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これは紛れもなくバスケの映画だった

※この感想には「THE FIRST SLAM DUNK」のネタバレを含みます







宮城リョータの回想から試合が始まった後、湘北と山王のシーソーゲームが始まる。2ポイント、また2ポイントと両チームに点が入るシーンを眺めながら唖然としていた。

「この映画はここまで丁寧にバスケの試合を描き切るつもりなのか?」

ただ丁寧なだけではない。選手たちの動きやテクニック、息遣いやボールの弾む音に至るまで、映画を構成しているあらゆる要素がとんでもないくらいにカッコよかった。

とてもじゃないが、あの映像、あの音響、あの試合の迫力を言葉で表現することはできない。ただ純粋にバスケの試合が行われているだけなのに、その一挙手一投足にキレがあり、それを見逃すまいとずっと目を見開いていた。

詳細は書かないが、回想から試合への流れや演出も申し分ない。とにかくワクワクするし、テンションが上がる。わずか開始数分で、もうすっかりこの映画に魅入っていた。


自分はスラムダンクの大ファンという訳ではない。原作を読んだことはあるが、それは数ある好きな漫画の一つに過ぎなかった。映画化の情報には驚いたし興味は沸いたものの「気が向いたら行こうかな」くらいの感覚で上映日を迎え、そこから1週間経ってようやく劇場に足を運んだ。要は、そこまでこの映画に期待はしていなかった。

しかし、予想とは裏腹に、これはとんでもない作品だと始まってすぐに分かった。

これは紛れもなく、初めてスラムダンクを読んだときの、そして初めて山王戦を読んでいた時の、あの興奮に他ならなかった。いや、それ以上に興奮していた。大人になってもこんなにワクワクできるなんて、自分でも心底驚いていた。

先述した通り、自分はスラムダンクのファンではない。だから「あのシーンが足りない」とか「あのキャラがいない」という不満は、正直汲み取れない。だからこそ純粋に、この映画に抜擢された数々のシーンやキャラクター達をあるがままに受け止めて、感動することができた。

そんな自分が楽しめたのだから、スラムダンクをちょっと知ってるとか、むかし1回だけ読んだことがあるとか、そういう人にこそこの映画を観てほしい。何なら、原作を全く知らないまま観に行っても全然かまわない。映画が面白いと思ったなら、その後にゆっくり漫画を堪能して、それからもう1度映画を見直せばいい。


これはスラムダンクの映画だが、それ以上に”バスケットボール”の映画だ。もっと言うならバスケットボールの”試合”の映画だ。最も興奮する形で試合を鑑賞できるように、他の要素が組み立てられている。

だから、どのキャラクターのバックボーンが掘り下げられていて、どのキャラクターは扱いが雑で、とか、そういう話はしない。それは誰かにとって大事な思いであることは間違いなく、それは物凄く価値のある感情だから、決して無下にしてはならない、というのも分かる。

しかし、きっと原作者であり監督である井上雄彦も、それを重々承知の上で、今回は”バスケットボール”に焦点を当てた作品に仕立てたんだと思う。だから失礼な表現かもしれないが、キャラクター達はバスケットボールの試合を魅せるための素材なんだと自分は感じた。もちろん、ファンにとってはもっと別の視点があるだろうし、それを否定するつもりは毛頭なく、あくまで原作を深くは知らない一人の視聴者の感想としてそう思う、という話だ。

ただ、その結果できあがったこの作品は自分の心を、本当に強く撃った。自分のなかにあるスラムダンクとは乖離していなかったし、初めて原作を読んだとき以上の感動が2時間途切れることなく続いていた。


感動のツボは人それぞれだから、この映画を見た人全員が自分と同じような気持ちになれると保証することができない。ただ、少なくとも自分にとってはかけがえのない作品になった。映画の視聴後には原作の漫画も全巻購入した。そうさせるくらいのパワーが秘められている傑作であることは間違いない。

漫画読んだ後、必ずもう一度この映画を観に行こうと思う。


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