりにも強すぎるあまり、事前にリミット③を指定された上でセレクションBOXに先行収録(期間限定販売)されました。カードゲームなのに期間限定発売っておかしくないか?今の環境では《精神操作》はあまり見かけないものの、《天龍雪獄》、《大捕り物》、《強制脱出装置》の罠3種がとても強いです。罠デッキを複数採用する場合はこの枠を取り合うことになります。他にリミットのかかっているカードで見られそうな汎用札は《狡猾な落とし穴》(リミット①)や《カイトロイド》(リミット②)くらいでしょうか。
ゲーム内で1枚または2枚しか手に入らないカード
1枚しか手に入らないカードとして《モンスターゲート》や《暗闇を吸い込むマジックミラー》などがあります。また《D-HERO ディアボリックガイ》は2枚しか手に入らないため、全デッキに2枚までしか入れられません。他に今大会で使用されそうなのは1枚実装のベイゴマックスくらいでしょうか。観戦側からするとリミットと合わせてただ分かりにくいだけになってるのをなんとかしてほしいです。
デッキ選出の考え方の例
マニアックな話になります。実際の5デッキをどうやって決めているのかを自分なりに考えてみました。
とりあえず、確実に使われる前3デッキから決めてみます。【SR】は最強なので(諸説あり)採用するとして、何番目にすべきでしょうか? SRに求められているのは「絶対に勝つこと」なので、先攻をとっても妨害されてしまう可能性のある【ベアルクティ】だけは避けたいと考えました。ベアルクティはレジェンドデッキとして使えないので、レジェンドデッキの1st(2番目)にすれば避けられます。SRは二番目に決定。構築も《ブリザード》や《HSRマッハゴー・イータ》を採用するなどしてミラーを意識してみます。
次に、相手のSRの投げどころを考えます。最強デッキを使わずに負けることは当然相手も避けたいと考えているはずなので、前3デッキのどこかには入るでしょう。そこでSRに比較的有利をとれそうな【トリックスター】を最初か三番目に入れることにします。《天龍雪獄》と《ブラック・ホール》を採用し、こちらもSR意識。
もう一つもSRに有利なデッキにすれば確実ですが、相手が必ず想定通りの選出をしてくるとも限りません。なのでSR以外にも広く当て勝ちできるデッキを採用したいです。「当て勝ちしやすいデッキは何か?」はおそらく全プレイヤーが悩むところで、ここに個人差が大きく出ると思います。自分はその枠を【D-HERO】にしてみました。先攻のプランが多く、後攻も豊富な罠でなんとかできそうな気がします。D-HEROを最初にし、トリックスターを三番目にします。
残りは2デッキです。前3デッキに汎用札をつぎ込むので、妥協札を採用することになるデッキはあまり採用したくないです。そうなるとデッキパワー的に【オルフェゴールガンドラ】と【オッドアイズ】が候補に挙がります。ベアルクティ耐性は【オッドアイズ】の方がマシそうなので、オルガンを四番目、オッドアイズを五番目にします。
これで全デッキが決まりました。実際はもっと考えることが多く、複雑になっていると思います。一発勝負特有の初見殺しギミックとか見てみたいですね。
おわりに
WCSは4年ぶりの開催になりますが、デュエルリンクスでは2020年から2022年にかけてもKCGTというイベントがありました。本当に色々ありすぎて今回のWCSも非常に楽しみです。何事もなく大会が進行できることを切に願っています。そして出場される選手の方々、頑張ってください!
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