P-PUMP
人が生きるときに大切なことは何だろう、と時々考える。お金は大事だ。衣食住には金がいる。子供の頃うちにはお金がなくて、洋服は教会のバザーで買うものだったし、フライパンに水を入れて作る単価10円の焼きそば箱買いして食べてたし、1か月4万円の団地に住んでた。だから不幸だったのかというと、別にそんなことはなかったと思う。友達もいたし図書館で本も借りれた、テレビも見れたし。なんだかんだ楽しいことはたくさんあったから。
死ぬんじゃないかと危機感を持ったのは、貧困に耐えられず両親が大喧嘩して、父が家出し母が神経症にかかって自宅に引きこもったときだ。自宅では母が親鸞の歎異抄を私に繰り返し音読させては、ちょっとしたことで号泣した。ゴミがたまり洗っていない皿が溜まり、気がついたら飼っていたインコはえさを与えられず冷たくなっていた。
これはお金がなかったからそうなったのかもしれないが、誰にも頼れなかった母の人間関係が一番大きかったんじゃないかと、今は感じている。父との関係はとうに冷え切っていたし、唯一頼れた実の兄に相談してもお金を貸してもらえず、話もろくに聞いてもらえず追い返された。友達といえる人はほとんどいなかったし、当時はネットもないから匿名のつながりも作れない。自分が生んだ子供たちくらいしか話し相手がいない状態で、彼女はずっと生きてしまったのだ。お金はきっかけにすぎず、本当は人とのつながりが希薄だったことが、不幸の最大の原因だったのだと私は思っている。
そんな人生背景がある私にとって、人が生きるときに大切なことは、「人と人とのつながり」だ。これしかない。『深呼吸絵葉書ブック P-PUMP』は橘川幸夫さんを中心にした人のつながりが集まってできた参加型の本として誕生した。私は編集長として人選と本全体のデザインを担当し、自分で作った絵葉書も入れた(表紙の写真がそれ)。
この本はただ読んでほしい作品ではない。あなたがあなたのつながりをつくり育てるために始めてほしい行動のプロトタイプなのだ。そんなに難しいことじゃない。だけど勇気がいることだ。それでもあなたに届いてほしい。そう願っている。
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