見出し画像

過去生

【 過去生 】

昔、セッションに来た女性は、どうしても乗り越えられないというある問題を抱えてきた。


それは同居している実の父親がどうにも憎く、殺したいほどの感情を抑えられないというのだ。
聴けば、父親から虐待を受けているわけでもなく、物心ついた時からすでにどうにもこうにも父親が憎く、彼女本人にもなぜなのか分からなく、ずっとその感情にずっと苛まれて苦しんできたという。


彼女はとうに成人していた。
実の父親を殺したいほどに憎く思ってしまう自分をずっと責めて生きてきたという。


「なんででしょう?」と聴かれても私にもサッパリ分からない。
「なんでなんでしょうね?」
過去生を観てみることにした。
2人の過去世になにか原因が見つかるかもしれない。


今生だけでは全く手掛かりが掴めない時、過去生は有効だ。
彼女が抱えている問題の原因となる過去生を観せてくださいと意図し、目を瞑り、意識的に霊視していくのだ。


観た映像にギョッとした。
彼女は幼ない女の子で、ある時、知らない男に残酷に殺されていた。
さらにゾッとしたのは、その男が今の父親だったのだ。


〝こ、これはどう彼女に話したらいいのだろうか?〟
過去生を観てみましょうと言ったのは私だが、予想以上に残酷なものが出てきてしまった。
〝 ど、どうしよう?〟と躊躇しながらも、私には観えたことをそのまま伝えることしかできない。


彼女は黙って聴いていた。
しばらくの沈黙の後、彼女が口を開いた。
「安心しました。」


ドギマギしていた私には予想外の返答だった。


「これで全部理解できました。」
と彼女は言った。


その過去生が本当に正しいのかは誰にも分からない。調べようもない。
が、過去生は観える。
そして本人にはそれが自分の過去かどうかは分かるのだ。


自分の親を殺したいほど憎いと思いながら共に暮らすほど、辛いものはないと思う。
実の親に対して、理由もなく、そんな感情を抱えている自分はおかしいのではないか?とずっと自分を責めてきたのだ。


それら全てが繋がって溶けた瞬間だった。


彼女に会ったのは、この時だけなのでその後彼女がどうなったかは分からない。
もう15年は経つので、家を出て、家族を持っているかもしれない。


今生に直視できないトラウマがある時、過去生を通してだと、人はその問題を俯瞰して観ることができたりする。


それにしても殺人者が自分の父親となり、自分が犯し殺した子が娘となる。
そんな組み合わせ、親子の配置ってある?
神さまのやることはエグい。
神さまの愛は時に私たちの予想を遥かに超えていて、理解に苦しむ。


私たちは親子は毎晩夕飯を共にし、愛し合い仲が良いものだと思い込んでいる。
親は子を愛し、子は親を大切にするものだと、そうであって欲しいと思い込んでいる。
が、自分の体験がそうじゃなかった場合、苦しみながら自分を責め、他者を責める。


過去生まで視野を広げると、親子はそんな単純なものではない。
神さまの席替えは時にエグいものだ。
愛し、愛されることだけが愛の学びじゃない。
愛せない、愛されないことで愛を学ぶこともある。
殺し合いで愛を学ぶこともある。
神さまのやることはエグいから、私たちも賢くならなきゃいけない。


今朝、ニキにこの話題をふってみたんだ。
彼はこの手の輪廻の話は私よりも上手にできる。


「その子も自分でその親を選んだんだろうね。
憎しみがあるってことは、縁が深いんだよ。
愛の反対は無関心だから、憎しみがある状態は深い関心がある、縁がある。
だから、その子もその憎い親を選んだんだろうね。」とニキ。


うんうん、そうなんだよね、人間て。


「そういう意味では、その子は愛憎を超えて親離れして自立すること。
熱い関係から涼しい関係になることが、その子にとってはいいんだろうね。」とニキが言い、


「そうしないと、もう一回カルマ解消のために何かあるかもね。」とニキが笑った。


朝のコーヒーを飲みながら輪廻の話は続いた。
神さまの創ったこの世界の愛の仕組み。
エグくて私は好きなんだ。
好きなんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?